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【今さら】遅れてきたバレンタイン【腐向け】

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「うーん…」
廉造は自室の勉強机の“小箱”を前に唸っていた。


「何さっきから唸っとんねんキモいわ」
「うおっ!?きききき金兄何でここに…」

後ろから金造が覗きこむ。廉造は思い切り跳ね上がりそれを隠そうとしたが、金造の動きは一歩速くそれを手にする。

「そら弟の部屋に入るんに了承なん得るわけないやろ…あ、これ俺がやったチョコか。まだ食ってへんかったんかお前」

「か、返せや金兄!それは俺が貰った物や!
廉造は金造の手から小箱を奪い取ろうとするものの、ひらりとかわされる。それでも諦めずに、廉造は小箱を取り返そうとする。

「せやかて、元は俺がやった物やろ。なんではよ食わんねん、こんなん今食ったら、腹壊すぞ、っと」
金造から箱を奪い返すことができず、肩を落とす廉造。

「そら、もったいなかったから…金兄がくれたもんやし」

自室で貰ったチョコを勘定している廉造に、金造が「食べないから」とこの小箱を投げてよこしたのが数日前のバレンタインデーの日。それから1週間近くも経つ間、廉造は冒頭のように小箱の前で唸っていたという訳で。

「それがどうしたんや、貰ったけどいらへんからお前にやっただけや」

「嘘やろ」
「嘘やない」

「いや嘘や。…俺知っとるんよ?姉ちゃん達からチョコ買ってくるん頼まれた時に、このチョコ一緒に買うてきたんやろ。だいたい、金兄宛のメッセージカードも入っとらんかったし」
廉造の言葉に、金造は反論の声を詰まらせる。

「……だったからってどうなんや、別にお前にチョコやったからって、何でお前はそんなに…」

「嬉しかったから」

自分の言葉を遮った廉造の言葉に、金造は耳を疑う。
「…は?」

「そら、金兄から物貰うことなんかそうそうあらへんしな〜」
へらへらと笑う廉造。金造は言葉を返すことが出来ない。

「……そか」

視線を落とす金造。次の瞬間、温かいものに包まれる。

「!廉造、なにすんねや!」
自分を抱きしめる腕をはがそうとしても、背中までまわされた腕はびくともしない。それでいて、きつくもなく緩くもない力加減は金造の抵抗を力なくしていくに十分だった。

「冗談に決まってるやろ?金兄からチョコ貰えるなんて思っとらんくて。もったいないやろ?食うんは一瞬やのに。」

金造の背中にまわしていた腕をやや緩める。おずおずと顔をあげた金造の額に、廉造は額をくっ付けて上目遣いでにこにこ笑う

「せやから返して、な?」
「……さっさと食え」

金造は腕を振りほどき、顔も見せずに走り去ってしまったが、一瞬だけ見せた耳は真っ赤に染まっていた。

「…美味しくいただきます、金兄」


おいしいものが見られたなぁ、と廉造は思わずにやけた。