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東方~宝涙仙~ 其の肆(4)

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東方〜宝涙仙〜


「なんでお姉さまは信じてくれないの・・・?」



ー紅魔館ー
 レミリアは出かけていた。珍しく散歩に行ったようだ。
主がいないとなると紅魔館をしっかりと守らなければならない。今攻め込まれたら確実に戦力が足りなくなる。レミリアの戦力はそれほどまで大きかったのだ。
しかし幻想郷も今や平和ブームと言ったところか、異変など起きそうにもなかった。
レミリアはこの平和な世界を咲夜と過ごしたかっただろう。だが咲夜は殺されたのだ。おそらくレミリアの妹が犯人だと思われる。
 
 
 レミリアの妹は少々気がふれている部分があり、物を壊し、人を殺してしまう傾向がよく見られた。その為彼女は地下に幽閉されることになったのだ。
何百年と幽閉されたのだろう。彼女は自分の歳すら知らなかった。
まさか姉が自分に幽閉宣告をするとは思いもしなかった。紅魔館に住み着く前まではレミリアは優しく接してくれていた。しかし、ある日彼女は自分自身を見失い、紅魔館の一部を破壊しメイドを虐殺した。
何か気にくわなかった事があったわけでもない。ただ彼女自身の能力が暴走したのだ。彼女は理性が利かなくなりどうにもならなかった。
 その事件の何日後かから彼女の幽閉生活は始まったのだ。

「キルティ、あなたはどうしてフランを無視するの?」
 ※フランドール・スカーレット
 二つ名:悪魔の妹
 能力:ありとあらゆるものを破壊する程度の能力

 フランはよく人形に話しかける。お気に入りの人形の名前はキルティ。幽閉生活が始まってしばらくして、咲夜が誕生日プレゼントに買ってくれたのだ。
人形はよく壊すがキルティだけは壊せなかった。壊そうにも理性がそれを止めてしまうのだ。
もしかしたらまた能力が暴走したらこのキルティまでもを破壊してしまうかもしれない。フランドールがそれだけが怖かった。幽閉生活が終わらぬまま死ぬ事になることよりも恐れている。


「キルティ、あなたはフランを信じてくれる?」
 完全な強度を誇る鉄格子でできた牢獄のある部屋に彼女の寂しげな声がこだまする。

「キルティ、一緒におしゃべりしようよ。」
 人形は返事をしなかった。

「答えてよキルティ!!」
 返事をしてくれたのは自分の声のこだまだけだった。同じセリフが返される。

「なんでフランは閉じ込められるのかな・・・。」
 そういいながらもフランドールはしっかりと理由がわかっていた。自分が外にでれば物を破壊してしまい周りに迷惑をかけてしまう。ときにそれは迷惑どころでは済まなくなる。
まだ知能の幼い彼女には辛かった。レミリアもそれは気付いている。しかし幽閉を解除することはできないのでレミリアも辛いのだ。

 ポツンと侘(わび)しく水滴の落ちる音が響く。地下にはその音しか物音は鳴らない。
たまにフランドールが鉄格子を破壊しようと攻撃する音が鳴ることもある。


「お姉さまはフランが嫌いなのかな・・・。」
「・・・。」 
 キルティは返事をしない。

「ねぇキルティ、あなたもフランが嫌い?」
「・・・。」
「そっか、答えれないって事は嫌いなんだ・・・。」
「・・・。」
「答えてよ。」
「・・・。」
「答えてってば。」
「・・・。」
「答えろボロ人形!!!」
「・・・。」
「なんで答えてくれないの!?馬鹿にしてるの?そうなのか!フランを馬鹿にしてるのね!?」
「・・・。」
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「・・・。」
 フランドールはキルティを床に叩きつけようとした。しかし叩き付けれず、キルティを握った右手が振り上げられたとこで止まる。
フランドールは泣き崩れた。キルティを壊せないのが悔しかったのか?いや、フランドールは悲しかったのだ。誰かに答えてもらいたいと思っているだけなのだ。
昔は咲夜が時々相手をしてくれていた。だが咲夜が死んでからというもの、フランドールを恐れるあまり誰も地下へは下りて来なくなった。
ただ食料となる死体が遠くから投げ込まれるだけ。生きたものとは接せなくなっていた。

「お姉さま・・・。フランじゃないってば。咲夜を殺してなんかいないってば・・・。」
「・・・。」
「なんでお姉さまは信じてくれないの?」
「・・・。」
 目の前には人形しかないというのにフランドールはレミリアに向かって問いかけた。
もちろん誰も答えなかった。答える者がいなかった。


 フランドールは泣きながら牢獄部屋の隅っこに座り静かになった。
光も届かないこの部屋でフランドールの目からこぼれる涙は光っていた。
 
 フランドールはそのまま寝てしまった。紅魔館でみんなと過ごす夢をみている。いつもいつもその夢をみる。
もういっそ夢の中に住めればいいのに、とフランドールは思う。
 夢の中の自分を恨み嫉妬する。
 彼女にはストレスと悲しみしか残らなくなっていた。

 そして今夢の中の世界にひたり始めた。
完全に熟睡モードに入り始めた。


 フランドールが熟睡モードに入った瞬間に上のほうで何かが崩壊する音がした。
フランドールは音に気付き目が覚めた。眠気でまだはっきりしない脳をフルに作動させる。
 
 紅魔館が・・・、紅魔館が崩れている音がする。

地下でフランドールは上の事が気になった。

「まさか・・・、またあの子が・・・。キルティ、キルティはフランがしっかり守るからね。」

 紅魔館の一部崩壊で地下のスペルカード封印機能コントロール室がショートし、地下でのスペルカードの使用が可能になった。
フランドールはそれを察した。そしてキルティをしっかり握り、スペルカードを放った。

『禁忌「レーヴァテイン」』
 炎の剣を振り回し、牢獄の鉄格子を破壊した。

「キルティ、やっと誰かとしゃべれるかもしれないよ。楽しみだね!」

 フランドールは嬉しそうに天井や壁を破壊し始めた。

          ▼其の伍(5)に続く。