二人のゴールデンリング 後編
私だって滝沢くんが好き、いっしょにいたい。でも、心の準備が・・・まだ・・・それに、お風呂はともかく、トイレまで連れていってもらうなんて、いやいや、お風呂のほうがマズイのでは??だって裸になるわけだし、でも、滝沢くんが好きなんだから、やっぱりそうなるのが自然で・・・ということはお風呂は・・・ええっ!!私ったら何てことを考えているのかしら?
咲の頭の中をいろいろなことが、本当にいろいろなことが、駆け巡って・・・。
「ぷっ」
滝沢が吹き出す。
「咲の顔、すごい、百面相みたい。ははは!」
笑い出す滝沢。
「ひっど~い!滝沢くん笑うなんて!」
「ごめん、ごめん!だってあんまり面白くて」
はははと笑い出す滝沢を咲は恨めしそうな眼で見上げる。と、滝沢が真顔に返った。
「咲、これ・・・」
滝沢は半分ぬがせたブラウスからこぼれ出た、ゴールデンリングを手に取っていた。咲にニューヨークで二人がいっしょにいた記念にと渡した、メリーゴーランドのゴールデンリング。滝沢が自分で皮紐に通して咲へプレゼントにした。飯沼のヤツラに連れて行かれる前に、咲に渡した、俺のキモチ。
「これ・・・いつも、かけてくれてるの?」
「うん・・・だって、大切な、二人の記念だもん。仕事のときはさすがに表にできないから、ブラウスの中に入れているけど。あれから、一度だって外したことないよ。滝沢くんが行方不明のとき、このゴールデンリングが私を支えてくれたの。滝沢くんがそばにいてくれるみたいで・・・」
「咲・・・俺・・・」
滝沢はちょっと口ごもって、そして意を決したように言った。
「咲。今夜は俺、もう、自分を止められない・・・」
「滝沢くん・・・」
滝沢は咲の瞳をもう一度じっと見つめると、咲にくちづけた。幾度も。何度も。咲もとまどいながらも、滝沢の情熱的なキスになんとか応えようとする。滝沢の首に両腕を回して、滝沢とぴったりくっつく。滝沢が唇以外にも、額や頬や耳や首筋や、いたるところにキスの雨を降らせる。咲は体がどんどん熱くなっていく気がした。頭の中が真っ白になる。滝沢は咲の捻挫した足首に気をつかいながら、一枚、一枚、咲の着ているものをはいでいった。
二人とも一糸まとわぬ姿になったとき、滝沢は咲の耳にささやいた。
「ゴールデンリングだけじゃない。全部、俺をあげる。咲にあげる。」
滝沢は、咲の捻挫した足首が痛くないように、そっと咲の両脚を持ち上げて、自分の両肩の上に置いた。
「あ・・・恥ずかしいよ・・・」
「だ~め、咲の足を痛めないように」
咲は恥ずかしさで涙をにじませている。滝沢はそっと咲の中心に自分の中心を近づけた。
(なんか、この格好、すごいソソル・・・。)
滝沢は内心ぞくっとして、すぐに咲の中に自分を埋めたい衝動を必死で抑えなければならなかった。咲を怖がらせないように・・・。咲を思いっきり貫きたいという欲望と、咲に精一杯やさしくしたいという愛おしさと。両方の感情が渦巻いて。心と頭がちぎれるような、それは本当に身体的に痛みを感じるほどで。そんな感情をもてあまして、滝沢はもう自分にも余裕が全然ないことを悟る。
「さ、き・・もう、俺、だめ・・・余裕ナシ・・・」
うめくように言って、咲の中に入っていった。
二人のつながりを十二分に確かめた後、滝沢はそっと咲から身を離し、咲の両脚を自分の肩からおろして、やさしくソファーの上に横たえた。そのまま咲の体の横に自分も横たわって、右腕で咲に腕枕をする。
咲ははあはあ息をはずませて、目を閉じている。
「咲。だいじょうぶ?・・・痛む?」
「だ、だいじょうぶ・・・」
咲は目を開けて、目に涙をにじませながら、それでも滝沢に笑みをみせる。
「よかった・・・」
滝沢は咲の頬にやさしくキスをした。頬を上気させ、瞳を潤ませた咲の顔はぞくっとするほど美しかった。
「咲・・・すっげー、色っぽい・・・」
「も、もう、やだなあ、滝沢くん///」
咲は両腕で自分の胸を隠して反対側を向こうとする。それを滝沢は両腕で阻止して、逆に自分の胸の中へ彼女を抱え込んだ。
「ホントのことだよ。咲、すっげー、きれい。さっきだって・・・俺、なんか、抑え効かなくて・・・咲に無理させなかった?平気?」
「平気・・・だって、滝沢くん、すごく、やさしかったし・・・ステキだった・・・」
滝沢は咲の言葉にはっと息をのんでしまった。
(そんな・・・すっげ~、殺し文句だよ、それ・・・)
触れ合った二人の体の間に、ずっと咲がつけたままだったゴールデンリングのペンダントがある。ほてった体に、金属のひやりとした感覚が心地いい。
滝沢朗として生きてきた自分。過去をなくした自分。
すべてを受け止めてくれた咲。俺をずっと信じてくれる咲。
(なんか、俺って、すっげー、シアワセなヤツなんじゃねーの!?)
滝沢は咲を抱きしめたまま、笑った。笑ったつもりだった。でも、彼の瞳からは涙があふれてきて。咲に気づかれないように、滝沢は自分の顔を、甘い香りのする咲の髪の中にうずめた。
作品名:二人のゴールデンリング 後編 作家名:なつの