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黒く余る

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「俺は、あんたに会いにきたんだ」
「…私に…?」
「あぁ。こう見えて…って、見てわかるもんじゃないけど…俺はさ、死なないんだ。しかも年を取らない。あんたと違って、俺はずーっとこの若々しいまんま生きられる。あんたの人生という旅のパートナーには最良だと思うけど?」
「話がよく見えないんだが…」
「つまり、俺があんたの友達になってやるって言ってんの。不老不死の俺が、普通の人間の四倍の寿命を与えられたあんたの友達に、さ」
「君が私の…友達に?なぜだ?それに、どうして私の寿命のことを知っている?」
「ある人が教えてくれたんだよ。あんたみたいな体質…俺達はうるうびと、って呼んでんだけど。そういう体質のやつがいるってさ。で、俺はその話に興味を持って、もし会えたら友達になってみたいなーとか思ってたわけ」
「ある人…」
「あ、大丈夫。心配しなくても、ある人ってのはあんたの友達のことじゃないよ。彼は、あの30人にあんたのことを話してしまって以来、誰にもあんたのことは口外していない。もちろん妻や息子にすら、だ」
「そんな、ことまで…」
「俺はあんたに関することならなんでも知ってる。し、何も知らないとも言える」
「…は?」
「自覚はないだろうけど、俺とあんたは何度か会ってるんだ。主人公であるあんたには伺い知れないところでな」
「?」
「まぁいいやそんなメタな話は。で、どーする?友達になってくれんの?不老不死のお友達、欲しくない?」
「……すまないが…遠慮しておく」
「あーやっぱりか。そういうと思ったよ」
「え?」
「俺知ってるもん。あんたに最近、すごく大事な出逢いがあったってこと。人間の儚さに、もう少し付き合ってみる覚悟を決めたんだろ?」
「…うん」
「じゃあしょうがない。不老不死なんて今はお呼びでないってわけだ」
「本当にすまな」
「でも俺は諦めないよー?」
「!」
「また来るから。またあんたが独りになって、人の儚さに負けそうになる頃にまた来るからさ。覚悟してなよ、そのときを」
「…ありが」
「おっとその言葉はやめといた方がいい。俺はこう見えて恐ろしい悪人かもしれない。実は俺こそが『うるう』で、あんたを食べるために現れたのかもしれない」
「…それでも。ありがとう」
「…あんた、変わったね。彼のおかげかな。だとしたらあの人も喜ぶだろうな…じゃあ、また来るから。さよなら、うるうびと」

「さよなら、銀髪の魂喰い」
作品名:黒く余る 作家名:泡沫 煙