二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

食事風景

INDEX|1ページ/1ページ|

 
じっ、と目の前の男を見つめる、銀灰色の幾分か大きな目。若緑の髪を帽子で覆い隠して、頬杖をついたその少年。スパーダ・ベルフォルマは、その双眼を黒髪の青年――コンウェイ・タウから離さない。
それでも気にせずに、コンウェイは食事を続けようと口をあける。スパーダの視線は相変わらずであり、やり辛さを感じながらもコンウェイはサンドイッチを口に運んだ。しゃく、とレタスとタマネギを噛む音がやけに大きく聞こえる。と言うのも、二人が食事の挨拶を除いて先程から一言も発しないからだろう。
無言の食事が続く。チーズが美味しいな、良い塩梅の塩見と酸味だ。クリーム状のチーズが溢れないよう、コンウェイはサンドイッチを傾けながらバランスをとる。

「君は食べないのかい?」

相も変わらずコンウェイを見ているだけのスパーダに聞く。既に目の前には皿に盛られた温かいカツサンドもオレンジジュースも用意されているのに、スパーダは手をつけようともしない。それ所か、食事なんてそっちのけで、姿勢も変えずにコンウェイだけをただ見ている。

「あー……ま、後でな」

そう一言答えるだけで、また固く口を閉ざす。
ふうん、と相槌を返して、コンウェイはまた口を開けた。
会話の必要がないのならと、コンウェイは行儀悪くもテーブルの上に本を開いた。右手にサンドイッチ、左手でページをめくる。コンウェイは視線など無視するように、文章に目を落とす。

そうしてしばらくたってから、スパーダが口を開いた。

「口元」

ただ一言呟き、しかしコンウェイは気付くのが遅れた。本に集中しすぎていたせいだろう。コンウェイがその端正な顔を上げる。

「……え、何?」

「パン屑ついてるぜ」

そこでようやく、スパーダはコップを持ち上げた。濃い鮮やかな橙色のそれが揺れる。コンウェイは左手で口元を確かめるが、スパーダは更に指摘した。

「そこじゃねえよ。もっと下」

オレンジジュースを大きく一口飲み込む。コンウェイはようやく指先でそれを探し当て、はらはらとほろった。スパーダはそれを見て満足したようで、口元に笑みを含みながら、やっとカツサンドに手を伸ばした。コンウェイはただ一言、ありがとうとだけ返して、また本に薄い藤色の視線を落とした。
ざく、と衣の切れる音と、肉を噛みちぎる音。コンウェイが発するよりも豪快なスパーダの食事の音が辺りに散らばる。

「ガキっぽいな、あんた」

「ものを口に入れたまま喋るのは子供っぽいとは言わないのかな」

作品名:食事風景 作家名:Aのひと