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ハッピー・エバー・アフター

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「さ、き、まだ仕事?」
滝沢がエデンのオフィスのドアから顔をのぞかせた。豊洲の同じビルに、エデンのオフィスと、滝沢の部屋があるので、滝沢は咲が残業しているとしょっちゅうのぞきにくるのだ。
「滝沢くん!うん、ちょっと手間取っちゃってね。滝沢くんは今帰り?千草さん、元気だった?」

滝沢が咲のところへ戻ってきてから一年がたっていた。今、彼はエデンを手伝いながら、飯沼千草の選挙スタッフの一人として、彼女の選挙活動も手伝っている。千草は滝沢の中に政治家に不可欠なリーダーシップと信念を見出したらしい。若年層有権者対策プロジェクトの一人として、滝沢はけっこう彼女から頼りにされているらしいのだ。

「うん。相変わらずのスーパーハイテンションさ。・・・それよりさ、仕事、まだかかりそう?ちょっと咲に話あるんだけど・・・」
「話?うん、いいよ、これ締め切り来週だから。キリがいいところまで片付けちゃおうかなって思っていただけだし」
「そ?じゃあさ、俺んとこ、おいでよ」
そう滝沢は言って、咲の手をとって自分の部屋へ連れていった。そして、咲をソファに座らせる。
「何か飲む?」
「え?うん、そうだね、ちょっと喉渇いたから、グレープフルーツジュースある?」
「もちろん!」咲がグレープフルーツジュースが好きだとわかって以来、滝沢は冷蔵庫にグレープフルーツジュースをどっさり蓄えているのだ。
咲にコップに注いだグレープフルーツジュースを渡しながら、咲の横に滝沢も座る。

「咲・・・今日さ、俺、戸籍調べてきたんだ・・・」
「戸籍?滝沢くんの?」
「うん、戸籍謄本っていうの。そうしたらさ、ちゃんと、滝沢朗で、戸籍あったよ、俺の」
「そう・・・なんだ」
「うん、母親は、岩下あやってなってた。咲が見つけ出してくれたお袋の名前どおりだった」
「そっか。やっぱり、あの人がお母さんなんだね」
「それでさ、父親のところにさ、滝沢茂人って書いてあった・・・」
「えっ!!それが、滝沢くんのお父さんってこと?滝沢って、じゃあ、滝沢くんの本名だったんだ!」
「う~ん、それはどうかなあ・・・。俺の経歴って前に1回消されているし。その後、飯沼に塗り替えられそうになったし・・・。どこまでが本当で、どこからがジュイスの作ったもんなのか、いまひとつ、わからないなあ。それに、あの、お袋が、素直に父親の名前届け出るとも思えないしさ~」
「でも・・・」
「とにかく、父親が「滝沢茂人」かどうかなんて、今の俺にはどうでもいいんだ。少なくとも、俺にはお袋がいるし。ただ、俺の戸籍みてさ、まっしろだなあって。」
そう言って、滝沢は咲に自分の戸籍謄本を見せた。父親、母親、そして朗。それだけ。咲は心がぎゅっと痛くなった。

「でも、とにかく、俺は、ハレテ、「滝沢朗」って確認したわけ」
「滝沢くん、どうして、戸籍謄本とろうと思ったの?」
「うん、だってさ、入籍するのに、戸籍ないとマズイって思って確認しにいったんだ」
「えっ?入籍!?誰と!??」
「誰って・・・咲に決まってるじゃん!他に誰がいるっての!?」
「わ、わたしと・・・??」

(入籍って、入籍って、それって、つまり・・・・)

「もしかして・・・咲、いや・・だった?」
滝沢が急にトーンを落として聞く。
「ちっ、ちがう!!イヤじゃない、イヤじゃない!」
「じゃあ、OK?」
「OKだけど、OKだけど、でも・・・」
「でも?」
「それって・・・つまり・・・・」
咲が言いよどんでいると、滝沢は合点がいったような顔つきになって、
「そうだね、咲、ゴメン、ゴメン。順番が逆になっちゃって」
そう言って、滝沢はソファから降りて、膝をつき、咲に手を差し出して言った。

「Saki, would you marry me?」

そして、滝沢はジーンズのポケットから小さな箱を取り出して、ぱかっと咲の目の前で開ける。その中には、かわいい指輪が入っていた。
「あ・・・イ・・イエス!!」
「よかった!!」
滝沢は咲の手を取ってそっとキスをして、咲の薬指に指輪をはめた。
「滝沢くん・・・」
その指輪は、小さなパールがついたとてもかわらしいリングだった。いつのまに、こんな指輪を買ったんだろう?咲は涙があふれてきた。
「ありがとう・・・滝沢くん・・・」
「俺の戸籍まっしろで、いっぱいスペースあるじゃん?でも、咲と結婚してさ、咲と俺の戸籍ができて、子供もいっぱいその籍にいれてさ、どんどん、広がっていくんだなって。そのためのスペースなんだって、思ったんだ」
「滝沢くん・・・」
「だから、まっしろの戸籍でも、逆に俺楽しくなってきたんだ。これから、いくらでも、咲といっしょに埋めることができるスペースがあるってことじゃん?咲と俺の、無限大の可能性っていうかさ。」
滝沢はソファの咲の横に座りなおして、咲の肩を抱いた。
「咲とならさ、いろいろな可能性にトライしていける気がするんだ、俺」
「うん・・・」咲は滝沢の肩に頭を預けた。

滝沢と結婚する。愛し合っている二人だから、もう決して離れ難い二人だから、それはごく普通にいつかはって思っていたけれど。やっぱり、実際にプロポーズされるとすごく嬉しかった。自分が滝沢の過去の空白を埋めて、未来を作ることができるなら-それは、もっと嬉しいことだった。

「ねえ、咲・・・」
「なあに?」咲は薬指のパールの指輪を見ながら返事をした。
「で、夫婦いっしょのトライの第一弾としてさ、子供五人ってどうかな?」
「ご、五人~?!?」
「そ!ホントは十人くらいほしいけどさ、咲のカラダも心配だしさ。とりあえず五人にしておこうかなって。」
「五人だって、十分平均以上だよ~」
「だめかな~?咲、大変かな~?俺、咲のこども、たっくさんほしんだけど・・・」
「と、とりあえず、一人生んでからにしない?まず、一人」
「そっか、じゃあ、まず一人ね」
滝沢は納得したという顔つきでうなずき、咲をお姫様のように抱き上げた。
「えっ?滝沢くん?」
「咲、今から、入籍しにいかない?」
「い、いまから?」
「うん、結婚届って24時間受付OKなんだよ。芸能人とかよく夜中に届出だしてるじゃん?」
「でも、今からって、急に・・・」
もごもごいう咲の唇を、滝沢の唇がふさいだ。咲の息を吸い取るように深い口付けをする。そして、咲の耳にささやいた。
「咲と、一分でも早く結婚したい・・・」
「あ・・・」
「お姫様と王子様は永遠にしあわせに暮らしましたとさ、でしょ?咲」
「滝沢くん・・・」
「それにさ・・・」
「うん?」
「一分でも早く、咲と子作りしたいし!」
「た、滝沢くんったら!!」
はははと笑いながら、滝沢は咲をスクーターまで運んでいった。