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つながっていた時間 その2

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受付時間はとっくに過ぎていたけれど、咲は裏の夜間出入り口のほうから、板津に聞いた503の病室まで階段をいっきに駆け上った。エレベーターなんて、待っていられないから。503の病室の前でいったん息を大きく吸って、バンとドアを開けた。

そこに滝沢がいた。目をまるくして、ベッドの中で上半身を起こしたまま、ドアから飛び込んできた咲を見ていた。

「さ・・・さき・・?どう・・・して・・・」

言葉も途切れ途切れな滝沢に、咲はどどどっと近寄って、ペタンと手のひらで滝沢の頬をやさしくたたいた。ホントは思いっきり、平手ウチをくらわしかったけど、病人相手にそれはまずいと思いとどまった。そして、叫んだ。
「滝沢くんの、ばかっ!!」
滝沢は目を白黒させて、咲を見ている。

ものすごく怒った顔をしたかったけど・・・。涙があふれてきて、それは無理だった。とめどなく出てくる涙をぬぐいもせず、咲は言葉を続けた。

「何でもかんでも自分ひとりで背負いこもうとして!格好ばかりつけて!そんなヤセガマン、する必要なんて、ないんだよ!!私も、エデンの仲間も、みんな、滝沢くんを助けたいって、滝沢くんといっしょに戦うって、決めてるんだから!!」
「さ・・き・・・俺、咲に心配かけたくなくて・・・」
「心配するよ!心配させてよ!わたし、あなたを愛してるんだから!!」
「さ・・・咲・・・」
「歩けるようになってから迎えにくるなんて、格好つけすぎ!滝沢くんが歩けないなら、私が支える。私のほうから迎えにいく!私だって、滝沢くんの力になれるよ!」
「咲・・・」
「だいたい、こっそり、ここの窓から私のこと見てるなんて・・・暗すぎだよ!!ヒッチコックの「裏窓」のつもり!?」
「え・・咲、映画見るようになったの・・・?」
滝沢はなんとも場違いなコメントをする。
「たっくさん、見たよ!映画オタクになるくらい!今度会うときに、滝沢くんと同じ話題を持ちたかったから。滝沢くんと映画の話したかったから・・・」

そこまでが咲の怒りの限界だった。顔をくしゃっとさせて、しくしくと泣き出した。
「わ・・わたし・・・滝沢くんと再会するときは、かわいいワンピースきて・・・ヘアーもメイクもばっちり決めて・・・一番カワイイ姿で会いたかったのに・・・こんな、泣き顔で・・・・」
「咲・・・・」
滝沢は咲の言葉ひとつひとつが、自分の胸にひびくのを感じた。切なくて、やさしくて、強くなった咲・・・。そして、とても、かわいい咲・・・。板津が咲に自分の居場所を告げたことはすぐに想像できた。でも、彼を責める気にはならなかった。それどころか、ほっとするような気持ちだった。板津に感謝したいくらいだ。

(俺も、もう、咲に会いたくて限界だったのかな・・・)

咲はしゃくりあげて泣いている。
「咲・・・こっち来て。」
「・・いやっ!」
「咲・・・」
「私のこと、ずっとほおっておいて・・・帰ってきたのに、知らせてくれなくて・・・こんなひどい怪我したのに、黙ってて・・・」
「咲。ごめん・・・本当にごめん。だから・・・来て?俺のところ・・・」

滝沢は咲に手を伸ばす。
初めて会ったときみたいに。ニューヨークで再会したときみたいに。
咲は涙を手でぬぐいながら、滝沢の手をとって、ベッドの端に腰掛けた。

滝沢は咲の背に片手を回して、もう一方の手を咲の頬に添えた。
「咲、本当にごめんね。俺、心配かけたくなくて・・・それに、まだ車椅子でさ、格好悪いし。こんな姿みせたら、咲がどんなに心配するかと思って・・・」
「滝沢くん・・・」
「ん?」
「反対の立場だったら、どう思う?」
「えっ・・・」
「私がケガして、歩けなくて、でも、滝沢くんに知らせなかった、心配かけたくないからって知らせなかったら・・・どう思う?」
「咲・・・」
「滝沢くんだったら、どう思う?」
まるで挑むような咲の視線を正面から見て、滝沢は自分がどんなに咲にひどいことをしてしまったか悟った。咲のことを大切に思って、この2ヶ月間我慢してきたことが、なんだかひどく自分勝手な行為のように思えてきた。咲は、どんな俺だって、受けとめてくれたんじゃないだろうか。この一年俺がしてきたことだって、受け入れてくれたんじゃないだろうか・・・。

「咲・・・ごめん。俺・・・・どうやら、間違ってたらしいや・・・」
「そうだよ、滝沢くん、間違ってたよ。連絡くれてたら・・・私たち、二ヶ月前に会えてたのに・・・私、本当に、本当に、滝沢くんに会いたかったんだから!ずっと!ずっと!」
咲はたまらず滝沢の胸にしがみついた。
「いてっ!!」
滝沢が顔をしかめる。
「あ!ごめん、滝沢くんのケガにさわっちゃった?」
そう言って身を離そうとする咲を、ぐっと両腕に力をこめて滝沢は抱きとめた。
「痛くってもいいよ、ううん、痛いくらいでいい・・・。咲のこと触れていられるなら・・・痛くっても全然構わない!」
滝沢はこみあげてきた思いのまま、咲をぎゅうっと抱きしめ、彼女の唇に自分の唇を重ねた。甘くて、そして涙でちょっぴり塩からい・・・。

(ああ・・・俺、コレを待ってた・・・)

滝沢はやっと自分の望むものへ、望むところへ、回帰したような思いがして、一度では足りずに、何度も咲に唇を重ねた。

「咲・・・会いたかった・・・会いたかった・・・ホントは、俺だってもっと早くこうして・・・」
「滝沢くん・・・」
「本当は、俺、100パーセントの自信がなかったんだ・・・咲は俺のこと、待っててくれるって信じてたけど・・・いろいろかたづけるのに思ったよりも時間かかってさ。咲の中で、俺の存在がどんどん薄れたんじゃないかって・・・俺がいない毎日でも、咲はけっこう平気なんじゃないかって・・・それなら、俺、咲の生活、今さら邪魔しちゃいけないんじゃないかって・・・俺みたいな、得体の知れないヤツより、もっと似合いのヤツがいるんじゃないかって・・・俺、今までけっこうヤバイ橋も渡ってて、拳銃の弾なんかくらっちゃったし・・・」
「滝沢くん!」
咲は滝沢の言葉をさえぎり、滝沢の両頬に手を添えた。
「それ以上いうと本気で怒るよ?」
「咲・・・」
「ヤバイ橋渡ったのも、拳銃で撃たれたのも、みんなのためでしょ?私たちのためでしょ?滝沢くん、いろんな人を救うためだったんでしょ?そんなこと、わからない私だと思ったの?」
「咲・・・・俺・・・」
咲は首からさげたゴールデンリングに手を添えていった。
「私たちのゴールデンリング・・・でしょ?やっと、私たちを会わせてくれたよ・・こんなステキなリング、くれる人なんて他にいないよ?」
「咲・・・ありがとう・・・俺・・・」
「もう・・・黙って・・・」

                              →その3へ続く