僕の秘密
静雄さんは不意にそう呟いて照れたように俯いた。
「そうですか?別に他の家とかとあまり変わらないと思いますよ。」
うーん、と静雄さんは自分の頭をガシガシと掻いた。
「他の奴の家に行くとその家の匂いっていうのか?そういうのがあってなんだか変に緊張しちまうんだよ。でも帝人の家はそんなんなくて、初めて来た時からなんだか落ち着いてたんだよな。」
特に変わったことはしていないんだけどな、と心の中で呟いてはっとする。
「それって、僕の家に入る前に静雄さんが僕の匂いに慣れちゃってたからじゃないですか?」
こうやって、と言って畳の上で胡坐をかいて座っている静雄さんの足の上に向き合う形で座って抱きつく。
「み、帝人っ!?」
顔を真っ赤にして驚いた様子だったけど、恐る恐る僕の背中に手を回してくれた。
「慣れたっていうか、元々好きな匂いだったっていうか・・・」
口篭る静雄さんが何だか可愛く思えて静雄さんの背中に回した腕に力を込めて、胸に顔を埋めると、静雄さんは僕の背中をゆっくりと撫でた。
「僕も静雄さんの匂い好きですよ。なんだかすごく安心するんですよね。静雄さんが傍にいると思うと。」
微笑んで見せると、静雄さんは照れたように掛けていたサングラスを指で押さえた。
「だったら、俺はずっと帝人の傍にいてやるよ。」
「はい、お願いしますね。それとですね・・・」
「ん?」
「僕が好きなのは匂いじゃなくて、静雄さんの全部ですから。」
「お、おう・・・」
何度かこういうやりとりをしているのに関わらず、こういう反応をする静雄さんが僕は一番好きだな。
なんていうのは僕だけの秘密だ。
『静雄さん。』
『何だ?』
『静雄さんがしてるサングラス、静雄さんに似合ってて格好良いから好きなんですけど、キスするのにはちょっと邪魔ですよね。』
『みみみみ帝人っ!!!???』
『・・・冗談です。』