ステップファザー・・・?
「俺たち、絶対に通報しないよ」
「刑務所には入りたくないでしょ?」
「でもね、ひとつだけ」
「条件があるんだ」
「「お願い!俺たちのパパになって!」」
・ ・ ・ どうしてこうなった。
リボーンから今回の仕事を受け取り、標的の家に忍び込もうとしたところまではよかった。
だがその日はひどい雨で、運悪く僕は足を滑らせ屋根から転げ落ちたらしい。
目が覚めたら、目の前に同じ顔がふたつ。
「「あ、起きた」」
「・・・??」
僕は起き上がって、目をこすった。
「錯覚じゃないよ」
「俺たち双子なの」
「俺、ツナ」
「俺は綱吉」
「ちなみにここは、俺たちの家のリビング」
「あなたが庭に転がってるのを見つけて、運んだんだ」
「それが夕べのこと」
「今は午前9時だよ」
「ちなみに俺たちは、一晩中交代で見張りしてた」
「目を覚ましたら、すぐに分かるようにね」
「どこか痛むとこない?救急箱持ってこようか?」
「お腹空いてる?朝の残りがあるけど」
「ちょ、待った。その喋り方やめて。混乱する」
「「あ、ごめんなさい」」
「・・・とりあえず、顔を洗いたい。洗面所は?」
「あっちだよー」
立ち上がろうとすると、足首に鈍い痛みが走った。
「・・・っ」
「「ケガしてるの!?」」
「手伝わなくていい」
「「でも!」」
「僕は人に頼るのは嫌いだ」
一睨みすると、双子は大人しく引き下がった。
それから顔を洗ってる間、ふと疑問に思った。
あの双子の両親は、一体どこだ?
彼らの証言から察するに、僕は一晩中リビングのソファに寝かされていた。
ならばどちらかが気づかなければおかしい。
共働きで、昨日は遅くに帰ってきて疲れてそのまま寝室に直行、というのも考えたが、それでも朝に見つからないのはありえない。
(じゃあ、どうして・・・?)
考えながらリビングに戻ってソファに座ると、「何かお腹に入れといたほうがいいよ」とオレンジジュースを手渡された。
ひとくち飲んだところで、双子の片割れが口を開いた。
「ねぇ、あなたって怪盗クラウドでしょ?」
「ぶっ!!」
いい年して盛大に吹き出してしまった。これじゃ肯定と変わりない。
「ど、して、わかっ・・・」
噎せながら聞くと、もうひとりが「これ!」と雲の刻印のカードを差し出してきた。
間違いなく、僕が仕事現場に残すものだ。
「装備とかもすごかったよね」
「証拠、いっぱい取っちゃった」
ほらほら、と見せつけるのは僕の上着の裏地に仕込んだ数々の道具の写真と、指紋の取られたセロテープ。
(よりにもよって、こんな子供に・・・!)
得意げに笑う四つの瞳に、僕の間抜け面が映る。
『お手柄双子 怪盗クラウド逮捕!』の見出しが脳裏をよぎった。
双子は続けて言った。
「「だいじょうぶ、心配しないで」」
「・・・何が?」
そして、冒頭に戻る。
「・・・パパ?」
「「そう、パパ」」
「君たちの母親と結婚しろってこと?」
「「ちがうよ!」」
「じゃあ、何?」
「正確には、パパのふりってこと」
「必要なときにだけいてくれればいいから」
「・・・君たち、両親は?」
「駆け落ちしちゃったんだ」
「同じ日に、違う人と」
「二人とも、どっちかが残ってると思ってて」
「俺たちは置いてけぼり」
「こんなことが周りにバレたら」
「俺たち離ればなれになっちゃうよ」
「まだ誰も、俺たちの親の顔は知らないよ」
「引っ越してきたばっかだし、共働きだったから」
「だからあなたがパパのふりをしても」
「誰も怪しむ人はいないよ」
「「だからお願い!」」
「嫌だと言ったら?」
「「通報!」」
・・・「お願い」なのに「脅迫」に聞こえるのは何故だ。
雲雀恭弥、通称怪盗クラウド。
今日から、二児の父になります。
作品名:ステップファザー・・・? 作家名:こっこ