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正臣少年、貞操の危機

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「人間の3大欲を挙げてみて」
「食欲、睡眠欲、性欲ですね」
「君の今の3大欲を挙げてみて」
「睡眠欲、睡眠欲、すいいん欲っすね…」
「3つ言えてないよ」
臨也の意地悪なつっこみに正臣はううとうなって、少しだけ舌足らずな口調で、
「臨也さんとても申し訳ないことなんれすが、実は今おれ…無我の境地まであと3歩のところに来てるんすよ…」
「だから?」
だからといって臨也はひるんだりしない。正臣は最後まで言わなければならず、
「つまりあわよくは最後の川を渡らせてもらえませ、んか…つまりおれの瞼をむりやり開けようとしないれくらさいたたた」
状況説明。横になっててもう少しで眠りに落ちるところだった正臣の瞼を、臨也が指でくいくいと開けようとして遊んでいるのだった。
「ほーらほーら寝させないよー」
完全な睡眠妨害である。そうでなかったとしてもものすごい嫌がらせ。
正臣はちょっと邪険そうに、
「もう人生ゲームは十分したじゃないですかーいたた、深夜3時ですよー眠いっす…」
携帯メールで呼び出され、学校帰りに臨也宅へ直行してから早10時間。呼び出された用件はといえば『これ懐かしいよね。一緒にしようよ』と人生ゲームの相手をやれとのことである。正臣も最初は『わー小学生のときじいちゃんちで正月にやって以来っすね懐かしい!』とはしゃぎ飛びついたが、さすがにこう何回も繰り返し遊んでいては面白みも薄れていくというものである。正臣の人生は常に山あり谷ありだったが、臨也の人生はなぜか毎回最終的に大成功を収めていたあたり何か種があるのかと勘ぐらなくもないし。
「だからってこんなところでごろ寝はよくないからさ」くいくい。
あくまで正臣をそっと寝させてやらないつもりらしい臨也。まつげ長ーいとか勝手なことを呟いている。
「大丈夫です、おれの体スーパーマンなんでこのくらいじゃどうもしないっす」
「スーパーマンなら1日くらい徹夜できるよね」即座に揚げ足をとる臨也。
「臨也さんは何日オールするつもりなんすか…」
「3日くらい?」
「うあああ」
聞きたくない台詞に正臣は顔を盛大にしかめ耳を塞いだ。なんとなく目も覚めてきてしまった。うっすらと目を開けると自分の瞼をいじる臨也の指の向こうには人生ゲームのボードが。車のコマやお金の札が転がっているのが見える。
「人生ゲーム、トラウマになりました…」
「何でー?楽しいじゃん」
打ちひしがれる正臣。分かっている。この人がやりたいのは人生ゲームではなくおれに対する嫌がらせだ。
「そりゃ臨也さんはずっと勝ち組人生だから楽しいでしょうけど」
よっこらせ、と頭も冴えてしまった正臣は体を起こした。斜め前に臨也が座っている。ふっと臨也の顔を見てみると、てっきちいつものような食えない顔でにやにや笑っていると思っていたのに実際は笑っていなかった。正臣は驚き焦る。
「じ、人生ゲームの続きやりますか…」
臨也の無表情スイッチが完全にオンになった。
正臣の顔が一瞬固まったことなんて思い切りスルーして、臨也は、
「んんん。やっぱもういいや」全力で焦る正臣。
「えっどうしたんですかやりましょう臨也さん、今度はおれアナウンサーになりたいっす!」
「君はよく口が回るからタレントの方が向いてると思うよー」
そう言って無愛想に臨也は立ち上がり、人生ゲームの片付けをし始めた。
盛大に顔が引きつる正臣。何かいけないことを言ったのかとしれないと思ったら次の瞬間には、臨也相手に最も言ってはいけないことを言ってしまっていた。

「すいません臨也さんおれが片付けます!」
臨也が待っていた言葉である。

「すいません?」
「うえっ?」
眠りから覚醒したばかりの正臣は頭の回転がまだすこし遅い。このたちの悪さ爆裂の情報屋相手に謝罪の言葉をかけてしまったりしたらどうなるのか。畳み掛けるように臨也は正臣に詰寄った。
「すいませんってことはさー自分が何か悪いことしたと思ってるってことだよねーお詫びはー?気持ちだけー?」
完全に飲まれる正臣。
「えっあっ片付けます…」と言うがしかし次の瞬間目の前のボードとコマは臨也がばっと蹴り散らしてしまう。
「あああ」
「申し訳ないと思ってるのに言葉だけー?言葉ってタダじゃん。誰にでもできるじゃん。おみおみはおみおみにしかできない謝罪をして相手に誠意をみせるべきじゃないの?」こういうときに可愛らしくおみおみと言われても逆に怖いだけである。
「まじすいません本当すいません誠意っすか」自分がどんな悪いことをしたのかなど考える暇を与えない臨也の問いかけ。正臣は言葉に詰まって、

「えと…何をすれば、いいですか」
臨也が期待していた言葉である。

瞬時に、真顔でこちらにせまり、怒り顔ではないゆえのプレッシャーを思い切り注いできていた臨也の顔がいつもの笑顔に化けた。その口から出た言葉は。
「一緒に寝ようか」
「へっ!?」
臨也の発言に瞠目する正臣。
完全にNOとは言えない状況、だがしかし寝るとはこの場合どんな行為を指すのか。正臣は正しく思春期男子である。臨也も成人男子である。(たぶん健全)
「い、臨也さん寝るって…」
正臣の胴体をすくいとるように腕でふいっと持ち上げる臨也。自分の足で歩こうともがき出す正臣。2人の向く方向には寝室のドア。
「ちょ、臨也さ」
「寝るーそのまんまの意味」今度は笑顔一辺倒の臨也の顔からはやっぱり先が読めない。本気で焦る正臣。じたばたと粘って、
「可能性はいくつかありますよね!? いやだ臨也さんおれ臨也さんにならたしかに押し倒されてもいいけどでも心の準備と体のケアが」
その言葉に今度は臨也が吹きだした。
「あはははは!おみおみ、この場面でそんな色気も何もないこと言っちゃいけないよー」
「い、臨也さ…」
ははははと腹をよじらせる臨也の腕は自然と下りて、正臣は臨也と向かい合って形になる。
次の臨也の言葉に正臣は全力で安堵した。
「別にさー、いくらおみおみが可愛いからって取って食ったりしないし」
「しないっすかー…! そっかそうですよね、すいません…」
「また謝った」
「寝ます!」
「ははは」
そして2人は仲良く寝室へと消えていった。

今日1日散々遊び倒された人生ゲームは、最後は無残な姿のまま1晩放置されることになってしまった。
深夜3時。情報屋の言うことを素直に信じてしまった正臣少年、貞操の危機。
作品名:正臣少年、貞操の危機 作家名:きさいち