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【銀魂】過去作品まとめ【夜兎メイン】

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誕生日

神威+阿伏兎 吉原炎上編後

 フリフリのエプロンを身につけた部下の姿に、神威は目を点にした。
「わぉ、どうしたの阿伏兎。何か目覚めちゃった?どうでもいいけど俺にまで強要するなよ」
「するか!この、すっとこどっこい」
 阿伏兎は手に持っていた物を差し出した。チョコレートのホールケーキだ。
「あり?何コレ?」
 神威は寝っ転がっていた身体を起こす。視線は完全にケーキだけに向けられていた。
「隊長殿。今日は何日か覚えてるか?」
「んーん。って言うかさっき上の奴らに始末書かけって言われたんだ。阿伏兎、お前が代わりにやっといてよ」
 机に置いてある紙を見せると阿伏兎は苦い顔をする。書類はつい先日起こしたビル崩壊についての始末書だった。
「んで、今日って何の日?独身男が手作りケーキを作る日とか?」
「なわけあるかぃ。六月一日、アンタの誕生日だよ」
「へぇー。そっかぁ、そう言えばそんな日も存在したね」
 本当に忘れていたのか、神威は二、三回うんうんっと頷いた。阿伏兎は呆れてため息も出なかった。
「あぁ、アンタはすっかりお忘れの様ですがね。一般の人にとって誕生日は家族のビックイベント一つなんだぞ」
 阿伏兎はケーキを見つめた。クリームたっぷりだが、イマイチ飾り気にかける。そう言えばプレートをのせるのを忘れた事を思い出す。ハッピーバスーデー隊長って書くあの板チョコ。ハッッピーかどうかはこの際置いておく。
「まぁ。だから代わりに俺がこうして作ったわけだが…」
「何時になく気持ち悪いな。阿伏兎、こないだ妹にあったから俺がおセンチになったとでも思ったわけ?」純粋さも邪気も感じさせず神威はケタケタ笑う。「名字すら存在しない夜兎に家族の繋がりなんて感じるわけないだろ」
「うるせぇやい。もういい、自分で食ってやる」阿伏兎は片手だけで器用にケーキを抱える。
「あー、待てよ阿伏兎。フリフリエプロン姿超可愛い。素敵、素敵、本当に似合ってるよ」
「アホか、誰がそんな単調に言われて喜ぶんだよ。って言うか悪かったな、このエプロンしかなかったんだよ!」
「そーなんだ。お疲れ様だね阿伏兎」
 神威は素早く阿伏兎からケーキ奪うと、左手でテーブルの上の荷物を全て落とした。鉛筆や書類が、まるで生ゴミの様に地面に散乱した。それを一切気にする事無く、神威はウキウキとテーブルにケーキを置いた。
 阿伏兎は食器棚を開く。そこからフォークと小皿をとりだす。素手で食べだしそうな勢いの神威に、阿伏兎はフォークを手渡した。
「隊長。ケーキ、一切れ分残しとけよ」
「なんで?阿伏兎が甘い物を強請るなんて珍しいな」
 神威がようやく阿伏兎に向き直る。子どもみたいな大きな目で阿伏兎をみた。
「俺の分じゃねーよ、云業の分」
「誰それ、強いの?」
「はぁ……、一応アンタの部下だよ」
「ねぇ、強いの?」
「強かった」もう過去形だ。っと阿伏兎は付け加えた。
「ふーん。つまんないの」
 神威は完全に興味をなくしたのか、ケーキにホークを突き立てる。真ん中から一気にケーキを抉った。
「……隊長。この間のビル崩壊の事件覚えてるか?」
「ビル崩壊?何それ?覚えてないなぁ」
「誰かさんがめちゃくちゃに暴れて、部下二人がてんてこまいになった話だよ。そして一人は死んだ」
阿伏兎は右手で自分の腕をさすった。ゴツゴツした骨と柔らかな包帯を摘む。神威はまたケーキにフォークを突き刺した。苦労して飾り付けしたクリームがもうめちゃくちゃになっている。
「そんな事よりさぁ阿伏兎。あのお侍さんは強くなったかなぁ?楽しみだなぁ?」
 純粋さも邪気もなく、神威の顔に笑みが走る。とても嬉しそうに、楽しそうに笑う。
 口元にクリームもつけたまま笑う姿は小さな子どもと変わらない。
「…………そーだな」
 阿伏兎は地面に散らばった書類を漁る。ビル崩壊の始末書。吉原の詳細書類。武器補充ついて…。その全てを一つ残らず拾い上げる。
「それじゃ、お誕生日の隊長の為に仕事引き受けさせてもらいますかねぇ」
 立ち上がると直ぐに踵を返した。横目で自分の隊長を見た。後ろでは隊長が嬉しそうにケーキを頬張っていた。
 ため息を一つついて阿伏兎は歩き出した。
「阿伏兎」っと後ろから名前を呼ばれ阿伏兎はその場に立ち止まった。
「ケーキありがとね」
「いーえ。誕生日おめでとうございます、隊長」
 阿伏兎は振り向く事なく小さく手を振った。