【銀魂】過去作品まとめ【銀妙】
かなわない恋
3Z設定で、銀八←妙。視点は妙に恋してる男の子です。
僕には好きな人がいる。学年が一つ上の志村妙さんだ。生徒会長をしていて、僕はその補佐。つまりは副会長をしている。
彼女には好きな人がいる。その人の名は坂田銀八さん。彼女の担任であり教師だ。それはいけない事なのに、誰も口に出してはいわない。
わかっているからだ。叶わない、と。思春期特有の一時的な想いだから。あえてそれを遮ることをいわない。
彼女は叶わない恋をしている。それは叶ってはいけない恋。彼女もきっとわかっている。わかっていて、それでも想いを止められないでいる。
『かなわない恋』
「ごめんね。こんな時間まで」
「いえ、元はといえば僕のミスのせいですから」
窓を見ると、外はもう日が暮れ始めようとしていた。生徒会室のぼんやりとした光が僕たち二人を包んでいた。
僕は、目の前の書類を、一枚一枚目で追うふりをする。
ぼぉっとした目で書類をなぞる。書類には小さい文字がいっぱい書いてあった。会計の書類だった。これは手を動かさなければ。と僕は電卓を叩き出した。
目に入ってくる文字をひたすらに打ち込み続けた。あっているかどうかなんて興味はない。
「会長」
「何?」僕の呼びかけに、一泊置いて応える。
「もうすぐ……、卒業ですね」
「すぐって、まだ五ヵ月もあるのよ」
「すぐ、ですよ」
「そうね。じゃぁ、貴方への引継ぎの準備をしなくちゃいけないわね」
「そうですね」と僕は頷く。頷いてからまた書類に目を移した。
僕は偶にミスをする。何時もは有能に見られたくて、与えられた仕事は完璧にこなす。彼女に指示を出される前に行動を起こす。
だから「頼りになる人」っと周りからも、彼女からの信頼も厚い。僕も普段はその期待に応えられるよう日々頑張っている。
そう普段は。
だけどこの日はワザとミスをした。彼女と一緒にいる時間を増やしたかったからだ。この時間が許されるのは後数か月。でもそれは彼女も同じ。彼女も、後数か月したらこの学校にいられない。
僕はわざと窓の外を覗いた。みると、剣道部が列をなして帰っていく。
暑そうにワイシャツをはためかせていた。近藤先輩、鴨先輩。知っている顔ぶれを何人か確認した。
「剣道部。終わったみたいですよ」と僕はわざと声にだした。
「そう」と彼女は淡白に頷く。
「そろそろ終わりにしましょうか。もういい時間です」
「そうね、いい時間かも知れない」
「残ったのは家でやってきます」
「別に明日でいいわよ。急いでないから」
「いいんです。僕のミスですから」
「気にし過ぎよ。もうちょっと気楽にやっていいんだよ」
ふっと口元を緩める。そして口調を和らげた。私なんて最近ミスしてばっかりよ。と彼女は笑った。
僕は笑わず、彼女をじっと見た。
「会長。明日は、ミスしませんから」
そうと言うと「なら、私も気をつけるわ」と彼女は静かにいった。
作品名:【銀魂】過去作品まとめ【銀妙】 作家名:千米ともち