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Weird sisters story

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CAT 2




俺たちは、何故出遭ってしまったのだろう?


そう尋ねた俺に、お前は笑って答えた。
    「『運命』、だろ?」



予測していた通りに扉が開く。
そして、また。
「おはよ!!」
いつもの笑顔が飛び込んできた。
だが少しだけ、瞼が腫れているようにも見えるが。
「今日は?」
「今日、は…マスターが好きなのでいい!一番得意なヤツ!」
おや、と声を上げるが直ぐに笑顔に代わる。
その笑みが奥に消えると、相変わらず無表情でグラスを整理するレイに矛先を向けた。
「昨日は、ありがと」
「二度目だ」
「へ?何が?」
いつもの特等席であるカウンターに座りながら、レイの話の繋がらない単語に耳を傾ける。
「礼なら昨日も聞いた」
その言葉にシンは僅かに納得する。
そして零れそうな笑顔で答えた。
「レイには、いくら言っても言い足りないと思う」
少しばかり凝視ししていたレイが口を開くより先に、シンが続けた。
「今日も、ヒマ?」
「…好い加減にしろ。いくらなんでも二日連続は無理だ」
「あ、違う!一日じゃなくて。…多分三十分もかかんないから」
ダメ?と首を傾げるシンに疑問が上がる。
「何処に行くんだ?」
「ん〜行ってからのお楽しみ!」
そこまで言って、主人が腕にヨリをかけた朝食を運んできた。
シンはすぐさまそっちに気を取られ、何処をともなく睨んで厳しい表情をしているレイに気付かなかった。



跳ねるように進むシンを追って数十分は経とうとしている。
「何処まで行く?」
「もうちょい!」
笑顔が振り返るが、どこか疲れている。
だがその思いをレイは口にしなかった。
気付けば回りの景色は見慣れた大通りを外れ、初めてシンと出会った路地裏へと変わっていた。
さらに深く進み、街の喧騒も何もかも離れた場所へ来て、初めてシンは足を止めた。
「……シン?」
止まったまま動かないシンに近づこうとして、出来なかった。
シンが勢いよく振り向いたから。
先程までの笑顔がウソのように、シンは泣き崩れた。
「レイっ!ごめん、俺……」
何が、と開きかけた唇はそのまま固まった。
ガチャリ、と響く音。
そして背中に感じる冷たい感触は、おそらく、銃。
「動くな」
すぐ後ろで低い声がする。
「ザフト軍第一独立特兵、レイ・ザ・バレルだな?」
確認する意が汲み取れるその言葉に、レイは目を伏せる。
「そうだ、と答えたら…どうする?」
その問いは尋ねた後ろの男にではなく、目の前でまだ泣き続けるシンにこそ投げた。
だが勿論の事、答えたのは男の方で。
「ベルリンでの我が軍の情報の漏洩、アラスカでの軍事工廠の爆発及びそれに伴う人質の解放。また、他の事件の首謀者としてお前を拘束、もしくは射殺する」
ずいぶんと昔の話を持ち出してくる――。
そう思うと自然に溜息が零れる。
その様子を見取った男が更に銃口を突きつけてきた。
「無駄な抵抗はするな。周辺に我が隊が潜んでいる。暴れても無駄だ」
レイはシンを見た。
「そうだな」
そして不敵に、哂った。
「暴れるだけでは能が無い」
言うが早いか、レイは瞬時に屈み驚く男が引き金を引く前にその顎を蹴り上げた。
レイの名を叫ぶシンの声が響くのと八方から浴びせられる銃弾の雨。
だがそれは一瞬にして止む。
周りを囲む地球軍の、更にその周りを囲っていたザフトが攻撃を開始したのだ。
―――謀られた!
優位を誇り半ば気を許していた地球軍が焦る。
ナチュラルとコーディネイター。それは致命的な差であった。
しかも奇襲をかけられてはその勝敗はおのずと見えてくる。
見る間に戦局が変わり、地球軍が倒れていく。
そしてそれは無論、シンの身にも迫っていた。
「ちっ、くしょお!!」
飛んでくる銃弾をかわしながら、シンは携帯していた銃とナイフを使い分け応戦する。
そしてそれを見ていたレイは、己の中にあった疑念を確信に変えていた。
「レイ・ザ・バレル!何を呆けている!!手伝え!」
シンを相手にしている男が叫ぶ。
そうしている間にもザフト兵はたった一人の少年によって次々に倒されていく。
「俺の任務は目標の誘導だ。手を貸す義理も義務も無い。それとも…倒せる自信がないのか?」
冷めたレイと対照的に相手は頭に血を昇らせる。
レイから顔を背け激昂してシンに飛び掛ったが、程なくして膝から崩れ落ちた。
それが最後の一人であった。残されたのはシンとレイだけ。
乾いた金属音と共に赤いナイフがシンの手から離れ路地に落ちる。
ゆっくりと、レイはシンに向かい踏み出した。
しかし。
振り向いたシンはその銃口をレイに合わせていた。
「なんで…レイ!」
また、泣きそうだ。
レイは静かにそう想う。
「何故も何も、お前が考えている通りだ。シン・アスカ」
言った事もないフルネームで呼ばれ更にシンの顔が強張る。
「…騙してたってワケか」
「それはお互い様だ」
再び歩き始めるレイに声を上げた。
「動くなよ!俺はお前に射殺の許可を得てる」
「それが…どうした?」
「なっ」
怯んだその一瞬をついて、いつの間にか手にしていた銃でレイはシンの銃を弾き飛ばした。
呆然とするシンに続ける。
「地球軍にいるコーディネーターというのは、随分貴重な存在だな」
「俺、は…」
「コーディネイターではない、か?あれだけの数を相手にまだ立っているお前が」
悔しそうに唇を噛むシンに、レイは少しだけ微笑む。
「俺を、どーする気?」
「あぁ、アイツ等は殺す気だったらしいが…」
とレイはシンの周りに転がるザフト兵を一瞥する。
「俺は別に、どうもしない」
「……は?」
気だるそうに銃をコートの下にしまった。
「お前の好きにすればいい」
「な、んだよ、それ!!」
怒りとか、その他のいろんな感情が混じった瞳で睨みつけた。
「ふざけんな!お前なんか俺を…なにも……なにも知らないくせに!!」
手近に合った銃を拾い上げ、もう一度レイに向けた。
レイは何も言わない。ただシンに向かって足を進める。
「来るな!撃つぞ!!」
それでもレイは止まらない。
震える銃が、レイのちょうど心臓の上に当たったところで、レイはシンを抱きしめた。
驚いたシンの手から銃が滑り落ちる。
優しく抱かれて、堪えていた涙が零れ落ちた。
声もなく泣いて、ようやくシンはポツリと言った。
「妹が、居るんだ」
「軍にか?」
「違う。軍には…いるけど、軟禁されてる」
「………人質か」
コーディネーターであるシンを、裏切らせない為の。
「名は?」
「マユ。マユ・アスカ」
そうか、と呟き、レイは周りに目を走らせる。
目的物を見つけて、シンと距離を置いた。
「…レイ?」
疑問を投げかける瞳には答えないで、地球軍兵の一人の腰にある通信機を手にする。
シンが言葉を発する前に。
「地球軍、聞こえるか?ザフト軍第一独立特兵レイ・ザ・バレルだ」
帰ってきた通信は、明らかに動揺する響きが含まれていた。
ややあって、まともな言葉が返ってくる。
『…地球軍、ネオ・ロアノーク大佐だ』
「シン・アスカを拘束した。以下の用件を要求する」
『…なに?』
戸惑う声音に構わず続ける。
「これから三日後、ポイントN5517におきマユ・アスカとシン・アスカの交換を要求する」
声を上げようとするシンを睨み、黙らせる。
作品名:Weird sisters story 作家名:ハゼロ