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ホワイト・エンジェル

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「滝沢~!!用意できたか?」
平澤が部屋に飛び込んできた。
「おう。こんなもんでいいかな?」
滝沢はグレーのスーツ姿に白いネクタイをしている。
「よ、キマッテルじゃないか!」
平澤は滝沢の横に立って、一緒に鏡を覗き込んだ。
「咲は?」
「あっちの部屋で準備しているぜ。みっちょんやオネエがついて、きゃーきゃーいってた」
「そっか」
「いよいよ、だな」
「うん・・・」


今日は、滝沢と咲との結婚式なのだ。咲の家族やエデンの仲間、それに豊洲にいる親しい人たちを招いて、結婚式をあげようということになったのだ。結婚式といっても、牧師を呼ぶわけでもなく、ただみんなで滝沢と咲の新しい門出を祝福しようというシンプルなパーティーで。でも、それが二人が望んだ結婚式の形だった。みんなも、いろいろな出来事があってやっと正式に夫婦になった二人を、心から祝いたいという気持ちで。1週間前から、会場となる豊洲のショッピングセンターフロアーは、準備でごったがえしていた。豊洲に集っているニートたちも、びっくりするくらい手伝ってくれて。手作り感にあふれた、でも、心がこもった会場作りとなった。そこら中に花が飾られ、天井から星やらリボンやら風船やらがにぎやかに垂れ下がっている。


「平澤・・・」
「ん?」
「ありがとな、いろいろ。」
「な~に、いってんだよ、いまさら。俺たち、運命共同体だっていったろ?」
「ああ。でも、やっぱり、感謝してるからさ。お前にも、他のヤツラにもさ」
「お前が一番感謝しなけりゃならないのは、咲だろ。俺らよりも、さ」
そう言って平澤は滝沢の背中をぱん!とたたいた。
「でも、感謝してるっていうならさ、お前がさ、咲とシアワセになってくれるのが一番の恩返しだぜ!」
「ああ、サンキュー」

滝沢は結びなれていないネクタイをもう一度締めなおした。
「なあ、平澤・・・・ホントに俺でいいのかな・・・咲の相手」
「な・・・」
「俺みたいなエタイの知れないヤツが相手でさ、咲は本当に後悔しないかな?咲だったらいくらでも、もっとマトモなヤツが・・・」
「な~に、いっちょまえの口きいちょるんじゃ!ヴィンテージ!」
「い、板津!」

ドアのところに、ネクタイをしめた板津が立っていた。ネクタイはしめているが、上着はTシャツだ。
「お前が、パン屋の姉ちゃんなしに、いられるかよ!?頼むから一生一緒にいてくれって、正直に姉ちゃんにいわんかい!」
そう言って、板津は部屋に入って来て、滝沢の背中を思いっきりどやしつけた。
「いっちょまえの色男風のセリフはく前に、自覚せえ!パン屋の姉ちゃんには確かにいくらでも選択肢はあるがのう、お前には姉ちゃんしかおらんのじゃから!」
「板津・・・お前、ずいぶんハッキリいってくれるじゃねえか!」
「わしは正直者じゃからのう!」
そういって、板津はからからと笑った。
平澤も追い討ちをかけるように言う。
「愛を知ると人は不安になるものだよ、滝沢」
「あ~、わかった、わかった、二人とも、ありがた~いアドバイス、ありがとよ!」
滝沢は苦笑いして、二人を見た。

咲と結婚する。結婚できる。そんな日が訪れてくれたことには、ここにいる二人が少なからず貢献してくれているのだ。

「た~き~ざ~わ~く~ん!!準備できたあ?」
オネエが廊下で呼んでいる。
「おうっ!今行く!」
滝沢は二人とともに、ドアを出ていった。


「あ・・・・」
廊下に出た滝沢は、そこに立っていた咲の姿に息をのんだ。平澤と板津も同様に息をのんだことがわかった。
咲は白いフリルのロングワンピースを着て、パールのロングネックレスを首にかけ、アップにした髪に白い花を飾っている。薄化粧した彼女ははにかみながら、白い花のブーケを抱えていた。その姿はまさにエンジェル。光輝くピュアなホワイト・エンジェル。

「さ・・・き・・・すっげーキレイだ・・・」
「滝沢くん・・・」
頬を染める咲の姿はますます美しさを増し、滝沢は言葉を失ってしまった。

「ちょっと、ちょっと、滝沢くん、花嫁にみとれすぎよ~」オネエが冷やかす。
しかし、滝沢はまるで、聞こえていないように咲を見つめ続けている。

はっと我に返った平澤が言った。
「と、とにかく、みんな待ってるから、会場へいこうぜ。・・・って、おい、板津、なんで、お前が泣いてんだよ!?」
板津は瞳をうるませて、咲を見つめていた。
「う、うるせえ!わしゃ、花嫁の父の気分なんじゃ!ほっとけ!」
そこにいた全員がひとしきり笑い声をあげた。

そして、滝沢は咲の手をとって言った。
「咲・・・行こうか」
「うん」
滝沢は咲の手をとって、結婚式の会場となる一階のショッピングフロアーへの階段を降りていった。


本格的ウェディングドレスじゃないほうがいい。白いワンピースで十分。等身大の私のままで式をあげたい。そう望んだのは咲自身だった。一生に一回のビッグイベントだから、やっぱり咲のためにきちんとした結婚式にしたほうがいいのかと滝沢は思ったが、いつものままで、いつものみんなに祝ってもらえたらそれでいいのと言っていた。確かに、ウェディングドレスなんて着なくても、白いワンピースでも、咲は十分以上にきれいだった。いや、こっちのほうが、咲のかわいさが引き立つ。滝沢はそう思った。こんなかわいい咲が。こんなにキレイな咲が。俺の嫁さんなのか!?滝沢は自分のシアワセが信じられないような思いだった。

「咲・・・天使みたいだ、キレイで」
「滝沢くんったら・・・ありがと。でも、天使はいいすぎだよ?」
「い~や、言いすぎなもんか。咲は俺の天使そのものさ!」

俺を過去の闇からすくいだしてくれた咲。
たった一人、俺を信じてくれた咲。
記憶を消した俺をニューヨークまでみつけにきてくれた咲。
俺が姿を消している間、ずっと俺のことを信じて待っていてくれた咲。

咲がいたから。
咲が信じてくれていたから。
俺はいま、ここにいられる。
エデンのヤツラと一緒にいられる。
俺のことを心配して、気遣ってくれる、仲間と呼べるヤツラがいる。

(板津のいうとおりだな・・・)
俺には咲しかいない。
咲しかいなかったんだ。

「咲・・・」
階段の途中で立ち止まって、滝沢は咲を思いっきり抱きしめた。
「咲、俺、スッゲ~、シアワセもん!」
「た、滝沢くん・・・」
「咲が嫁さんで俺、スッゲー、ラッキー!」
「私だって・・・滝沢さんがだんなさんで・・・シアワセ・・・」
「咲・・・」

「ちょっと~!!お二人さん、イチャイチャするのは夜ゆっくりして~。先にパーティーよ!」
後ろからついてきていたオネエが声をあげる。
二人はぱっと顔を赤らめて、体を離して、残りの階段を降りていった。

フロアーに、二人の門出を祝うために集まってくれた仲間がいる。
うぉ~!!と地響きみたいなニートたちの叫び声が聞こえる。
二人の姿に、いつのまにか拍手が沸きあがった。
滝沢は片手をあげて、拍手に応えて叫んだ。
「みんな~、サンキューベリーマッチ!!」

そう、みんなに。今まで起こった出来事すべてに。つらかった一人ぼっちの日々にさえ。すべてに感謝だよ!咲という天使に俺のベクトルを合わせてくれた、すべての出来事に感謝だよ!
作品名:ホワイト・エンジェル 作家名:なつの