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俺の宝物

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※東のエデン劇場版Ⅰで、ニューヨークの映画館で滝沢くんが咲ちゃんに語りかけるシーンのお話です。


とりあえず俺が働いている映画館に入りこんで、スクリーンの前のシートに彼女を座らせた。アパートが爆発されちまったら、他に行くアテもないし、とりあえず、ここなら体を休めることはできる。
冷房が効きすぎて体を冷やすといけないと思い、俺は彼女にブランケットを渡した。

「じゃ、ゆっくり休んで」
「うん・・・滝沢くんは?」
「誰か来るとマズイから、俺ドアの外で見張ってるよ」

そう言って去りかけた俺に彼女の不安げな声が追ってきた。

「もしかして、また、いなくなっちゃう・・・」

彼女の顔を見ると、すがるような目で俺を見つめている。

半年前に彼女の前から姿を消してしまったという俺。その俺を半年間探し続けた彼女。
俺の残した留守電メッセージだけを頼りに、ニューヨークまで、俺に会いにきてくれたヒト。


「わたし、この半年間、ずっとあなたを探していたんです」


再会した俺の目をまっすぐに見て、彼女はそう言った。

半年間の記憶がない。記憶がない、という記憶だけがあった。思い出せない半年の間に失ったもの。それが何なのか、思い出せそうで、思い出せなくて。ずっともどかしい思いを抱えていた。思い出さなくちゃ。思い出したい。俺はすごく大切なものを記憶の底に埋もれさせてる。その底にたどり着きたい。俺はそこにたどり着いて、埋めた大切なものを取り戻さないとならない。そういう焦燥感はあるんだけど、ピントが合わないカメラみたいに、記憶の焦点が定まらなかった。

でも、彼女に会ったとき、俺の視線は自然と彼女に吸い寄せられていった。拳銃を持ってる彼女を見て、ちょっと驚いたけどね。困ってる様子の彼女を助けなきゃ!って、ごく自然にそう思って。気づくと、彼女の手を取って走り出してた。

彼女が探してるヤツが俺だって言われた時、俺、正直嬉しかった。「タキザワ」っていう彼氏を探していると思ったら、俺が「彼氏」だったんだ。俺と彼女は半年前に一緒の時間を過ごしていたんだ。

その時、唐突に、記憶の霧が晴れるように、彼女と二人で、東京の豊洲へ向うボートの上で、携帯のカメラで写真を撮ったことを思い出した。彼女が俺に見せた写真をとった場所。そのシーンを。

(ああ・・・彼女だったんだ・・・俺が思い出さなくちゃいけないものは。思い出したかったものは)


俺は彼女のところに戻って、隣のシートに腰掛けた。
「俺さ、半年間の記憶ないくせに、映画のことだけは鮮明に覚えてるじゃん。でも、どうしてもタイトルが思い出せない映画があってさ、それを思い出したいために、毎日あそこに通ってたんだ。911のさなか、写真をとった男女が、一度は離れ離れになるんだけど、再び会うことができる・・・」
彼女が横ではっと息を飲む。
「その映画のタイトルを思い出したくて、俺、毎日あそこに行ってたんだ。でも・・・映画じゃなかったんだ。実際にあったことだったんだね。君と・・・離れ離れになった君と再会するんだって、俺、ずっとそう信じてたんだね」
「滝沢くん・・・」
俺は彼女が膝にかけていたブランケットを取りあげて大きく広げ、俺たち二人の体の上からふわりとかけた。彼女の肩を抱き寄せて、自分に寄りかからせる。彼女の頭が俺の肩に乗る。

彼女と触れている体の部分から、彼女の体温とやわらかさが伝わってくる。彼女と触れ合っていると、なぜか、すごく安心できた。

半年前に俺がなぜ自ら記憶を消したのか。それは、まだよくわからないけれど。
俺が「滝沢朗」で、俺たちがお互いを捜し求めていたのだと、それは確信できた。
彼女に伝言を残してニューヨークに消えた理由。
俺が自分自身に、彼女のことを忘れないよう、必ず思い出すよう、かけた暗示。
それが、あの、再会するイメージだったんだね。
この子と再会することを俺は信じていた。この子にどうしても再会したかったんだ。


彼女を見ると、すやすやと寝息をたてている。
(疲れたんだろうな)
彼女の肩全体にブランケットがかかるようにしっかりと包んだ。すっかり安心したような寝顔だ。


(咲・・・)

その寝顔をみているうちに、俺は自然に彼女の名前が出てきた。そして、彼女がイトオシイという気持ちが俺の中に満ちてきた。

まだ、いろんなことが混乱してるけど、俺がこの街で咲を待っていたことはわかったよ。これからどうするか、まだ決めかねてる俺だけど、咲と再会することはなしとげることができたよ。俺たち、また、一緒になれたんだね。

俺は咲の頭に自分の頭を寄せた。
大切な宝物を取り戻すことができた―その想いに安堵して、俺のまぶたも閉じられていった。















































作品名:俺の宝物 作家名:なつの