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オセロとバラ(の香り)と実のない会話

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「最近、歯磨き粉を変えたんですよ」

ぱちり

「ほー」

ぱちり

本日のボードゲームはオセロ。
お互いが駒を置く間で交わされる会話はゲームにおける腹の探りあい、などという高等テクニック的なものでなく、手元は動いても口が暇なので会話しているという風である。
内容は、ほとんどが日常の些細なことを主とした世間話程度であることが多かった。

「ちょうど使っていたものがなくなりましてね。ドラッグストアに買いに行きましたら『新商品』と銘打たれて、つい気になって買ってしまったんですよ」
「あんまり俺はそういうのに惹かれはせんな。変な味だったら困る。ほい、角取った」
「あ…うーん、困りましたねぇ。…変な味といえばカレー味とかチョコ味の歯磨き粉がありましたね。ナンバリングされて色々な種類の味があるシリーズで」
「あー、そんなのもあったな。全く試す気にはならなかったが…まさか、お前が新調したっていう歯磨き粉もその類じゃないだろうな」

思わず駒を持った手を止め、キョンはボードから顔を上げた。
顔にはもしそうだったら、と想像でもしたのかとても嫌そうな顔だ。
古泉は苦笑して、一枚だけひっくり返せるマスに駒を置いた。

「普通の歯磨き粉ですよ。確かにあのシリーズにも同じフレイバーはありましたが。カレーなどと比べるとごく普通といって差し支えないと思いますよ」
「普通であると断言できないのだな」
「ミントやイチゴが多い歯磨き粉からしてみれば確かに若干珍しいとも言えますからね」

あっさりとその正体を明かさない辺り、コレがネタ振りであることがキョンにはよく理解できた。
どちらかというと普通ではあるがウケ狙いでその歯磨き粉を古泉が買ったのだとしたらオチはなんであろう。
キョンは大して興味はないのだけれど、と内心溜息をつきながら「で、何を買ったんだ」と先を促してやった。
駒は3枚ひっくり返せるところに置いた。
古泉は自分の駒がより多くひっくり返されたことより、自分の思った話の流れに持ってこれて満足なのか、にっこり笑って言った。

「バラの香りがする歯磨き粉です」
「ほー」
「あれ?つっこまないんですか?」
「お前にしちゃ普通過ぎてつっこむ気もせん」
「そうですか」

いささか残念そうに呟いて、また古泉が駒を置く。
角ではないけれど端に置かれた駒が全てひっくり返り、斜めも返った。
コレは結構な枚数である。
思わず笑いが零れて喜んでいたらキョンが「古泉」とあらためて名前を呼んだ。
「なんですか」と顔を上げた瞬間、キスをされた。

「んっ!」

いきなりのことでろくな抵抗もできず、驚いている古泉にキョンは唇を離してから難しい顔をした。

「あの…コレはいったい…」
「バラの香りっていってもよくわからんな」
「はい?」
「なんでもない。ほら、また角」

またも一枚、キョンが角に駒を置き、先程古泉が自分の駒に返した駒を再び自分のものにした。
一枚、一枚と変わる駒に古泉が慌てたように「あっ、あ…」などと声を上げている。
返せるところ全て自分のものに変えたところで、古泉が残念そうに深いため息をついた。
長く吐き出された息はもちろん、ローズな香りなどしない。

『そうか、歯磨き直後なら…』

バラの歯磨き粉に興味はないが、バラの匂いのする古泉はちょっといいかもしれん、などと思ったキョンは、このオセロの決着が完全についたところで、古泉宅へ押しかけるのを宣言するのだった。





end


キョンさんが何を考えてるのかわからない!