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私だって女の子だもの!

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(コンコン)


数回のノックの後、ゆっくり扉を開けるとベッドの上で丸くなった毛布が目に入った。
ベッドに近づいて行くに連れて聞こえてくる、すうすうという寝息。彼女はまだ寝ている。

毛布を少し捲って寝顔を覗き込めば、かわいい寝顔だ。
起こすのを躊躇ってしまう。本当、かわいいって罪だよね。

けれどそんなことを考えていても仕方ないのだ。
時間は待ってくれない。学生にはとても辛い悩み。

「ユニ、そろそろ起きないと学校遅れちゃうよ?」
「ん…う……?」

肩を揺さぶって声をかければ、少しは気づいたのか瞼を重たそうに持ち上げて、ぼんやりと自分を見上げる。

「こら。もう毛布に潜りこんじゃダメだよ」
「…びやくらんのいじわる」
「白蘭だからね?絶対やを大文字にしちゃダメだよ?それから絶対人前で言ってはいけないよ」
「うるさいですよ、びゃくらん」
「……うん」

僕の思いを知ってか知らずか、ユニは潔くバッと毛布を捲ると一緒に寝巻きに合わせられた日本の着物の帯を解き始めた。

軽く心の中で溜め息を吐きながら、いつものことだとユニに背を向けてベッドに座った。
耳に布が擦れる音などが入ってきたが頭の中で原子番号を№1から順に並べることで意識を逸らさせた。

「もういいですよ」

№32までいったところで彼女から声がした。
その声に振り返れば、きっちり制服を着込んだユニ。

まだ胸元のリボンは結ばれておらず、ヒモ状態になっていたが、ユニがそれを結べと僕に言った。

「ユニちゃん?」
「はやくしなさい。おくれてしまいます」

彼女の言葉にまた二度目の溜め息を今度は息と共に盛大に吐いた。
意を決してリボンに手をかければ少しだけ震えたユニの体、表情の変化は見られなかったけれど、緊張しているのがわかった。

お互いに無言で、シュルというリボンが結ばれる音だけが聞こえる。

「…はい、完成」

最後に自分たちの通う学園の校章、ボンゴレのバッチをつけるとそう言った。
ユニの方を見ればもごもご唇を動かしている。そして聞き取れるかどうかの小さな声でありがとうとお礼を言われた。

それにクスリと笑って、どういたしましてと返せば顔を朱色に染めていく。
追い討ちをかけるわけではないけれど、ついでに僕たち二人だけの決まりごとを言うことにする。

ベッドから立ち上がるとユニに手を差し出した。

「さあ、参りましょう。姫様」

静かに重ねられた自分よりも一回り小さな手をしっかりと握ると、目を閉じて自分たちの始まりの日を思い出す。





『決まりごと?』
『そうです。わたしたちだけの決まりごとです』
『いいよ。僕は何をすればいい?』
『簡単です。わたしを毎日起こしに来てください。それから、部屋を出るときにわたしの手を取ってください』
『うん、わかった。ユニちゃんをお姫様にすればいいんだね』

彼女が言った後に少し耐えられなくて、笑ってしまった。
彼女の考えがすぐに理解できて、かわいくて、笑った。

そんな僕にユニは肩をぷるぷる震わせて、瞳に涙を溜めながら叫んだ。




【私だって女の子だもの!】