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愛を再確認しましょうか

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テレビ越しで名取さんを見るのは別に珍しいことじゃない。偶然入れたチャンネルで名取さんが出てるドラマを見たりした時はチャンネルを変えたりせず、無意識に見入ったりしていた。ドラマによって役柄が違うし、バラエティとかで見る名取さんも僕の知ってる名取さんとは似ても似つかなくて変な感じがした。それでもしばらく会ってない時とかにテレビで名取さんを見かけると元気そうで安心したり、嬉しくなったりする。


今日も同じくテレビを点けると偶然名取さんが出ているドラマが映ったのだが。それを観た俺は冒頭で言った感情が一つも起こらなかった。画面に映る名取さんは綺麗な女優さんを抱きしめてキスをしていた。別にキスに嫉妬するほど子供じゃない。名取さんは俳優なんだし、そういう仕事だって分かってるし、他のドラマでだってそういうシーンを何度か見たことがある。俺が引っかかったのは名取さんの表情だ。前のドラマではあんな顔はしていなかった。見ていて嘘だって分かるというか、本気じゃない感じで、だからそういう心配を今までしたことなんてなかったのに。
(そんな、本当に好きな人にしてるみたいな。)
(いや、違う。)
(まるで、俺を見ている時と同じ・・・)
そう、同じなのだ。俺のことを好きだって言ってくれる時、俺のことを抱きしめてくれる時、俺にキスする時、その時と同じ顔をしている。
「どうかしたのか、夏目?」
不安そうな顔になっていたのだろう、にゃんこ先生が訝しげに尋ねてくる。
「いや、何でもないよ。ちょっと疲れたのかも。」
俺はごまかすようににゃんこ先生の頭を撫でると、テレビを消してその場を立ち上がる。
「もう寝よう、先生。」
一晩寝ればきっと落ち着けるだろう。自分にそう言い聞かせてその晩は眠りについた。






翌日。
(結局一睡も出来なかった・・・)
寝不足で頭がガンガンする。まぁ今日は日曜日で特に問題も無かったりするのだが。
(このまま家にいても悩んで悶々とするだけだし、にゃんこ先生とどこか散歩にでも行こう。)
そう思った時、突然家の電話が鳴った。
「貴志くーん!ちょっと出てもらえる?」
「あ、はーい!!」
慌てて電話に出ると、受話器から聞きなれた声が聞こえた。
『もしもし、藤原さんのお宅ですか?』
いつもはこの声を聞くと嬉しくなるのに、今はただ胸焼けみたいにムカムカするだけだ。
「もしもし。」
『やあ、夏目かい?今日休みが取れてね、一緒にデートでもしない?』
いつもと変わらないその口調で何故か胸が痛む。
「すみません、今日は先約があって・・・」
『夏目、もしかして怒ってる?』
ドキリ、として思わず黙り込んでしまう。ここで黙ってしまったら肯定することと同じなのに。どうしてこの人は俺の声を電話越しに聞いただけで俺の気持ちが分かってしまうんだ。
「別に、そんなことないですよ。」
『いいや、君は怒ってる。しかも私に対して。』
電話越しに名取さんがクスクスと笑う。
『それなら尚更デートに行かないかい?どんな理由にせよ言い訳くらいさせてほしいし。』
「・・・分かりました。」
『じゃあ少ししたらそっちに迎えに行くよ。用意して待ってて。』
そう言って名取さんは電話を切った。






その電話の後、本当に少しの間に名取さんが迎えに来た。話をするなら人があまりいない所に行こうと近くの公園にやってきた。昼間だから人がいるんじゃないんだろうかと思ったが、見計らったかのように人一人見かけることはなかった。
「それで、夏目は一体何に怒ってるんだい?」
こうやって会って声を聞くのは久しぶりだ、とどうでもいいことに気付く。
「・・・昨日、名取さんが出てるドラマ見たんです。」
ああ、あれか。と名取さんは納得したように頷く。
「ドラマの時、名取さんの表情がなんていうか、本当に好きみたいで。」
「それは当然だろう?」
当たり前みたいなその言葉に胸の奥がズキリとした。
(やっぱり、名取さんは俺なんかじゃなくて女の人の方が。)
そんな考えがよぎって、俺は俯いた。
「いや、共演した女優さんが夏目と雰囲気がそっくりでね。思わず夏目と同じように接してしまったよ。」
え?と驚いて名取さんを見上げると、名取さんは意地の悪い笑みを浮かべる。
「もしかして夏目、嫉妬してくれたとか?」
正しく図星で、思わず顔が赤くなってしまうのが分かる。
「嫉妬してくれたのは嬉しいけど、もしあの時の演技で夏目が怒ってるとしたら本当にすまない。最近あまりにも夏目に会う機会が無かったからきっと夏目に飢えてたんだろうね。」
「・・・それじゃあ、他意は無いんですよね?」
「あたりまえだろう?私は夏目にしかそういう感情は持ってないよ。」
それはそれで問題だと思うが、自分のことをそこまで想ってくれているのは素直に嬉しかった。
「だったら、もういいんです。」
俺が笑ってみせると、名取さんも安心したように微笑み返してくれた。
「ところで夏目、久しぶりに会ったんだし、私は雰囲気の似た女優さんじゃなくて夏目のこと抱きしめたいし、キスしたいんだけどいいかな?」
「なっ!?こんな所で何言ってるんですか!?いつ人が来るかも分からないのに・・・」
「うーん、私は別に見られても困らないんだけどな?」
一番困るのはあなたでしょう!と抗議しようとした口は名取さんの口に塞がれてしまった。
「夏目がそういうなら抱きしめるのは諦めてキスだけで我慢しておくよ。」
結局我慢しきれていないじゃないか、とは言えなかった。俺もどこか我慢の限界だったのだろう、一瞬だけ触れたキスがとても嬉しかった。俺は赤くなっているであろう顔が名取さんからみ得ないように俯いて、名取さんの手を握った。驚いているのがなんとなく雰囲気で分かったが、名取さんは何も言わずにそっと握り返してくれた。
「名取さん、好きですよ。」
小さく呟くように言うと、名取さんは嬉しそうに微笑んだ。
「本当に、今日はどうしたんだい?いつもの夏目じゃないみたいだ。」
でもまあいいか、と名取さんは俺の額にキスをした。
「私も、夏目が世界で一番好きだ。」
自分はどうして名取さんが俺以外に好きな人がいるなんて疑ったんだろう。こんなに名取さんは俺のことを好きだと言ってくれるのに、一瞬でも疑った俺は馬鹿みたいだ。名取さんと目が合ってそれが嬉しくて恥ずかしくて、名取さんの腕に顔を押し付ける。
「今日の夏目は本当に可愛いね。まぁ、いつも可愛いけれど。」
そう惚気る名取さんと握っている手を軽く抓ってから、今度は名取さんに聞こえない小声でもう一度好きだと言った。