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フレンドボーイ42
フレンドボーイ42
novelistID. 608
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Exist (Answer)

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 時間が過ぎるという表現がある。時間が突き抜けるという表現を聞くこともある。だけれど、時間が突き刺さるという表現は聞いたことのない表現である。時間は流れるものだからか。だから時間に攻撃されてつき抜かれた場合、その人間は永遠に苦しむことになるだろう。過去に光っているものは光っているものだけれど、そこに残虐な犠牲とその代償とがある限り、そこに戻ることはできない。そして、この血だらけの者はまた代償を償わねば先に進めない。でも進む。新たなものに対する得も言われぬ恐怖におののきながらも。それでも行く。もうあれを二度繰り返す真似はしたくない。いな、そのように思う体験はほかにもたくさんある。というよりどれもが二度と繰り返すことができないような苦しみである。だから消極的に前進を選ぶしかない。そういう心持で先を切りかき分けて進む。
 「AAAAAAAAAAAAAAAA」と叫んでも、何も帰ってこない。声は無力なのか?音は光と時の前には無力なのか?音は空間のバリアには無力なのか?世界の闇に包まれる瞬間を彼女はずっと叫びながら絶望していた。駄々をこねる子供が、どんなに叫んでも母親はそれを一言『否』で済ませてしまうように、闇に金切り声はかき消されていく。闇の無音状態はそれは、しかし無音であれどノイズなのだ。消えた音こそが最大のノイズなのだ。
 
 走れるか?走れるなら、もう一度疾駆けてみたい。

 音は時間の次に抗う。彼女はまた血を流す。また、代償を払わねばならないようだ。まあ、それはもう慣れているし、そんなことどうだっていい。もう何度目か。血を流して、それでもたちつづけた。傷だらけのボディーは、痛々しいその運命をありありと示す。世界?宇宙?実体を持たず、しかし実体を持つもの。それは、世界と宇宙だろう。自分は?それは疑いようのないものだろう。疑いえないただ一つの存在。他を非存在と否定しても否定しえないもの。それが、自分。ならば自分はまだ生きるしかない。それしかないだろう、と。
 過去を疑うことはできる。白昼夢といえばいいのだ。未来を疑うこともできる。現在って何ですか?と。過去はコラージュされ、都合のいいようにしか解釈できないビデオテープになる。未来はやがて過去になる。いまここ、というものは存在しえない。それでも存在する。自分という存在だけは存在する。いくら否定しても、それは肯定された存在として、確かにそこにある、有ってしまう。死の時はじめて自分の生を評価できる。ならば、せめてちょっとでもいい。何処か、純粋に犠牲を払うことなく光るものがあるように。彼女は歩く。歩き続ける。
 君がいる、というのは疑える命題だ。だけれど、二人称としてそこに確かにいて、否定したくない存在。それがほしい。自分をその中では公定命題として受け入れてくれる二人称の存在。それが、彼女のほしいもの。そうすることで、生きているという命題は成り立つ証明題となる。そのためにあなたを、君を、そういえる、そう呼べる、そう呼称できるもの、そういえる人を彼女は求めていた。それでも彼女には、今はまだいないと知っていた。そこにはいない、どこにいる?どこにいて、今何をしていて、何が好きで、何を目標に掲げ、何を彼女に与え、何を彼女に求める?どこに・いつ・どうして、そこに存在し、何のためにその存在を肯定し、何を考え前に進む決意をした?
 願おう。願い続けよう。そのまま、ノイズにはかき消されぬように、ずっと叫び続けて生きよう。

 走れるか?走れるよ。もう一度疾駆けてみせる。
 
 音は時間の次に抗った。彼女はまた血を流した。また、代償を払った。これで最後だ。血を流して、それでもたちつづけた。傷だらけのボディーは、痛々しいその運命をありありと示していた。世界?宇宙?実体を持たず、しかし実体を持つもの。それは、世界と宇宙だろう。自分は?それは疑いようのないものだろう。疑いえないただ一つの存在。他を非存在と否定しても否定しえないもの。それが、自分。ならば自分はまだ生きるしかない。それしかないだろう、と。
 目の前に立つ青年。彼は彼女を受け入れてくれるだろう。彼もまた、彼女に受け入れてもらうことを望む存在。お互いがお互いを求め、お互いがお互いに尽くすためにいる存在。生きる意味はそこにある。そう理由づけしないで、人間は生きていけるわけがない。そう理由づけすれば、生きていける。

 君がいる、というのは疑える命題だ。だけれど、二人称としてそこに確かにいて、否定したくない存在。それがほしかった。自分をその中では公定命題として受け入れてくれる二人称の存在。それが、彼女のほしいもの。そうすることで、生きているという命題は成り立つ証明題となる、と。そのためにあなたを、君を、そういえる、そう呼べる、そう呼称できるもの、そういえる人を彼女は求めていた。そして彼女には、その存在はいると、彼女の目がかたっていた。ここにいる。今彼女を抱きしめていて、夢見ることが好きで、その夢を現実に変えることを目標に掲げ、愛を彼女に与え、希望を彼女に求める。ここに・いま・絶対的に、そこに存在し、彼女と自分のためにその存在を肯定し、二人の最大公約の幸せを考え前に進む決意をして。 
作品名:Exist (Answer) 作家名:フレンドボーイ42