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生きるも死ぬも

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僕は、強がることでしか人とコミュニケーションできない。いや、できなかった。でも、御狐神くんと出会ってから、少しずつ変わることができた。少しずつだけど、自分の気持ちを伝えることができるようになった。「ありがとう」も。「ごめんなさい」も。「好きです」も。

だから、御狐神くんにも、自分の気持ちに素直になってほしいんだ。作り物の笑顔じゃなくて。本物の笑顔を見せてほしいんだ。心から笑ってほしいんだ。怒ったり、泣いたり、してほしいんだ。恋人として感情をぶつけてほしいんだ。

そう言うと、御狐神くんは
「僕は凛々蝶さまの前ではいつでも心からの笑顔ですよ?凛々蝶さまのおそばにいられれば・・凛々蝶さまと恋人同士でいられるなら、毎日、いつでも、極上の笑顔ですよ?」
と笑ったけれど。
「でも・・・。やはり、僕に「奉仕」しているだけでは、不公平だろう?こ・・・恋人同士とういうものはだな、もっと対等で、もっと感情をぶつけあうものだろう?」
「凛々蝶さま、僕は恋人である前に、貴方の犬ですから。凛々蝶さまと対等など、恐れ多いことです。それに、僕はいまでも十分幸せですよ?凛々蝶さまのSS(シークレットサービス)としてお仕えすることができて。これ以上の幸せがありえるでしょうか!?」

(御狐神くん・・・・。本当はMか・・・)
そう心の中でつぶやいてしまった。いかんっ!それでは、蜻蛉ワールドになってしまう!

「御狐神くん、それでは、二人で、その、恋愛映画を見ようではないか?僕も恋愛は初めてだから、いろいろ学習したいと思っているしな。君にももっと恋人としての自由な振る舞いを学んでもらいたいのだ」
「はい、凛々蝶さまがおっしゃる通りにいたします」
「だから!そこが!「奉仕」っぽいのだ。君が本心から望むわけではなく、僕に合わせているだけだろう?」
「凛々蝶さまが望まれることが、僕が望むことですから。何にも不都合はありませんよ?」
「うむむ・・・。まあ、いい。とにかくだな、このDVDを二人で見ようではないか?」
僕はそう言って、野ばらさんが薦めてくれた「典型的な恋愛映画」である「タイタニック」を袋から取り出した。
「凛々蝶さま!いつ、そのDVDを!?まさかお一人で、外出されたのですか?そのような危険を冒されるなどっ!僕に申しつけいただければ・・」
「いや、ちがう、ちがう、落ち着け!野ばらに貸してもらったのだ!何でも、彼女好みのモチが映っているっていう話で。どういうモチか、よくわからんが・・・。とにかく、これを二人で見ようではないか?そして、恋人同士の振る舞いについて、もっと学ぼうではないか?」
「はい、凛々蝶さま、うれしいです。凛々蝶さまと二人で映画を見れるなんて、光栄の極み・・・」
「オーバーだな。さ、とにかく、僕の部屋で一緒に見よう!」
「はいっ!凛々蝶さま」



3時間後・・・
「凛々蝶さま、このハンカチをお使い下さい」
「う、うん・・」
僕はタイタニックを見て、号泣してしまった。ジャックが死んでしまって、冷たい海の中に静かに落ちていくシーンが悲しすぎた。ローズは薄情ではないか。

「御狐神くん・・・恋人同士とはいついかなる時でもいっしょにいて、助け合うべきだな」
「はい、凛々蝶さま」
「しかし、それは、一方が一方の犠牲になることではない。僕がローズだったら・・・決してジャックを見捨てない。ジャックと一緒に最後までがんばるぞ」
「凛々蝶さま、これは映画でございますから。あまり、思いつめられませんように・・・。それに、ジャックは、ローズのために喜んで死んでいったと思いますよ。ジャックはローズに生きてほしかったのです。もっと人生を楽しんでほしかったのです。ローズを助けるためならばジャックは喜んで犠牲に・・・」
「御狐神くん!君は・・・」
僕は涙をぬぐって、彼に向き直った。
「御狐神くん、君はジャックのように振舞ってはならんぞ?もし僕たちがタイタニックのような目にあっても。僕は絶対に御狐神くんを追いていくようなことはしない。暗い海に一人残していくようなことはしない。死なば、もろともだ。」
「凛々蝶さま・・・」
「だから、君も決して自分が犠牲になればいいとか、僕だけ生きてくれればいいとか。そういうことは思ってくれるな。決して思ってくれるな。死ぬときは一緒だと思え」
「凛々蝶さま!」
御狐神くんは僕をぎゅっと抱きしめた。
「凛々蝶さま、その言葉だけで、十分でございます。もう十分でございます!」
「御狐神くん・・・約束だぞ?決して僕だけ助かればいいなんて、思うなよ?生きるも死ぬも、二人一緒だぞ?」
「凛々蝶さま、お約束します、僕は貴方のおそばを離れません、決してお一人にはしません」
「よし、それでいい。」


僕は小指を彼に差し出した。
「ゆびきりだぞ?」
「はい!凛々蝶さま・・・」
「ウソついたら、針千本の・・」
「僕が飲みます」
「だめだ、今度は、僕の番だ。ウソついたら針千本僕が飲むことになるぞ?」
「凛々蝶さまにそのようなことを・・・」
「させたくないなら、約束を破らないことだな」
「はい、凛々蝶さま」


死ぬときは一緒だ、生きるも死ぬも二人一緒だ。


凛々蝶さまの言葉が、この世の何よりもうれしい。僕の永遠の宝物となった。


でも・・・凛々蝶さま。
ジャックは、きっと、信じていたのですよ。来世でローズに会えると。映画のラストシーンをご覧になったでしょう?自分が先に死んでも、自分の人生を全うしたローズがあの世に来た時に、必ず、自分のところへ来てくれる、来世で必ず再会できると。ジャックは信じていたのですよ。死んでも、再び愛しい人に会えると。

僕も信じています。もしも凛々蝶さまを残して死ぬことがあったとしても。必ず、また会えると。次の世で、再び貴方に出会い、そして愛すると。今と同じように。いや、今以上に。

だから、もしも・・・もしも、僕が死んでも・・・。針千本飲まないでくださいね?凛々蝶さまの一生を全うして。そして時がきたら、僕の待っている彼岸へ来てください・・・。僕はいつまでも貴方をお待ちしています・・・。


「凛々蝶さま・・・」
僕の腕の中にすっぽり納まってしまう可憐で小さな凛々蝶さま。僕はそっと口付けを落とした。
「いい映画でしたね・・」
「ああ・・・ローズがジャックを置いていくところは気に入らんがな。」
「ふふふ。凛々蝶さま、まだおっしゃっているのですか。では、次はハッピーエンドの映画を見ましょう?」
「うん、そうだな。もっと、たくさん、見よう、いろいろな映画、御狐神くんと・・・」
「凛々蝶さま・・・」

二人でいろいろな映画を見て。もっと二人で恋愛について、いろいろ知って。二人でいつまでも・・・。

幸福な夢。いつまでも、いつまでも。続けばいい。この春のひだまりのような日々が。

作品名:生きるも死ぬも 作家名:なつの