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“優しい”なんて絶対に言わない!!

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「霧野先輩っ!」

後ろから自分の名前を呼ぶ大きな声が聞こえて来たため霧野蘭丸は首だけを動かし、名前を呼んできた少年を見た。

「折角なんですから、一緒に帰りましょうよ」

彼は人懐っこい笑みをうかべながら小走りで蘭丸に近付いて来た。

「狩屋…。お前の家、逆方向じゃなかったか?」

「良いじゃないですか。別に。」

「でも、早く帰って休まないと明日に響くぞ。」

「霧野先輩、なんだか今日は優しいですね……。
熱でも有るんじゃ無いですか?」

“彼”こと狩屋マサキはそう言うと自分より僅かに身長が高い蘭丸の顔をまじまじと見ながら、蘭丸の前髪をよけ、おでこに自分の手を当てた。

「なっ!!!?お前っ!!
人が心配してるのに…っ!!」

蘭丸は早口で話ながらマサキの手を払いのけた。

「アハハッ…、そんな怒らないで下さいよ。
あ!あと霧野先輩顔凄く赤いですよ?
さっきので照れたんですか?」

マサキは何時ものようにニヤニヤとしながら蘭丸をみた。

「怒ってなんか…ないし…、照れ………て…なんかも………ない…。」

「霧野先輩、ほんと可愛いですね。」

「っっ!!
おまっ……っ!!!!
……もうっ……っほんと、今すぐ家に帰れよっ!!」

「まあまあ落ち着いてくださいよ。
可愛い彼女を家まで送るのも彼氏の役目なんですから。」

「だからっ!可愛くないし、彼女でもないっ!!」

「でも、霧野先輩って絶対に…う」

「うわぁぁぁぁぁぁっっ!!!!
狩屋っ!!止めろっ!!それ以上は言うなっ!!」

蘭丸は顔赤らめ、目尻に涙を浮かべながら急いでマサキの口を両手で押さえた。
その時マサキは自分の口元が緩むのを感じた。

「ってわぁぁぁぁっ!!
狩屋っ!!ふざけるなっ!!
今、いま、いまっ!!
し、ししししっ!」

「ああ、舌で霧野先輩の手舐めましたけど?」

マサキはなにか問題でも有るのかとでも言いたいような顔で蘭丸を見た。

「霧野先輩。」

「な、なんだよ…。」

「そろそろ帰りましょう?」

マサキは先程まで浮かべていた笑みとは違う優しげな笑みになり蘭丸に左手を差し出した。
蘭丸は大人しくその差し出された手に自分の手を絡めた。

「お前やっぱ本当に……」

「ん?なんですか?霧野先輩?」

「な、何でもないっ!!ほら、帰るんだろっ!!」

蘭丸はそう言いながら早足で歩き、マサキの手を引いた。
マサキは小さく笑い、蘭丸の横へと急いで歩き、歩調を合わせた。
そして、柔らかく微笑みながら静に一言。

「霧野先輩…。好きですよ。」

そう言うとやはり蘭丸は何時ものように顔を赤く染めた。

「っっ!!だ……から、お前はっ!!
急にそんな事言うなよっ!!!!」

「良いじゃないですか。
お陰で今日は可愛い蘭丸先輩が沢山見れたんですから。」

「だから、俺は可愛くないっ!!
あーっ!!もうっ!!!!」

「くくくっ…。ほら、寒いですし早く帰りましょうよ?」

「……ああ。」

そして二人は改めて手を強く握りしめながら再び帰路へとついた。