嗚呼 嗚呼 幸せだ
「俺はてめェが大嫌いだ。」
Yシャツの袖口から覗く白く細い腕を握り締めた僕の腕はそれを人間のものだと言うには程遠く赤黒いそうそれはこの体内に流れる血のようにそう貴方の胴体に巻かれた包帯からにじみ出るその、赤い血。ボタンが全て外されて前だけ開いた胸元に指を滑らせればビクンと身体を震わせるその顔に余計に強くなる独占欲と支配感が身体を動かした。口角を上げれば顔を傷口に押し付けたじんわりと広がる錆びた鉄の味を飲み込めばまたビクンと胴体を動かした。どうにかして僕から逃げたくて両腕と足に力を込めようとしているのだろうけれどさっきの麻酔の影響でどうにも身体が上手く動かないらしい。これはまた都合が良いと思った。それでも恐怖でもなくただただ隠そうともしない嫌悪感を露わに漆黒の眼が怒りに揺れて此方を向いていたのだ。君が僕のことを嫌いだなんて初めから知ってる、知ってるんだ。でもねそんなことは関係無いんだよもうだって君が僕を嫌いでも
「僕は大好きですよ。」
耳元に唇を近づけて吐き出した言葉にまた更に一層疑心と嫌悪感が増した君を感じたけれどそんなもの知らない気にならないいいんだよ君はそれで君は僕のこと嫌いなら嫌いのままでいいだって嫌いというのも人間の感情の一部で君の心の一部でしょう君が僕を嫌っているということは君の心の中に僕という存在がいるという証明なのでしょうだから嗚呼嗚呼存分に嫌ってください僕の事を嫌悪と憎しみが僕の存在意義ならそれで君の心を埋め尽くすことだって出来るでしょう
嗚呼何て幸せなんだろう 君の心が僕のものになるなんて
「大好きですよ、神田。」
ニコリと微笑んで唇を重ね合わせようと顔を近づけたでもすぐに背けられた抵抗なんて無意味なのにね可笑しいと内心笑ってしまうよけどそんな君も愛しくて仕方が無いんだじゃあしょうがない無理矢理にでも奪わせて貰う。ペロリと唇を舌でなぞり重ね合わせる深く深くそう何処までも堕ちて、
嗚呼 嗚呼 幸せだ