「愛してる」をお前に
「俺ら今付き合ってんの! な?」
「そうね、付き合ってあげてるわ。ふふ」
「相変わらず手厳しいなぁ。たまには優しくしてくれないとお兄さん泣いちゃうよ?」
「こんなことで泣いてたらやっていけないわよ?」
「まぁねー。あ、そろそろ行こうか。じゃあなギル、お前もちゃんと愛してるって好きな人に言ってあげろよ! お兄さんを参考にしてな!」
「ダメダメ、こんな人の真似なんかしちゃ」
じゃあね、じゃあな、と手を振って別れる。
あー、だったら伝えてみようか、なんて。
ちょっと酔っただけだろ、この場の空気に。幸せそうなあの二人に。
「ヴェスト、……好きだぜ」
「あ、あぁ。……俺も、」
「ちげぇ。好きなんだ、弟だとか愛国心だとか抜きにして、お前のことを愛してる!」
言っちまった。とうとうマジで言っちまったぞ。
「そ、」
絶句したヴェストは、しばらくかちこちに固まっていたが、やがて脱力して両手に顔を埋め、
「こんなの卑怯だ……」
とつぶやいた。
「……わりぃ」
「謝らないでくれ。兄さん、俺も――――」
後半はかすれた声になり、うまく聞き取れない。それは向こうも分かっているのか、大きく息をついてからもう一度言った。
「俺も好きだ、ずっと前から」
「な……!?」
「無理だと思ってたんだ、確かに周りと比べれば仲のいい兄弟だが、結局は兄弟止まりなんだと。そう思って諦めてたのに、兄さんは……」
ずるい。ずるすぎる。
「…………ははっ」
笑いが口から漏れる。
自分の思いを口にして恥ずかしくなったのか、赤い顔を隠そうとそっぽを向く弟が愛らしすぎた。
「やっべぇっマジかわいいぜヴェストぉぉ!」
横から飛びついて思いっきり頬ずりする。
「や、やめてくれ兄さん!」
「よし、このまま行くぞ!」
「ど、どこに!?」
「世界各国に報告すんだよ、俺たちのラブラブっぷり見せつけてやろーぜ!」
世界各国というより、主にフランスに。ムカついたし。
「なっ、何を言っているんだ!? そ、そんなのまだ心の準備がっ」
「こうなった俺様はもう誰にも止められないぜー!」
腕の中から逃げだそうとする弟を引きずって部屋の外へ連れ出した。
「ちょっ、と、止まれ馬鹿兄貴っ!」
「そんな程度じゃ俺様は止められないぜ! けーっせっせっせ!」
楽しくハネムーンと行こうじゃねぇか、なぁ?
作品名:「愛してる」をお前に 作家名:風歌