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フェリクス
フェリクス
novelistID. 37203
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脱走計画

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今、俺はロンドンの某会議場にいる。
なんでかって? そりゃあ、このつまんねぇ世界会議に出るためさ。

毎回毎回、アメリカが突拍子もない案をだして、イギリスが食いついて、フランスがおちょくって……ドイツの怒号で終わるか、スイスがキレて実弾ぶっぱなして終わりだ。

ちなみに、今回の議題は……

『CO2増加に伴なった、温暖化への対策だね。』

んなもん、アメリカ・中国と欧州の奴らでやってりゃいいってのに。元はといえば、あいつらが無駄に排気ガスだのなんだのと、出しやがるからじゃねぇか。
なんで俺らまで……

「って、エジプトのじいさん!」
「なんだい?」
「人の心の声を勝手に読まねぇでくれぃ。」
「君が勝手に、声に出していたんだろう?」
「……ほっとけ」


ま。俺んちは、出来る限りの対策してるしな。壇上の茶番劇も、見飽きちまった。

――こっそり抜け出して、チャイでも飲んでのんびりするか。
幸い、ここはロンドンだ。眉毛野郎の飯は壊滅的だが、茶はうめぇ。
マーケットに行けば、ロクムも手に入る。

そうと決まれば……

「おい、抜けるぞギリシャ。」
「ん……死ねトルコ……抜けるって……バックレるのか?」
「まあ、平たく言ったらそうだな。お前ぇと一緒ってぇのは癪だがよ。」
「……お前と一緒……ってのは嫌だ……けど……中庭で昼寝したい……」
「よし!そうと決まれば行くぞ。来るかい?エジプトのじいさん?」
「そうだね、私もそろそろ静かな所が恋しくなってきたところだからね。」

ちょうど俺らの席は、議場の一番後ろだ。5メートルも進めばドアがある。
久しぶりに、ほふく前進と行くか。

「トルコ……さっさと進め……それか死ね……」
「うるせぇ!黙ってろぃ!スーツのせいで、動きにくいんでぃ!」
「死ね……トルコ……早くドア……開けろ……」
「ほらほら、あんまり騒ぐと見つかっちゃうよ?」

その時――チャキッ
「貴様ら、どこに行くつもりであるか。」

「げっ!なんでここにいるんでぃ!」
「おや、スイスじゃないか。」

「質問に答えるのである。どこに行くつもりなのだ。」

そう言って、トルコたちに向けられた、ライフルのセーフティは既に外されている。

「いや、ちょっと……」
「ちょっと―― なんであるか。」
「会議……つまらない……俺たち……バックレる……」
「ちょっ!――ギリシャ、てめぇ!!!」

「会議をサボろうとするとは……良い度胸なのである!!!!」


――ダショーン!!ダショーン!!!

その後の会議で、

いつもより真剣に、会議に参加しているトルコ・ギリシャ・エジプトの三人が目撃された。




「ところで、エジプトのじいさんよぅ。」
「なんだい?」
「スイスの野郎、じいさんにだけは発砲しなかったのはなんでなんでぃ?」
「さあね。年長者だからじゃないかい?」
「……俺もギリシャも、スイスよりは年上じゃねぇかぃ……」
作品名:脱走計画 作家名:フェリクス