ブラッシング
ビスマルク通りの西、シュプレー川のほとりに古民家風の家がある。
そこに、ドイツことルートヴィッヒと、その兄である、プロイセンことギルベルト・バイルシュミットが暮らしている。
そして彼らの愛犬、アスター、ブラッキー、ベルリッツも一緒だ。
「今日は天気もいいし、あいつらのブラッシングでもするか。」
キッチンで昼食を作りながら、ルードヴィッヒはそう呟いた。
ヴルストを茹で上げ、ザワークラウトの上に乗せ、あとはパンを籠に盛れば完成である。
「兄さん、すまないが、出来たものからテーブルに――」
「なあ」
ルートヴィッヒの発言に被せてギルベルトが声を出す。
「どうした?兄さん。」
「俺もブラッシングしてくれ。」
「なっ!」
あまりの事に、あやうく手元の包丁を落とすところだった。
コホン、と咳払いを1つして、気持ちを落ち着かせる。
「ブラッシング……して欲しいのか?兄さん。」
「おう!」
そう、満面の笑みでギルベルトは答えた。
「飯食い終わったら、あいつらの前に、俺のブラッシングな!」
「あ……ああ……」
昼食も食べ終わり、愛犬たちをつれ、庭に出たルートヴィッヒは、手元のブラシを見て溜め息をついた。
「なーに溜め息ついてんだよ、ヴェスト!」
「いや……犬と同じブラシでいいもんなのかと思ってだな。」
「あー、この前ブラッシングしたあと、綺麗に洗ったろ?だから平気だろ。」
そう言って、ギルベルトは、ルートヴィッヒの胡坐をかいた足の上に座った。
「……なあ、兄さん。」
「なんだ?」
「この体勢だと、やりにくいんだが……」
「あー、じゃあ、こうしようぜ!」
すると、ギルベルトはおもむろに向きをかえ、ルートヴィッヒと向かい合うように座りなおした。
「ちょ――兄さん!」
「ケセセセセ!なんだよ、恥ずかしがりやがって!顔真っ赤だぜ?」
「お、俺は、恥ずかしがってなんか――」
言葉尻を奪うように、ギルベルトがルートヴィッヒの唇を自分のそれでふさいだ。
唇同士が触れ合うだけの、軽いキスだけで離れてしまった。
「いいじゃねえか、お前は俺様の可愛い弟なんだからよ。」
そう言うと、真っ赤になって固まったルートヴィッヒを横目に、愛犬たちのブラッシングを始めたギルベルトであった。
「ところで、兄さん。」
「なんだ?ヴェスト。」
「兄さんも、可愛いと、俺は思う。」
「なっ――なんだいきなり!!」
「ベッドの中で、俺を欲しがってくれる兄さんとか、イキそうなときに泣きながら――「ああああああ!!!」」
「どうしたんだ、兄さん。いきなり声なんか荒げて、真っ赤になって。」
「ヴェスト……てめぇ……このドS!!!!」