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「せめて足はおとなしくさせろ」

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その日は宿屋に泊まれることになって、一同は部屋割りを決めることになった。二人で一組にならなければいけないらしい。とは言っても、誰も人間の好き嫌いなどしない。誰もが誰とでも構わないと言って話が終わらないので、結局同性同士でじゃんけんをして、勝った二人と負けた二人でペアを作ることになった。なかなか面倒な方法である。とは、思っても誰も口に出さなかったが。
そうして決まったペアが、適当な部屋の鍵をさらっていく。一同が泊まる部屋は、全て隣り合っている訳ではないらしい。

「それじゃあ、行こうか」

最後に残った鍵を受け取って、コンウェイはスパーダに声をかけた。おう、と返して、スパーダも階段を上る。


「じゃ、オレ風呂行ってくるわ」

部屋に荷物を置いて、早々にスパーダはベルトに下げた鞘と剣をベッドに置いた。適当に見えつつゆっくりとした動作は、彼が剣を大事に扱っていることが窺える。

「ああ、うん。行ってらっしゃい」

ついでとばかりに帽子を放り投げて、部屋の入り口付近にあったバスルームにとっとと歩いて行ってしまった。街に着くまで魔物との連戦だったからだろうな、とコンウェイは一人で勝手に合点して、剣が乗っていない方のベッドにゆるりと腰掛けた。
一人で何をするわけでもない時間は、だいたい暇なものである。とは言うものの、今のコンウェイは、新しく手に入った本がある。普段自分が好んで読むようなジャンルのものではないが、良い機会だろう。ベッドに腰掛けたその格好のまま、コンウェイはその本の表紙を開いた。中身はだいたい、遊びが中心らしい。中には玩具の構造を図解した絵や、簡単な工作のやり方や必要な材料が載っていたりして、リカルド辺りに勧めてみたくなったりもした。ルカやエルマーナを誘ったら喜びそうだ。
そうして時間が少し経つ頃。がたん、とやや乱雑にドアを開けて、バスタオルを頭に被ったスパーダが、ブーツと上着を手に持って戻ってきた。髪からはぽたぽたと水が垂れて、バスルームからスパーダが歩いた跡を残している。
音に反応したらしいコンウェイが、つらつらと読んでいた本から目を離し「おかえり」と声を掛けた。おう、と返事をしようと、ベッドに顔を向けた。そして、硬直した。

「………おま」

「うん?」

だらけすぎてやしないか、とは、しばらく時間を置いてから漸く湧いた感想である。ベッドに俯して、枕に顎を乗せて、その視線の先に本を開いておく。ついでにたまに足を膝から曲げ伸ばしの動作を繰り返して、ベッドを緩やかに叩く様は完全に、仕事が終わって自室でくつろぐ20代の女性そのものである。

「何が悲しくて野郎の萌えポーズ見なきゃなんねェんだ!」

スパーダがキレて、コンウェイをちゃぶ台返しの要領でベッドから落としたのは、また別の話だ。