lost
街の明かりに照らされた夜空が、群青に輝く。
ぽつりと浮かぶ青白い春の満月が、無表情に街を見下ろし、そこには意味の無い明るさを落とす。
だか、その無表情の明かりだけを頼りに路地裏を歩く男が一人、いた。
「………っはぁ、……っ…。」
男は深緑のカーディガンをはおり、中の少し大きめの純白のブラウスを着ていて、双方埃やら泥やらで汚れている。何かに引っかけたのか、破れているところすらある。
男の肩まで伸ばした雀色の髪も、どれだけ走ったのか、呼吸と同じく乱れに乱れている。
すぐそばで、数人の男の足音がした。それを聞いた男はビルとビルの50センチほどかの隙間に女のように細いその体を滑り込ませ、音の聞こえた方の壁に体を預け、しゃがみこんだ。声がする。
男は己の口に手をあて、息を殺した。
「…いらっしゃったか!?」
「いや、こちらには」
「D-15地区辺りにいってみるぞ」
「わかった」
ザザ、と無線のノイズが聞こえて、ここにはいないと一人の男が仲間に伝えた。
それを確認して、男達は次なる目的地へと走り出した。足音が遠ざかっていく。
男は安堵したようにふぅ、とため息をついて、周囲に人気のないことを確かめてから隙間をでた。
「(なんとか巻いたようだな……
しかし、これから何処へ……)」
「おい、あんた」
真後ろから声がした。
飛び上がると同時に振り返った瞬間、男は一瞬にして怖じ気づいてしまった。
まず目をひいたのは、そのばかでかい図体。そして今日の満月のように銀色に照る髪。眼帯でふせられた左目。
真後ろに現れたのは、いかにも目立つ格好の若い大男だった。
ぽつりと浮かぶ青白い春の満月が、無表情に街を見下ろし、そこには意味の無い明るさを落とす。
だか、その無表情の明かりだけを頼りに路地裏を歩く男が一人、いた。
「………っはぁ、……っ…。」
男は深緑のカーディガンをはおり、中の少し大きめの純白のブラウスを着ていて、双方埃やら泥やらで汚れている。何かに引っかけたのか、破れているところすらある。
男の肩まで伸ばした雀色の髪も、どれだけ走ったのか、呼吸と同じく乱れに乱れている。
すぐそばで、数人の男の足音がした。それを聞いた男はビルとビルの50センチほどかの隙間に女のように細いその体を滑り込ませ、音の聞こえた方の壁に体を預け、しゃがみこんだ。声がする。
男は己の口に手をあて、息を殺した。
「…いらっしゃったか!?」
「いや、こちらには」
「D-15地区辺りにいってみるぞ」
「わかった」
ザザ、と無線のノイズが聞こえて、ここにはいないと一人の男が仲間に伝えた。
それを確認して、男達は次なる目的地へと走り出した。足音が遠ざかっていく。
男は安堵したようにふぅ、とため息をついて、周囲に人気のないことを確かめてから隙間をでた。
「(なんとか巻いたようだな……
しかし、これから何処へ……)」
「おい、あんた」
真後ろから声がした。
飛び上がると同時に振り返った瞬間、男は一瞬にして怖じ気づいてしまった。
まず目をひいたのは、そのばかでかい図体。そして今日の満月のように銀色に照る髪。眼帯でふせられた左目。
真後ろに現れたのは、いかにも目立つ格好の若い大男だった。