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桜々

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季節は回る。幾度にも、何度でも。廻って過ぎて、また戻る。
それを繰り返して時は重なっていく。
そうして、またこの『季節』がやってきた。

「さえない顔をしていますね」
眉を寄せて声がした頭上を見上げれば、今の時代にはそぐわない真っ白な水干を纏い、
青い瞳を細めて、こちらを見つめる少年と目線があった。
「煩い」
辛辣な声音で告げたのにもかかわらず、少年はくすくすと口元を袂で抑えて笑っている。
その余裕そうな姿にさらに自分は腹立たしく思うのだ。
「臨也さんはもう少し視野を広く持った方がいいですよ」
少年はね?と小首をかしげながら、見下ろしてくる。
「ほんっとに煩いな、帝人くんは」
子供姿のくせに、と吐き捨てればまた彼は微笑を零した。
帝人くんは桜の精霊。俺の家に古くからある大樹の化身らしい。
桜屋敷と近所から言われるほど、俺の家は桜の木が幾つも植えられていて、
その種類も結構な数ある。
その中でも一番の古株が帝人くんの桜、だ。
俺が彼と出会ったのは記憶さえ覚束ない程、幼かったとき。
気がつけば帝人くんはずっと傍にいてくれた。
桜の咲く季節、春にしか会えないけれどそれでもずっと。
「臨也さんが独りよがりだからですよ。もう少し周りを見て見ればいいのに」
昔から帝人くんは敬語で話す。声を荒げる事無く静かに朗らかに言葉を紡ぐ。
足をぶらぶらと宙に降る様を見上げながら、俺は唇をとがらせた。
「言っておくけど、今日はシズちゃんが悪い。俺は悪くない」
「静雄さんでしたっけ?臨也さん彼のことになると本当に心が狭くなるんだから」
「気持ち悪いこと言わないで」
「おやおや、僕の目からはそう見えるんですけど」
演技なのだろうか、瞳を丸く見開いて驚きの表情を見せている帝人くんに、
どうしようもない感情が腹の中でとぐろをまく。
「・・・いくらなんでも怒るよ」
俺の纏う空気に気がついたのか、帝人くんは苦笑を漏らすと、
重さを感じさせない足取りで、枝から地面へと足をつけた。
俺の隣に立つと、温度を感じない手で俺の頭を撫でる。
正確には、撫でる『ふり』をする。
「僕が触れられれば良かったんですけどねぇ。機嫌直してください」
瑠璃色の瞳が自分だけを映し出しているのが分かる。
優しい笑顔にどうしたら良いのか分からない困惑の色を乗せて、
帝人くんは俺の頭を何度も撫でてくれた。
俺は急に照れくさくなって、帝人くんを見上げていられなくなり顔を俯かせる。
「・・・良いよ、もう」
先ほどの激情に似た感情はどこか遠くへ行ってしまったらしい。
我ながら現金だと思うけれど、こればかりはしょうがない。
(あぁ、俺ってほんと・・・)
「ねぇ、帝人くん」
「はい?」
俺は俯いたまま、ゆっくりと瞼を閉じた。
「もう少しの間で良いから、そうしててよ」
一拍の後、帝人くんの言葉が耳にと届いた。


作品名:桜々 作家名:霜月(しー)