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PN悠祐希
PN悠祐希
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魔法少女おりこ★マギカR

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■ プロローグ ■



 深夜の駅の構内…最終電車の運行も終わり、すでにひと気がなくなった、そのような場所…
 十代半ばくらいと思われる少女が三人、集まっていた。
 その姿も、それぞれ、独創的なものだった。

 中世の砲撃手のような衣装を纏った、両脇に結った金色の髪がロールを巻いている状態が特徴的な少女。巴(ともえ)・マミ。普段は、見滝原中学に通う三年生。

 裾に白いフリルをあしらった、ノースリーブの赤いロング・ドレスを纏った、赤く長い髪をポニーテールに結った少女。佐倉(さくら)・杏子(きょうこ)。
 そして…他の二人と比べシンプルに見える、どこかの学校の制服のような格好の、黒くて長い髪に黒いカチューシャをはめた少女。暁美(あけみ)・ほむら。見滝原中学の二年生。

「さやかは?」
 ほむらは、その杏子の言葉を耳にし、『ハッ』と意識を覚醒させた。いつの間にか、両膝をついた状態で、地面にへたり込んでいた。
 見上げると、マミは悲しみのあまり俯いてしまっており、杏子は必死に辺りを見回していた。
「おい…さやかはどうした?」
 杏子が、誰にともなく、そう問いかけた。

 そう、ここには、さらに四人目…白いシャツに青いミニスカート、その上に、青い胸当てを装備し、白いマントを羽織った、まるで戦士のような格好の、青いショートカットの少女。美樹(みき)・さやか。見滝原中学に通う二年生で、ほむらのクラスメイト。
その彼女が居た。居たはずだった。

 だが、その姿は、今はどこにもない。
「逝ってしまったわ…《円環(えんかん)の理(ことわり)》に導かれて…」
 マミが、静かな口調で、杏子に答えた…
「希望を求めた因果が、この世に呪いをもたらす前に、私達、《魔法少女》は消えるしかない…あなただって、解っていたはずでしょう?」
 だが、そのマミの言葉は、途中から、杏子の耳には届いていなかった…
「…バカヤロウ…やっと友達になれたのに…」
 意見や考え方の相違から、何度も言い争い、時には殺し合いともいえるような喧嘩もした。それでも、同じような想いを持った者同士だと知り、互いに認め合うことができた。その矢先だった。
 杏子は、そんな相手のことを想い、ボロボロと涙をこぼしはじめた。

 彼女達は、『魔法少女』と呼ばれる者達…
どんな願いでも、1つ叶える…という条件と引き換えに、《キュゥべぇ=インキュベーター》と自称する存在と契約を結び、魔法の力を使って《魔獣》と戦う使命を課せられた存在である。
 その戦いの中で、魔力を使い果たし、力尽きてしまった魔法少女は、消滅してしまう。そう、さやかのように。
魔法少女の間で伝わっている伝承には、その際は、後悔や絶望することなく、心安らかなまま導かれるとされている。その概念を、『円環の理』と語る者もいる。

 ほむらは、立ち上がろうともせず、そんな二人の様子を見ていた。が、不意に、自分の手に視線を落とした。
 すると、その手には、少し派手な感じの赤い色のリボンが握られていた。
 ほむらは、そのリボンを、再びギュッと握り締め…
「…まどか…」
 涙を流しながら、そう呟いた。

 その声は、マミと杏子にも届いていた。
「…?」
 しかし、杏子は、さやかを想う涙を流しながら、不思議そうな視線を向けるだけ。
「暁美さん?」
 それは、マミも同じだった。そして…
「まどかって…誰?」
 自問するかのように、そう呟いた。

 そう…ほむら以外に、その名を知る者はいなかった。
 それでも、この世界は…

 後日の夜…
『この世界は、一人の魔法少女の願いによって、再編され、今の状態になった…か…』
 キュゥべぇが、傍に立っている、赤いピンクのリボンで髪を、いわゆるツインテールの状態に頭の両脇に束ねた状態の ほむらに、そう言葉を返し…
『なるほどね。確かに、君の話しは、一つの仮説としては成り立つね』
 そんな意見を述べた。
「仮説じゃなくて、本当だってば」
 ほむらは、不機嫌そうな表情で、そう訴えた。もっとも、不機嫌そうな表情は、基本的に普段からであり、その口調にも、どうしても信じてもらいたいというような意志の強さは感じられない。
 ほむら達は、高層ビルの屋上にいた。そこからは、見滝原の街並みが一望できる。ほむらは、キュゥべぇの方を見ることなく、街を見続けている。
 そんな ほむらに、キュゥべぇも、やはり、淡々と言葉を返す。もっとも、それも、いつもの事だが…
『だとしても、証明のしようがないよ。仮に、君が、その記憶を持ち越しているとしても、それは君の頭の中にしかない夢物語と区別がつかない』
「…ふん」
 ほむらは、その言いようが面白くなかったのか、手に持っていた黒く四角い結晶…同じ物が複数個あったが、その一個を、キュゥべぇに向って放り投げた。
 すると、キュゥべぇの背中の模様の部分が開き、グリーフシードを、その部分で器用に受け取った。一応、口があるのに、なぜ?…と思うが、これが、グリーフシードの回収方法なのだ。
『でも、魔女の概念…興味深くはあるね。事実、浄化しきれなくなった《ソウルジェム》が、なぜ消えてしまうのか、原理は解明できていないわけだし…そんな上手いエネルギーの回収方法があったなら、僕達の戦略も変わっていただろうね』
「…そうね…あんた達って、そういう奴等よね」
 ほむらは、『フッ』と笑みを浮かべると、持っていた結晶を、纏めてキュゥべぇに向って放った。
 キュゥべぇも、それを全て、背中で回収した。
 すると…
『…おや?…今晩は、ずいぶんと瘴気が濃いねぇ…《魔獣》どもが、次から次へと湧いてくる』
 キュゥべぇが、街を見下ろしながら、そう告げた。
 ほむらも、キッと表情を引き締めると…
「ぼやいてたって、仕方ない…行くわよ」
 ビルの屋上から、街の中へと飛び降りていった。
 キュゥべぇが、その後に続く。

…例え、魔女が生れなくなった世界でも、それで人の世の呪いが消え失せるわけではない…
…世界の歪みは、形を変えて、今も闇の底から人々を狙っている…

 ほむらとキュゥべぇが降り立った場所…ひと気のない、公園の遊歩道。そこに、まるでローブを纏った人間のような、それでも、あきらかに人間とは違う雰囲気を醸し出しているモノが、無数にもうろついていた。

 それが、『魔獣』と呼ばれる存在…
人の世の呪い…恨み、憎しみ、妬みといった感情が、瘴気をおびて実体化し、邪悪な《魔獣》となって、人々に様々な不幸をもたらそうと狙っている。

…悲しみと憎しみばかりを繰り返す、救いようのない世界だけれど…
…それでも、ここは、かつて《あの子》が守ろうとした場所なんだ…

『がんばって』

「え?」
 誰かに、そう囁かれてような気がして、慌てて辺りを見渡す。
だが、自分以外には、誰も人はいなかった。
 それでも、ほむらは、安心したような笑みを浮かべると、その手に弓を出現させ、かまえた。弦を引き絞ると、紫色に輝く光の矢が弓につがえられた。
ほむらは、光の矢の先を、目の前にいる魔獣に向けた。

 それを憶えてる…決して忘れたりしない…
 だから…私は、戦い続ける…