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FORCE of LOVE

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 僕にだって受け入れられないことはたくさんあった。未だに僕はアツヤが傍にいてくれるんじゃないかと思わずにはいられないときがあるし、豪炎寺くんが言うように、たとえば僕は夕香ちゃんの代わりには絶対になれないんだってことに思い悩んだこともあった。だけど、の連続なんだ。だけど頭ではどうしようもないこと位分かってて、だけど気持ちは晴れなくて、だけどそんなこと言って相手を困らせたくはない。だけど寂しい。僕はその苦しみを知っていたのに、それを彼にも強いたのだ。誰よりも弱くて脆いからこそ、僕はそれを、誰よりもよく知っていたのに。
「僕は…多分、これから先、一生豪炎寺くん以外と全く関わらずに生きていって欲しいって君が望むんだったら、それでも良いんだ」
 僕にはもう失うものがなんて何もなかった。豪炎寺くんがいてくれるならそれが今の僕の殆んどを満たす。そう思うのは傲慢だろうか。
「でもそれじゃ、僕の存在はただ君の重荷にしかならないから…だから、もっと強くなって、もっと色んな人やものに触れて、君みたいになれれば、ちゃんと、二人で支えあって生きていけるって…そう思ったから…」
 僕はそれ以上言葉を継げなかったと思うけど、それを言い切るより少し早く、豪炎寺くんが唇に噛みつくようにキスをしたので、僕はただ必死でそれに応えた。最近僕らのキスは、いつもしょっぱい。塩辛くて、痛くて、こんなにも胸を締め付けるのに、それでも離れたくはないのだ。
「ごめん、もっとちゃんと、お前のこと信じてたいのに」
「僕ももっと君に相応しくなりたい」
 これが、僕らの不安の根底だったのだと思う。僕らは言いたかったことを全部吐き出して、何だか軽くなって、電気をつけてお互いの顔をまじまじと見た。それから真っ赤な目を少し笑いあって、抱き締めてごめんと呟いた。
 僕たちはこんなに長くお互いの抱えたものに、向き合えずにいたのだ。そしてまだ果てしなく僕らには壁も谷も待っていて、その度に落ち込んだり壊れてしまいそうにもなるのだ、きっと。
「強くなろうよ、一人じゃなくて、二人で」
 僕はそう言って、冷たくなった豪炎寺くんの掌を握った。
 手が冷たい人は心が温かいとよく言われるけど、普段は僕よりずっと豪炎寺くんの方が温かな手をしてるから、僕はそれを信じていない。
 手を握りあって相手の優しさを汲もうとする気持ちは、染岡くんが教えてくれたことだった。僕は未熟すぎて皆からたくさんのものを与えられなきゃ足りなすぎた。キャプテンからも、アツヤからも、サッカーからも、たくさんたくさんのものを貰った。でも僕に一番必要だったこと教えてくれるのはいつも豪炎寺くんだった。それを僕はいつも真っ直ぐに信じられた。それを大事にしようと思えるくらい、豪炎寺くんがすぐ傍でずっと、証明してくれているからだ。
「完璧じゃなくても誰かと力を合わせれば良いんだ教えてくれたのは、君だった」
「ああ」
「誰かを好きになって、その人が傍にいてくれるなら…それこそ無敵だね」
 驚いた顔をして一瞬戸惑って、ゆっくりとした呼吸と共に薄く笑って、豪炎寺くんが小さく頷いた。大学時代のスポーツ誌によく書かれていた言葉だ。吹雪士郎と豪炎寺修也、二人が揃えば無敵だ、って。僕はその言葉を今でも忘れてない。本当のことなんだから。
「…無敵…か」
「そうだよ。だって」
 僕は決して逞しいとは言えない両腕を力一杯広げた。僕は暗闇を吹き飛ばすくらいめいっぱい、笑った。幸せだから人は笑うんだ。君は傍にいてくれるから。だから僕は、たくさん笑って生きていくんだ。染岡くんに宣言した言葉が何度も胸を過る。好きなんだ。
 豪炎寺くんが好きなんだ。好きで好きで、とても幸せだ。
「僕はもう、なにもこわくない」