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FORCE of LOVE

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Epilogue(アツヤ)


 兄ちゃんに魔法の呪文を教えてやろう。
 ずっと秘密でとっておいた、最初で最後の言葉をやろう。もう俺の声は兄ちゃんには届かないけれど、俺は兄ちゃんをずっと見ていた。遠くでただ見ていた。兄ちゃんが少しでも多く笑えるように、いつも見ていた。俺は生きていないので、兄ちゃんになにもしてやれない。俺は生きていないので、兄ちゃんのそばにはいてやれない。
 言っておくが、俺は兄ちゃんを兄貴とも士郎とも呼んだりはしない。生きていない人間に時間はない。成長も、変化もない。だけど兄ちゃんが必要だと言うなら、兄ちゃんの中の「アツヤ」は兄ちゃんが勝手に大事にすれば良いのだ。アツヤを必要としてくれていた兄ちゃんの気持ちを、俺は嬉しく思うから。
 兄ちゃんは人に優しい。だから皆も兄ちゃんを好きになる。兄ちゃんはつよい。だから兄ちゃんの周囲にはいつも人がいた。兄ちゃんはズルイ。強くてバカで、俺の自慢の兄ちゃんで。でも兄ちゃんはとても脆い。
 兄ちゃんは本当は、脆くて弱くて泣き虫だ。我儘で頑固で捻くれていて、甘ったれでひどいばかだ。それでもあの人は、最後まで兄ちゃんを好きでいるだろう。
 別に相手は誰でも良かった。兄ちゃんを一人にしないで済むなら、傍に居てくれるなら、それは誰でも構わなかった。兄ちゃんが好きになった人が兄ちゃんを好きで居てくれるなら、それで俺は満足だった。
 何度でも言おう。俺は兄ちゃんを、兄貴とも士郎とも呼びはしない。全てはあの時のまま、俺にとって兄ちゃんは兄ちゃんのまま、俺は俺のまま。死んだ瞬間からは動きはしない。要するに、兄ちゃんの傍にいた「アツヤ」は俺じゃない。兄ちゃんの「アツヤ」が兄ちゃんに投げた言葉は全て、兄ちゃんが自分で導き出した答えなのだ。
 だから魔法の呪文も兄ちゃん自身が見つけた言葉だ。兄ちゃんがバカで、気付かず仕舞っていただけなのだ。ずっと前から自分の中に持っていながら兄ちゃんは、あの人を好きになることでやっと、それに気付くことができたのだ。昔から何も変わらない。兄ちゃんはつくづくばかで面倒くさくて鈍くさい。皆に愛されてるのにいつまでも気付きもせずに、寂しいよ一人はいやだよだなんて。馬鹿みたいだ。
 あの人に大事にされて愛されて、幸せすぎて泣く位まで思い知れば良い。そしていつか二人手を繋いでこっちへ来るなら、あの人が言う通りきっと三人でサッカーをしよう。だからそれまでどうか笑顔で。兄貴はもうひとりじゃない。兄ちゃんが自分で見つけたその魔法の呪文を何度でも繰り返して、俺は今日もたったひとりの兄弟の、幸せな明日を願うから。なあ兄ちゃん、もう寂しくはないだろう。
「豪炎寺くん何か言った?」
「いや…インターホンじゃないのか。円堂たちもう着く頃だろ」
「あっ本当だ!おーいキャプテン」
「吹雪ー!」
 ほらな兄ちゃんはもうひとりじゃない。見渡せばあの人がいてたくさんの仲間がいて、蹴ったボールはいつも必ず誰かに届くんだ。