ooo aftre ~夜天の主と欲望の王~ 第12部 「完」
「え…ここ……」
映司はいつの間にか雪が振り続ける平原に立っていた。
つい先ほどまで機動六課の屋上に居たはずだ…。
一体どういうことだろうか?
「ついに…ここまで来れたのだな」
「…あ…えっと…」
いつの間にか、自分の目の前に女性が立っていた。
もちろん自分はこの女性に会ったことがない。
会ったことがない…のだが、なぜか見覚えがあった。
そう…彼女の名は…
「リィン…フォースさん?」
「そうだ…思い出したのだな?欲望の王」
少しずつだが、今までの事を思い出してきた。
「俺は…何度も体験してきた…何度もアンジュを倒し…何度もヴォルケンリッターの皆と戦い…何度も…はやてちゃんの目の前から…」
「すまない…全て私がしてきた事だ…」
「でも…何度も、何どもこの時間を繰り返してきたお陰で…わかったことがあるんです」
映司はゆっくりとリィンフォースの元に近寄った。
そして、リィンフォースの手を優しく握った。
「俺は…ずっと家族は見えない手で繋がっている…そう思っていたんです…。でも、そう思っていたのは、俺だけ…本当の意味で繋がるってことは…その人達の傍にいること…大切な家族の傍で手をつなぎ続けること…それがわかったんです」
「欲望の王…」
「なぜ俺が皆と一緒にいられなかったのか、…簡単でした。俺自身がずっと傍に居続けるって決断できなかったから、でも…もうそんな迷いは吹き飛びました」
「…そうか…よかったな」
リィンフォースは自然と笑顔になった。
彼の目には、もう迷いなんて何もなかったのだ。
『気付くのが遅すぎだ!!欲望の王!!』
「っ!!この声!!」
映司は突然聞こえてきた声に反応し、後ろを振り向いた!!
そのドスの利いた声には聞き覚えがあった。
『全く、何度繰り返せば気が済むんだ!!?』
「あ…アンジュ…どうして?」
『安心しろ、欲望の王…俺はこの夜天の書に漂う思念の塊のようなものだ…』
アンジュは少しずつ映司の元へ歩み寄った。
一瞬映司は戸惑ったが、彼からは一切殺気が出ていなかった。
『ほう…何故我を警戒しない?』
「わからない…けど、何故かアンジュを憎めないんだ」
『っ!!ハッハッハッ!!憎めないから警戒しない?本当に変わった奴だな!!』
「アンジュ…そうだよ…あの世界を終わらせたかった理由…そうか…そうだったんだね」
『なんだ?欲望の王』
すると、映司はなんとアンジュに自分の右手を差し出した。
突然の事にアンジュは珍しく驚いてしまった。
『ッ!!おいおい欲望の王!!…いったいどういうつもりだ?』
「…世界の終焉…」
『…?』
「…それってさ、俺のためにしてくれてたんじゃないかな?」
『ッ!!!!』
「…俺は、ずっと繰り返される時間の流れを歩んできた…、最終的に俺は消滅…そしてまた最初から…だから、アンジュはその繰り返される世界から俺を解放してあげたかった…間違ってたら…」
『勘違いするなよ!!欲望の王!!!!』
「ッ!!」
『俺はただ…この繰り返す世界の理が気に喰わなかった!!…ただ、それだけだ…決して貴様の為ではない!!』
「ッ!!…そっか!」
やっぱりアンジュはアンクと似ているな。
…素直じゃないところとか。
「でも…それでもありがとう!!」
『ッ!…ふぅん…』
アンジュは大きなため息をし、映司の手を掴み、握手をした。
映司は笑い、それを見ていたリィンフォースも自然に笑顔になった。
『さて…欲望の王…その決断に…迷いはないな?』
「うん、もう大丈夫」
『なら…もうこの世界に用はないな』
「…え?」
「幻獣の王の言うとおりだ…欲望の王」
リィンフォースの後ろに、光り輝くオーロラのカーテンが出現した。
次第に、そのカーテンは映司へと迫ってきた。
「ここから先は欲望の王自身で作られるページだ…」
『さぁ!存分に貴様の欲望を解放してこい!!』
「ちょっと!リィンフォースさん!アンジュ!あなたたちも…」
「私たちの分も…幸せになってくれ…」
『それが…我らの…願い…それと償いだ!!』
「二人とも!!…ッ!!」
作品名:ooo aftre ~夜天の主と欲望の王~ 第12部 「完」 作家名:a-o-w