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Sweet Kiss

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「滝沢くん?」

病室のドアから咲が顔を出した。滝沢の入院も3ヶ月目で、来週には退院できる予定だ。あの夏の日、咲たちと分かれてから、滝沢は亜東財閥と対決しながらも、ニートたちをネットワークでつなぐプロジェクトを亜東の孫娘のユーコと組んで実行したのだが、その代償は大きかった。滝沢は亜東財閥の反対勢力から命を狙われ、銃弾を三発も打ち込まれることになってしまったのだ。しかし、その傷も癒え、もうすぐ退院できる。咲たちと無事再会もできて、今となっては滝沢の目の前には希望に満ちた日々だけが待っているようだった。

中でも一番大きな希望は・・・咲だ。ずっと俺を信じていてくれた咲。俺を待っていてくれた咲。俺と一緒に闘うと言ってくれた咲。咲の存在は、滝沢の心の核となっていた。



「いよいよ、来週退院だね。平澤くんや板津くんも退院のとき来てくれるって。」

「そっか、わりーな。迷惑かけて。でも、やっと、病院から出れると思うと、正直ほっとするよ」

「松葉杖なしで歩けるようになるまでには、もうちょっと時間かかっちゃうね。でも、安心してね?私、ちゃんと支えるからね?遠慮なく、私に頼ってね?」

咲はまじめな顔で、滝沢を安心させようとそんなことをいう。

「うん、サンキュー。頼りにしてるよ」


頼りにしているっていうのは本当だけど・・・。でも、本当は、咲がそばにいてくれること、咲の顔をいつも見れること。それが、一番俺の元気の元なんだよね。それに・・・・。


「咲。こっちにきて?」

「なあに?滝沢くん?」

咲は滝沢のベッドに腰掛けて、滝沢に笑顔を向けた。

「咲。毎日見舞いきてくれて、ありがと。来週、退院したらさ、一番に行きたいところ、あるんだけど。リクエストしていい?」

「もちろんだよ。どこ行きたいの?」

「咲の部屋。咲のアパートに行きたい」

「え?」

実は滝沢が入院している病院は咲のアパートの斜め向かいにあった。咲の姿見たさに、滝沢がこの病院に入ったのだ。

滝沢は咲の手を握って、言葉を続けた。

「咲の・・・暮らしているスペース、見たいんだ。それに・・・」

「それに?」

「咲、いってくれたよね?俺が退院したら・・・ジョニーに活躍してもらうって」

「あ・・・/////」

咲は自分の恥ずかしい発言を思い出して赤面してしまった。

「このベッドに縛り付けられたままで、毎日毎日咲からのキス攻撃に耐えてた俺の気持ち・・・わかるよね?」

「キス攻撃って・・・攻撃してるつもりはないけど・・・」

「いーや。攻撃だよ、あれ。俺のこと思いっきりアオッテくれちゃって・・・」

「だって・・・滝沢くんだって・・・喜んでくれてるんじゃなかったの?」

「喜んでるよ、思いっきり。だから、キスだけじゃ・・・もう我慢できないワケ」

「滝沢くんたら・・・」

咲は恥ずかしくて滝沢から視線をそらして聞いた。

「じゃあ・・・今日はキスしないほうが・・・いい?」

「ジョーダン!咲がこんなに近くにいるのに。咲がキスしてくれないなら、俺から・・・」

そう言って、滝沢は咲の両頬に手を当てて、自分へ向けさせた。唇をそっと重ねる。

もう何度も交わしたキス。再会してから、毎日交わしているキス。でも、足りない。まだ、ぜんぜん足りない。




滝沢は唇をほとんど重ねたままで、ささやく。

「咲・・・これ、この1ヶ月の咲のキス攻撃のお返し・・・・・」

そう言葉をつげた後、滝沢は再び唇を重ねてきた。角度を変えて何度も唇を合わせる。

「ああ・・・・」

咲がとろんとした目になって、ため息のような声をもらす。

「咲・・・その声・・・反則・・・」

滝沢はそっとそうつぶやき、更に深く口づけた。自分でも抑制が効かなくなってきて、そのまま咲の上半身を自分の腕の中に抱えこんで、更にキスを続けた。深く。強く。激しく。




やっと滝沢が唇を離したときには、咲はもう全身の力が抜けて、はあはあと胸を大きく波打たせていた。




「だいじょうぶ?咲」

「だ・・・だいじょうぶ・・・だけど・・・」

「続きは・・・来週。咲の部屋で、ね?」

「滝沢くん・・・」



咲。本当は、俺・・・いますぐ・・・このまま・・・・。

でも、病室で、なんてね。それはちょっとね。



滝沢は名残惜しげに咲をその両腕から離した。


一年も待ったんだから。あと一週間くらい、我慢しないとね。でも、来週は。いろいろなことを君に伝えたい。いろいろなことを君に。言葉でなく。俺自身で。


I would like to tell you everything without saying anything.

そういう気持ちなんだよ、俺。

作品名:Sweet Kiss 作家名:なつの