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ひばにょ! 卒業SS

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応接室の外では、まだ固い桜のつぼみが寒風に身を縮め、春の訪れを待っている。
 晴れてはいるけれど、風は北からのもので、春一番までにはまだ間がありそうだ。
 そんな3月のことである。
「ヒバリさんの好きなものってなんですか?」
 綱吉の質問に、雲雀は紙を捲る手を一瞬だけ止めた。
「どうしてそんなこと訊くの?」
「えっ? えーと、ど、どうしてでしょうね?」
 卒業祝いを何にするか悩んでいるとは言えずに、綱吉はハハハとごまかし笑いを浮かべて、雲雀の机に淹れたてのお茶を置く。
 雲雀は湯飲みを持ち上げると、そのお茶を一口飲んだ。
 紙を捲り、判を押す。
「それで終わりですか?」
「うん」
 頷いて、雲雀は処理済みの箱にその紙を入れた。
「お疲れさまでした」
 綱吉の声がどこかしんみりと響くのは、これが雲雀の、風紀委員長として最後の仕事だったからだ。
 3月。
 そう、雲雀はもう卒業するのだ。
 綱吉がこの学校に赴任してきてから、もう2年が経とうとしていた。
 雲雀が卒業してしまえば、こうして応接室に呼ばれることもなくなるだろう。
 応接室はその本来の機能を取り戻し、綱吉が入る機会もほとんどなくなるに違いない。
 初めて雲雀に押し倒されたのもここのソファーだったなと思うと、なんだか感慨深い。
 綱吉の淹れたお茶を飲み干し、雲雀が立ち上がる。
「さっきの」
「え?」
 雲雀の手が、綱吉のネクタイをぐいと引く。
 柔らかい唇が、綱吉の唇を塞ぐ。下唇にふつりと歯を立てて、唇は離れた。
「欲しいもの。分からないなんて言ったら、咬み殺すよ」
 そう言った雲雀の目元が春のように染まる。
 胸の中がぎゅっと甘く捻れる。
 春はここにあるから。
 だから、もっとゆっくり……急がないでくればいい。
 卒業式で泣いてしまいそうだな、と、綱吉は苦笑をこぼした。
作品名:ひばにょ! 卒業SS 作家名:|ω・)