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スパコミ 【AMNESIA】 サンプル

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「ケ、ケントさん?」
もう、何がなんだか。
「頭の回転が悪くても結構です。教えて下さいっ」
そう訴えると、わざとなのか。と、ふてくされた返事が返ってきた。
「わっ、わざとなんかじゃありません」
私は思わずその腕を解こうとした。
しかし、いとも簡単に制されてしまった。
「こうして」
彼の言葉が耳元にかかる。
「君を抱き締めたいと思ってから十一秒も要する。なんとも効率が悪いとは思わないか?」
あっ。と、声をあげる私。
その反応に高揚したのか、彼の腕の力が強くなった。
そして愛おしそうに、私の髪をかき混ぜながら続けた。
「これは最重要懸念事項だと私は認識している。対応策は現在検討中だ」
「ふふっ」
相変わらずの物言いに、私は思わず吹き出してしまった。
すると彼はますます大真面目に、笑いごとではない。と、言った。
「私にとって死活問題だ。それとも君は、さして重要ではないと考えているのか?」
「そんなことないですよ」
「本当か?」
ひどく不安気な顔。
「君も、私と同じ思いを抱いてくれているのか?」
彼はこんなに感情を表す人だっただろうか。
少なくとも記憶がなくなる前は違ったであろう。
何となく申し訳なさを感じつつも、私は彼の新しい発見に喜んでいた。
「私、ケントさんにこうされるの好きですよ。だから、近くに居た方のが、もっとしてもらえるのかな……なんて」
言った後で、結構大胆な発言をした事に気付く。
もっとしてもらえる。だなんて。
全身に熱が帯びてくる。どうしよう。恥ずかしい。
「君……」
呼ばれると同時に、頬にひんやりとしたものを感じた。
体温の低い彼の掌が、私の火照った頬を包み込んでいる。
眼鏡越しに見えるグリーンの瞳が、この部屋の植物と同じように鮮やかで吸い込まれてしまいそうだ。
また眩暈。でも嫌な感じはしない。
それどころか、心地良い拘束感が身体を支配する。
このまま、彼に吸収されてしまいたい。
「もっと……もっと近くで感じたい。君のことを」
彼はそう囁くと唇を重ねてきた。
たったこれだけの距離でさえ、もどかしいと思う私達。
やがて九千キロの距離を経験することになる。