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apple blossom

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 帰りの電車の中、入口付近でだらしなく窓にもたれたウォルターに、隣に立ったアンディは下からにらみ上げるようにしてぼそっと言う。
「もうあんなイタズラしないでよね」
 フレグランスの件だ。
 恋人がいることをアピールしながら歩いていたなんて相当恥ずかしい。
 ウォルターはぼんやりと首を傾げる。
「んー? ああ」
 聞いているのかと疑いたくなるほどいい加減な返事。
 窓の外を見つめながらウォルターは言う。
「それよかアンディ、おまえまた迷子になったろ?」
「いや……ちょっと待ち合わせ場所を通り過ぎただけだよ」
「嘘つけ。駅からだいぶ離れたところで気付いたんじゃないのか?」
 お見通しといった感じのウォルターに、アンディはバジルに言われたことを思い出し、こっそりと服のポケットやバックパックの中身を確かめるのだった。
(……無いな、盗聴器)



 リンゴの花の花言葉を知って、アンディがさらに憤慨するのは、また別の話。





(おしまい)