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48:刻印

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「あんたがすっかり元気だったらさ、そのうち此処が退屈になってまた外を飛び回りそうで…」
「だとしても、戻ってくるに決まってんだろ」
「あんたはそのつもりでいるだろうけど、ね…」
言い淀み、暫しの沈黙の後、イオリはサルトビに向き直って笑う。
「あたい、やな嫁だね。亭主の病気を喜ぶなんてさ」
イオリが、そんなことを考えていたなんて知らなかった。
(こいつにも、見透かされてやがる)
「行かねぇよ、馬鹿」
躊躇いがちに腕を伸ばすと、胸に細い体が飛び込んできた。
驚きながらその肩に触れれば、背中に回された腕に力が入る。
視線を外しながら耳を赤く染めるこの少女を、愛しいと思う。
「イオリ」
呼ばれて少女が顔を上げる。
ふらふらと動く銀の点越しに、少女が照れ臭そうに笑うのを見る。
「キスしてもいい?」
口の中に涙の味が蘇り、一瞬体が強張る。
動揺を悟られないよう無表情でマスクをずらせば、頬を掠める手袋越しの指の感触に、またあの男を思いだす。
イオリが頬を染めて顔を寄せ、ゆっくりと瞼を閉じる。
銀の点は視界の中央で小さく震えていた。
眼を閉じても暗闇の中でそれは凛として光る。
きつく瞼を瞑って婚約者と唇を重ねると、銀の点が泣いている様に見えた。


Fin.
作品名:48:刻印 作家名:ぼたん