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でんでろ3
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novelistID. 23343
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クイズ¥マジオネア

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ここは、とあるレストラン。まるで北欧の田舎の漁師町にでもありそうな活気と気安さのある店だった。しかし、シェフの腕は、まさに一級品。知る人ぞ知る穴場的存在だった。
 そんな店で、テーブルをはさんで夕食をとるカップルがいた。男の方は、身なりや持ち物、たたずまいなど、一目で金持ちとわかる青年だった。女の方も、なかなかの美人。実は、そろそろ、この男と結婚したいなどと思っていた。
「実は、今日は、君に、とても大切な話があるんだ」
こう切り出されて、女の期待は一気に高まった。
(ま、まさか、プロポーズ?)
「俺と別れてくれ」
女の頭脳は、その言葉を処理するのを拒んだ。
(え……っと、この人、今、何語をしゃべったの?)
「もちろんタダでとは言わない。手切れ金に500万円渡そう」
なにやら分厚い封筒を出してくる。事ここに至って、女も、さすがに理解した。理解すると同時に、怒りが一気に湧いてきた。
「わ、別れないわよっ! 別れてやるもんですかっ!」
「ファイナルアンサー?」
男が、語尾をいやらしく上げて言った。
「ふぁ、ふぁ、いなる、あんさぁ?」
女には、男の言葉の意味が分からなかった。
「それは、ファイナルアンサーですか?」
「あ、あなた、ふざけてるの? ファイナルアンサーってクイズ$ミリオネアの……」
「さーて、結論を急ぐことはありませんよ。あなたには3つのライフラインが残されています」
「他人の話を聞きなさいよ!」
「そうですか、フィフティ・フィフティをお使いになりますか」
「言ってないわよ、そんなこと」
「コンピュータがランダムに4つの選択肢のうち2つを消します」
「えっ? 4つ?」
「おーっと、『歌う』と『踊る』の2つが消えて、『別れる』と『別れない』が残りました」
「えっ? 『歌う』と『踊る』なんてあったの? 私、それがいい」
「おー、それはラッキーでしたね。危うく不正解を選ぶところでした」
男は、あらぬ方向に視線を送ると、
「では、次のライフライン、オーディエンスを使いますか?」
「オーディエンスって、会場のお客さんたちに、正解と思う番号を押してもらって、各選択肢の得票数を参考にするって、あれでしょ。そんなの一体、誰に……」
女が、ふと周りを見回すと、さっきまで2人のことを塵ほども気にかけていなかったはずの他の席の客たちが、手に手に押しボタンを持って、こちらを見守っていた。
「こちらが結果です」
男が指差す先には、さっきまでメニューを書いた黒板がかかっていたところに、いつの間にか巨大な液晶モニタが設置されていた。
「『別れる』が96%、『別れない』は、わずかに4%ですね」
「だから、何だっていうのよ! なんで、こんな見ず知らずの他人に、私の人生決められなきゃならないの?」
「分かりました。最後のライフライン、テレフォンをお使いですね」
「だから、他人の話を聞けーっ!」
「ご実家のご家族とテレビ電話がつながっております」
先ほど、オーディエンスの棒グラフを映し出していた液晶モニターに、女の郷里の家族たちが映し出された。
「おーい、和代。そんな男とは別れろ」
「そうだぞ。わしは、マッサージチェアなど要らんといったのに……」
「まったくノートパソコンなんか、送りつけてきて……」
「いきなり食洗機の工事の人が来て、びっくりしたわ」
「その上、お前が別れたら、お風呂のリフォーム……」
女が投げつけたイスがモニタに突き刺さり、そこで通信は途絶えた。
「分かったわよ。別れてやるわよ」
「ファイナルアンサー?」
いやらしく語尾を上げて聞く男。
「ファイ、ナル、アン、サー!」
語気荒く答える女。
 男は、思い切り酸っぱい顔や、お日様のような顔や、苦虫を噛み潰したような顔や、おにぎりを包んでいたアルミホイルをうっかり奥歯で噛んでしまったような顔など、たっぷり百面相をした後で、
「おめでとう!」
と言って、札束を女に渡そうとした。その瞬間、女のアッパーカットが、男の顎を砕き、お札がひらひらと宙を舞った。うずくまる男の腹に、1発けりを入れて、女は立ち去った。
 男は、しばらく動けなかったが、やっとのことで立ち上がり言った。
「命があったら、また、来週~!」
作品名:クイズ¥マジオネア 作家名:でんでろ3