狭い部屋でも
向かいあった状態で、膠着。
一方は押して、一方も押して。
互いに譲らず。
そんな二人の、話。
「…なあ、帝人」
「、なに?」
「俺の名前呼んでみ?」
「…へ?」
いつの間にか逸らして俯いていた顔。持ち上げると、やっぱさっきと変わらない表情の彼で。
でも、言ってることは唐突で、思わず変な声が出る。
「へ?じゃねーぇって、俺の素敵で華麗なお名前ー。わかる?わかんねぇ?わっかんないわけねーよなぁ」
「…あ、え?」
「え?なにほんとにわかんないの?しょーがねーなあ、じゃあヒント…」
「…ま、」
「ん?」
「まさおみ、でしょ…知ってるよ」
それくらい。
でも、改めてだした名前は、なんか妙に気恥ずかしくて、思わずまた、顔を伏せてしまった。
「そーだよそーだよ、君の親友の紀田正臣!まさにその人!!わかってるじゃないの!みかどくんっ」
「そりゃ、…当たり前じゃん」
名前くらい、知ってるに決まってる。君の存在は、僕の中でそんなに小さくない。思いの外、君が思ってるより、きっと、だいぶ。かなり。大きいんだ。
「じゃあ、俺がお前のこと好きってのは?」
「……、な、へ?」
「おれが帝人のことかなり好きだって、しってた?」
「な、…なにいって」
「だぁからさー、お前に無理矢理笑ってもらうとかさ、あんましてほしくないわけ、俺としては」
「…いみ、わかんないよ」
そんなこと、突然いわれたって。
…わかんない。
それがどこに繋がって、なんの話になってるねか、全く。
「…真面目にいうと」
「、え?」
「…帝人のこと、ラブ的に好き」
「…な、にそれ」
「きゃーもーはっずい、なにこれめっちゃはっずいやっばい」
「……、」
「…って、なんかいってくんねえと俺まじはっずいんですけどっ!」
「………ばか」
わかんない。ほんと、なにいきなり、この人、…恥ずかしい。
恥ずかしいとか思ってる自分も結構恥ずかしいとか、知ってるから、余計に。
「…っかあああ、おっまえほんとかわいいよなぁあ、ああもー!みっかどー!!!」
「おわぁっ」
多分赤い顔を隠すように彼から逸らしたら正面から、ガバッと。
抱き着いてくるから。力が抜ける。ほんと君は…。
「帝人SUKI」
「…ばか」
ぼくも、とか言ったほうがいいのかと思ってやめた。だって、調子にのる彼しか目に浮かばなかったから。