過ぎたるは及ばざるが如し
とにかく先程から対面キッチンの調理台の上では、アムロが嬉々として半円形の蓋を回し続けている。音はそのアムロが回す機械から発している。
「・・・君・・・ねぇ〜」
「何だよ。そんなに呆れた口調で言うことないだろ?あんたの分だって削るんだから」
「いや・・・私は一本だけでじゅうぶ・・・」
「一本だけじゃ物足りないって!」
「だからって、君のそれは・・・些か・・・・・・」
「え〜〜? 一気に三本くらい軽いもんだよ? それに、綺麗で涼しげな水色! だろ?」
「それについては否やを述べる気はさらさら無いが・・・」
「貴方のは、期間限定のイチゴサワー味なんだぞ。可愛い薄ピンクになるんだろうナァ〜。此の時期になったら絶対やろうって決めてたから、買い置きしといたんだ!」
「気持ちは大変嬉しいのだが・・・・・・多すぎると・・・」
「溶けちゃえば、たいした事ないってば!」
「だが、しかし・・・」
「んっとにもう〜。神経質なんだから」
「神経質なのではない。常識的に見てだな・・・」
「じゃ、二本にしといてやるよ」
「いや・・・だからだね・・・」
ガリガリガリ!
「ほら! やっぱり綺麗な薄ピンク。でも一本じゃこんな量にしかなんないぞ?」
「充分じゃ・・・」
「足りないって! もう一本!」
「止めたまえ! アムロ!! いくらガ○ガ○君をカキ氷に出来るグッズが手に入ったからといって、やりすぎだ!」
此の冬。
日本に仕事に来ていたアムロは、古道具屋で、氷菓の○リ○リ君を入れて蓋を回すと
あ〜ら! 不思議!! ふわふわのカキ氷が出来ちゃう!!
という玩具的機械を見つけ、夏に突入するなり早速作動し始めたのだ。
ガ○ガ○君の一般的な味はソーダ味だが、期間限定で梨やイチゴサワー等が出る。それを見つけたアムロは、来るべき夏へ向けて、先行投資よろしく買い集めて冷凍庫に入れていたのだ。
そのせいで、せっかくアムロの為に作った料理の冷凍保存を控えねばならなかったシャアにとっては、有り難迷惑この上ない事態だったのだが。
「はい! どうぞ!!」
「・・・・・・どうあっても、これを、完食せよと?」
「俺の気遣い、無駄にする気か?」
「いや! そんな気はさらさら無いが・・・。それほど私を再起不能にしたいのかね」
「何言ってんのさ。こんなの屁でもないだろ? あんた、悪魔なんだから」
「だからと言ってだな・・・」
「はい! あ〜ん」
渋るシャアに痺れを切らしたアムロがいよいよ強硬手段に出た。
削った氷菓をスプーンで掬うと、シャアの口元へと差し出したのだ。
愛しく思う相手の可愛い仕草に、心底惚れてるシャアが逆らえるはずも無く・・・・・・
その翌日
頻回にトイレに入り、お腹にホッカイロを当てて過ごすアムロと、珍しく彼の傍に姿を現す事の無かった魔界公爵が居たとか
本日の教訓:冷やしすぎはいけません。
2012/05/14
作品名:過ぎたるは及ばざるが如し 作家名:まお