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フレンドボーイ42
フレンドボーイ42
novelistID. 608
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Dinner

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 「あの娘か?さあ、おらにはわかんねえ。ただ調理師共があまた具して逃げたっていってたけな」
 「ありがとうございます」
 
 本当に人肉を食いあさり、全てを食らいつくそうとしたというのか。その娘は。果てはコックや召使いまで食い散らかしたという、その娘は。いるというならその館に言ってみたい。そういうホラーやオカルトが好きな彼は、その家に行きたいと、思っていた。だが、伝えられるだけで場所の明確な情報はどこにも存在していない。歩き続けて、もう何日たっただろうか。趣味に取りつかれすぎている気もするが。
 「すいません」
 「あら、旅人さん、どうしたの」
 「実はですね」
 彼は、その恐怖に満ちた名を口にする。

 「バニカ・コンチータが住んでいたという館を探しているのですが」
 「!!」
 農家と思しき家の婦人は、ひっくり返りそうになった。
 「一体なんだってあんな家のことを調べようとか思うのだい」
 「つかえている家の主人がそういう趣味でして」 
 まさか自分がそういう趣味だなんて口が裂けても言えないので、勝手に架空の主人を作る。このやり取りはもう十何回目だろうか。
 「そ、そう、そうなの。ごめんなさいね。主人に忠誠なのね」
 「ええ、まあ」
 このやり取りもうんざりしてきたが表情にはおくびも出さない。
 「あそこにちょっと風変わりな館があるのわかる?」
 「ええ」
 このあたりでは一際目立つ、古びて廃れているのにまだ立ち続けている館。
 「取り壊すのにも時間と人手が必要でしょ?だからずっとあのまんま。たぶん天災でもない限りずっとあのまんまよ」
 「ありがとうございました」
 「まって」
 夫人に呼びとめられて、彼は不審な顔をして声のほうを見やる。
 「あの一帯、神隠しの多発地帯なの。この間も子供が一人いなくなってしまった…行かないほうがいいと思うわ。あなたに何があるか分かったもんじゃない」
 彼はそれを聞くと、興奮したい気分になり、まさに求めていた館だと思いながら、口調は仕方なげに、
 「主人の命ですから」
 と答えた。
 
 <改ページ>

 #

 ここだけ日光が当たっていないかのように暗い。この感覚は今までに彼が訪れた悪評の立つ館の中でも異彩を放っていた。静かに、彼はその館のドアを開こうとする。とたん、その内部のにおいに失神しそうになった。
 「なんだ、この匂いはっ…」
 彼がたじろぐのを確認するように、放した扉はひとりでにしまった。
 「何なんだよ…」
 今までの彼にはありえない珍しく弱気な言葉。匂いがこの世と思えない、腐敗臭を放つ。コンチータはいつの時代の人物か、そのことも不明だが、ただわかるのは、その匂いは数年前くらいの食物のにおいなんかで反く、もっと古いものだということだ。ずっと、そのまんま残しているということは、こういうところにもあるのではないか。
 しかし彼が立ち直ると、彼は次に高揚感に襲われた。
 「これは…いいところに来たものだ」
 極限の恐怖の館に、このようなにおいが漂っていれば、むしろその館の価値を失うどころか、価値をあげるものだ。いいではないか。人肉を食いあさったという悪食娘コンチータ。彼はランプを取り出して、館に入る。

 応接間、トイレ、使用人室、寝室…。今の彼にはそれほど興味のある場所ではなかった。
 「どこにある…どこにあるんだ…」
 彼の探しているものはなかなか見つからない。迷路のように入り組んだ館の階段を上っては降りて、暗い館の中を歩き続ける。しかし片っ端からドアを開けても、それらしき部屋は見つからない。もう帰ろうか。またいつものことだ。いつも、期待して入った館にはなんもなくて、がっくり肩を落として帰る。またそのケースに当たるとは。もういいか。帰ろうか。そう思った時、彼は一番重要なことに気づかされた。
 「これは…」
 自分が残していたマーキングが、すべて消えている。それだけではない。

 さっき通ってきた道と、今眼前に広がる道は異なっているのだ。まだ開いていないドアがたくさん。さっきあの場所は全部開いてきたのに。しかもここは中庭が見渡せる場所なんかではなかったのに。その時、不自然な声が聞こえてきた。

   ウヤマイタタエヨ・・・・・・

 声は10歳かそこらの変声途中の少年の声と、幼さが残る少女の声。その声がする方に駆けてみる。

   ウヤマイタタエヨ・・・・・・

 「この部屋か」
 音のもとと思われる部屋を開く。しかし、そこには少年と少女の姿はない。ただ破れた窓がそこにあるだけ。しかし、彼は念入りに姿を探そうとした。それでも見つかったのは、子供に着せるくらいの大きさの使用人服とメイド服。人間はどこにもない。その時、不意に床に穴が開いた。彼は「ひぃ」と情けない声をあげて下の階に落ちる。起き上がって彼は下を見る。そこにはベッドが一つある。高貴な人間の眠るのにふさわしい、きらびやかなベッド。そこには化粧品入れがずらりと並んでいた。
 「これは…コンチータの部屋か…?」
 間違いないだろう。この館で一番偉い女主人、それこそが、悪食娘バニカ・コンチータなのだから。
 彼はその部屋のドアを開ける。そこには、すぐ下の買いがわかる部屋があり、その眼前に、大広間が姿を見せていた。彼は下がってみるが、誰もいない。彼は座ってみる。とたんに、耳に鋭く突き刺さる。
 
   ・・・・・・オネガイイタシマス・・・・・・ワタシダケハ・・・・・・アアアアアアアアアアアア

 若い男性と思しき声。その声が聞こえる方に行くと、そこには調理室があった。この館の中でも最もにおいが強烈な部屋。彼はそこに放置された鍋の中を見て、尻もちをついた。
 「……髪の毛…人骨…服まで一緒に入ってやがる」
 コック。調理師。恐らくそんなところだろう。まさか調理師は自らも鍋に入り、食にともされたというのか。やっとコンチータの片鱗がつかめた。その瞬間。

   ・・・ウワァアアアアアアアアアアアアアアア

 先ほどの少年の声。眼前にいきなり、不思議な姿が映し出された。青い髪をしたコックが倒れている。そのコックを別のコックがなべにぶち込む。その時、赤い服を着た高貴な婦人が、金髪の少年をナイフで一突きにする。彼は前のめりに倒れ、そのまま起き上がることもできずに痙攣している。その様子を見た少女がふらっと倒れこみ、尻もちをついて、夫人のほうを見つめている。夫人は、その背後の視線に気づいたのか、その手のナイフを少女に向かって投げる。少女の心臓のあたりに、それはいとも簡単に刺さる。

   ウ・・・ウウウ・・・ナゼデ・・・ス・・・カ・・・

 彼は、今はもう楽しみというものを感じられなかった。その光景は眼前に見て気持ちのいいものではなかった。狂った夫人がさしては、そこにいる調理師がなべにフライパンに投げ入れる。これが、身の毛がよだつ光景というやつか。彼は逃げようと思った。このままいたら死んでしまう。このままいたら…しかし、動こうとすると、誰かが押さえつける感触を感じた。彼が背後を見ると、そこには、

 先ほど殺されたはずのコックがいた。
 
作品名:Dinner 作家名:フレンドボーイ42