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アメイジング・グロウ

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廊下を走るな、なんて張り紙は今更何の意味も持っていない。とうの昔に剥がれたその跡だけが見える。壁に残ったセロハンの跡を過ぎ、2階への階段を駆け上がりながら、塔子はちらりと振り返った。
(まだいるよ…!)
雷門に転校すると決めた時予想していなかったわけではなかった。自分で言うのもなんだが、自分――“財前”塔子は有名だ。恐らく、日本のどこへ行ったとしても、誰もが知っている。
理由は明白。自分の父は総理大臣だからなわけで。それは、誇りに思っている。しかし、そのせいで現在進行形で走っている。それを考えると、父が総理大臣なんかであるのを少し複雑に思ってしまう。もし、私の父が普通のサラリーマンだったら?
矛盾など承知の上だ。始めから全てにおいての正しさなんて求めてはいない。
そして、本当はこんなことになっている理由が父の事だけではないことも分かっている。けれどそれには気付きたくないのだ。気付けば、自分の中でなにかが変わる。きっとそれは私にとって嬉しいことではないだろうから。私は、サッカーが好きだ。

考えながら走っていると廊下の端まで来てしまった。まずい、もう逃げ場はない。前には人の群れ、後ろは壁。辟易する。目眩がしそう。人が皆、自分に憎しみとか、そういう類のものを向けていないのが唯一の救いだが。(寧ろこれは、羨望の目だ)しかしそうじゃないとして、私に向けられているこれが嬉しいとか、そんなことにはならないわけで。色の波が私を襲う。
(どうしようかなあ…)
ざわざわと揺れる波。誰が一番始めに動くか。今は皆、追い詰めてどうにも動きあぐねている状態だ。勿論自分も。

なんとも良い案が出ないまま周りをざっと見渡せば、大きく口を開いた窓が隣にあった。見れば校庭で誰かがサッカーをしている。円堂と半田と染岡だ。ああ、私もやりたい!
なにか、どうにかならないものかと――背伸びをしてふと視線を落とせば、見慣れた後ろ姿が見えた。あの蒼い髪。いつもいつも、頼りになる仲間の一人。
そういえば、私はあの色が大好きだ。

「風丸ー!!」
彼が上を見た。目が合った。
「なんだー?」
下から叫ぶ声は私に、なにかは分からないが確かに確信をくれた。得体の知れない確信。悪くない。
だから、私は彼ににこりと笑みを返し、それから助走をつけて、――窓を飛び越えたのだった。
跳んだ瞬間見えたのは蒼だった。思考はぐるりと、しかし現実は反転などするはずもなく、風丸を押し倒すように私は地に下りた。実際風丸は倒れることなんてなく私を受け止めたわけだが、その手を取って私は走り出した。
「ちょ、塔子!?」
「いいから!」
それこそ無数の視線が背中を射ている。しっかりとそれを感じた事には感じたのだが、不思議と怖さだとか、そのことに対する気まずさみたいなものは無かった。きっと隣に風丸がいるからだ、と塔子は思った。
作品名:アメイジング・グロウ 作家名:ろむせん