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紙飛行機の飛ぶ空

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 真っ青な空は何処までも何処までも広がっている。わたし、ミヨはここから紙飛行機を飛ばした。ここ、ズイのロストタワーから。
 わたしの友達、キャモメのクーちゃんがここで眠っている。もう1週間もたつ。まだ1週間しかたってない。どちらの感覚も胸の中にくすぶり、そんな矛盾する思いも一緒に飛んで行ってしまえばいいのに……。
 飛ばした紙飛行機はうまく風を掴めない所為かすぐに墜落した。わたしはため息をひとつつく。もやもやとした気分の中、乱雑に紙飛行機を折ってまた飛ばそうとした。
「紙飛行機飛ばすのすき?。」
わたしはびくっと振り向いた。
『こんなところで遊んじゃダメじゃない』そう怒られると思って。でも声の主の女性は優しそうな顔をしていた。
「友達がすきなんですよ、紙飛行機。」
 わたしは答えた。
「ほんとにすきなんですよ。 あの子。わたしが、飛ばして、あげ、たら追いかけるよう、に飛んで……。」
わたしはうまく言えなくなった。目から流れてくるものが止められない。もうどれほど涙を拭いてきただろうか。
「辛いのね。わたしのね、友達が苦しんでるからここに来ちゃった。見てられなくてさ。だってとっても大事な友達だからね。いつまでも悲しんでほしくないのに……。」
 わたしは顔を上げた。ワンポイントに青のラインの入った白い服を着ている。この場に場違いなほどまぶしい白。
「辛いに決まってるじゃないですか。 忘れられるわけなんてない。」
 その女の人の無神経ともとれる言葉にかみついた。
 だって、だってもっとわたしがあの子の体調に気を使ってたら、 ポケモンの病気のことをもっとよく知ってたら……。そんな「たら」が心の中で渦を巻く。その熱を吐き出したくて声を荒げる。
「悲しまないでなんて、他人事じゃない! クーちゃんが死んじゃったのにみんないつの間にかみんな 前と同じように生活してるの。クーちゃんもう帰ってこないのに。こんなに早く別れが来るならもっとたくさんしたいことがあったのに。そうよ、だれもわたしの気持ちなんか分からない。元気出してって言うけど無理だよ。あなただって、その友達に言ったんでしょ『元気出せ』って。無理だよ、そんなの、1番大切な友達がいなくなったのに。」
 クーちゃんが死んでからぽっかり空いた心にいろんなものが流れ込んでくる。 学校が終わったらいつも迎えに来てくれた。遊ぶ時もいつだってついてこようとした。紙飛行機を飛ばして広い原っぱでふたりで遊んだのに。
「どうしていっちゃたの。 もっといろいろ遊びたかったのに。 これからも、ずっとずっと。 一番だいすきだったのに……。」
 女性は何も言わないでそこまで聞いてくれた。
「ねぇ。あなたは紙飛行機飛ばすのはすき? それとも『クーちゃん』のためにだけ飛ばしてあげてたの?」
「え?」
 わたしはまじまじと彼女の顔を覗きこんだ。ふざけているわけでもない、真剣なまなざしに気圧されわたしは少し考えゆっくりと答えた。
「すき、よ。わたしはあの子が喜ぶから飛ばしてたんじゃない。うまく風に乗るように飛ばすのはコツがいって面白いわ。それにあの子が楽しそうなのをみるとわたしも幸せだったし、青空に二つの白が飛んでいるのはすごく、きれいだった。ずっと見ていたかった。わたしも楽しかった。」
 けれどもうクーちゃんはいない。もうあの姿は見ることはできないのだ。
「答えてくれてありがとう。でも、いつまでも悲しんでいちゃダメよ。あなたのことが心配でいつまでも旅立てないじゃない。 それに……。」
 ふと女性はわたしを抱き寄せ、 ふわっと彼女は言った。
「わたしもあなたのことがだいすきよ。ミヨ。あなたと『すき』を共有できてほんとうによかったわ。」
「どうしてわたしの名前……。」
もう彼女の姿は何処にもなかった。 ただ床に一枚の羽が落ちていた。
「キャモメの羽……。もしかしてクーちゃん?」
 わたしは窓の外をみた。 青い青い美しい空が何処までも何処までも広がっていた。
 わたしはゆっくり丁寧に紙飛行機を折る。紙飛行機は何処までも何処までも風に乗り広い広い大空へ飛んでいった。
 クーちゃん、わたしあなたのこと絶対に忘れない。でももう悲しまない。だってクーちゃんはいま、広い大空の中を飛んでいるのだもの。
作品名:紙飛行機の飛ぶ空 作家名:まなみ