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意思の疎通は、

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恥らって、欲しかった、だけなのだが……。


私の恋人であるところのエドワード・エルリックは実に思い切りがよく尚且つ男前な女性である。
……女性、なのだ。
見えないが。
一応、というか、性別的には断固として女性なのだ。
どこからどう見ても豆……というと鉄拳制裁が下るからこの単語は禁句である、ではなくて、少年もしくはよくて青年にしか見えない。
胸はない。まっ平らだ。裸に剝いてもなんの膨らみもない。ブラのサイズはAカップですらなく、そんなものは付けていない。つける必要がないと主張出来るほどに皆無なのである。目視で確認しただけではなくこの手で触れてみたところでなんの膨らみも感じなかったのだ。
身体的特徴だけではない。その性格も実に男……いや、漢だと言えるのかもしれない。
悪漢に絡まれているか弱き女性を助け、その悪漢をぶん殴り蹴飛ばし天誅を加えるなど日常茶飯事。そしてその助けた女性に惚れられるのも日常茶飯事だ。
金色の長い髪を高い位置に一つにまとめてきびきびと動く姿は実に美しいのだが……。
一応、成人女性であり、私の婚約者であるのだが……。
ウエディングドレスよりも白のタキシードの方が似合ってしまいそうだ……。
いや、似合わないのではなく、似合いすぎるがゆえにが女装に見えてしまい、そこはかとない倒錯感が漂うというほうが正確かもしれない。
まあ、下半身に男たる象徴の突起物などはないからやはり女性であることは間違いはないのだが。
まあ……男だろうと女だろうとこの私が彼……ではない彼女を心から愛し、そして彼女も私を心から愛してくれているので問題はない。
問題は、ないのだが……。
ばん、と豪快に開けられた扉の向こうにいる美しい彼女にため息をつく。
「エド……」
「おう、大佐。風呂空いたから、次入れよ」
にっかりと笑い、すたすたと歩きながら、濡れた髪をタオルで拭っている。
隠すことなく堂々と、実に雄々しく、だ。
「あ、ああ……」
……風呂上がりの上気した肌は美しいな。上質の絹糸のような金色の髪から零れ落ちる水滴が明りに反射してキラキラと輝く様子もまた格別なのだが……。眼福の極み、と言えるのだが……。
「エド。君も一応妙齢の女性なのだから素っ裸でいるのではなく、その……だね、タオルで前を隠すだのパジャマやシャツを着るなどしてくれると嬉しいのだが……」
風呂上がりの恋人が、私のシャツ一枚を羽織って、しかもそのシャツのボタンは一つか二つしか止めていない状態で、胸元や太ももが見えるか見えないくらいのチラリズムさ加減をかもしだしている……などという状態ならもういうことはない。そそられる、どころではなく、この場で即座に押し倒すのであるが……。

現実は、違う。

「あ?隠したり着たりしてどうするよ。風呂上がりであっちいし。それにどーせこの後すぐに大佐に脱がされるんだから着るだけ無駄。アンタだってオレの服はぎ取る手間はぶけていいじゃねーかよ」
と、これだ……。
恥らう恋人を怖がらせないように一枚一枚ゆっくりと優しく服を脱がせていくところに男のロマンがあるのではないのかね?鋼の、そろそろ情緒というものを理解してくれないかね?
などと主張すればけらけらと笑うのだ。
「男のロマン?えーでも最終的にはアンタオレに突っ込んでがっしがっしとノンストップ、気がついたら夜もあけて明るくなってるっての毎回じゃん。しかも手練手管ありとあらゆる方法で、さ。まあすっげ気持ちいっからオレも体力の限りお付き合いしちまうけどな」
……いや、そうなのだがね。始めたら止まらないのは君の中があまりにも熱くて気持ちが良くてだねなどといやそうでは無い争点はそこではない。
「いやいやいやいや。大事なのはそう……突っ込んで愛を交わせばいいという即物的な結果ではなくその過程なのだよっ!」
「かていー?ってなに?なんかこーゆープレイがしたいとかあーゆー体位が好みとか、希望があんのかよ?」
プレイと言うなプレイと。体位など論外だ……。
「いやだから例えばの話だ。君がだ、○○という恰好をして、頬をピンク色に染めて恥らいつつも△△のまま、××をするというシチュエーションが私の夢であり男のロマンだと思うのだが……」
「しっかたねえなあ……。そこまでいうのなら今すぐに○○で、△△で、××してやるぜ!」
「は、鋼の?」
「じゃ、ベッドいこーぜベッド。大佐の夢ならこのオレ様が叶えましょう」
朗らかに。
なんの衒いもなく。
鋼のは○○という恰好をして、△△のまま、××をしてくれた。
確かに○○という恰好をして、△△のまま、××をしてくれたのではあるのだが……。

鋼の、恥らいはどこに行ったのかね?頬を恥らいに染める君を見たいのであって、○○も△△も××もそちらは特に重要ではないのだが……。
私は君に、恥らって、欲しかった、だけなのだが……。


その希望は叶うことはないのだろうか。


意思の疎通は、遠い……。


作品名:意思の疎通は、 作家名:ノリヲ