建築基準法とミニスカート幾何学による35センチ安全論
揺れるひらひらのフリルからすらっと伸びてるカモシカのようなオレ様の白い腿。膝の上まである黒の二―ソックスに挟まれた領域がたまらないだろうりゃどうだ大佐!悩殺されろっ!
なのに、大佐は渋い顔になる。
「……鋼の」
「んー?どうだ大佐、そそるだろ?」
「私一人がそそられている分には問題ない。が、君、私の執務室に来る前からそんな服を着用していたんだろう。それはゆゆしき問題だ」
「へ?なんで?女装が問題なのかよ?」
大佐を誘惑するくらいならスカートくらい穿いてみせるんだが……やっぱ、男のオレ様がスカートってのはマズイんか?
きょとんと首を傾げてみれば、大佐は恐ろしく低い声でこう言った。
「そんなに短いスカートでは下着が見えてしまうだろうっ!特に階段だっ!私の執務室に来るまどれだけの階段を上らねばならんと思うのかねっ!鋼の、君、階段を上る時はきちんと後方確認はしたのかっ!万が一君の……君の下着でも目にしたものが居たら私はそいつを焼き尽くしてくれるぞっ!」
下着……、ねえ。男物のトランクスが見えたところで何が問題あるって言うんだろうなあとかも思うけど。
「まーだいじょーぶ。後ろなんかは確認してねえけど、オレ様のパンツは大佐にしか見せねえって決めてるから」
うん、ついでにそろそろパンツの中身も見てくんねえかなーとか思っているんだけど。
その為にこんな格好してきてんだけど。
そそる太もも。
いいだろ大佐。
「君のその決意は尊いものだが、そんな美しい太ももを晒しては不埒なケダモノが君に襲いかからんとも限らない。スカートなど穿かんでいい。君は少し自衛の意識を持った方がいい。頼むから穿くな」
んー……そう禁止されるとなあ、ちょっとばかし面白くない。せっかく大佐を悩殺って思ってわざわざミニスカ穿いたのに。説教モードに入られては意味がない。
とりあえず、パンツなんか見えないってことを証明すっか。
「オレ様のこのスカートの長さは35センチ。よってパンツが見えるはずはない」
きっぱりと断言する。
「35cmなんて短いスカートで階段でも上ってみろ。見えるだろうがっ!」
「見えないぜ?」
「見えるっ!」
しっかたねえなあ、理詰めで説得するか。
「アメストリスの建築基準法に基づいて話せば階段の一段の高さは8センチ以下で幅は26センチ以上。そんでもって階段の高さが3メートル以上であれば3メートル以内ごとに1.2メートル以上の長さの踊り場を設けなければならないという決まりがある。知ってっか大佐」
「いや……知らんが」
「あるんだよ。そんでもってこの東方司令部が建築基準法の規定を破るわけねえだろ?」
「まあ、そうだが……」
「ってするとだ。公共の場所における最も急な階段は35度になるんだよ。計算すりゃわかるけど、それは端折って必要なことだけ言うとだな。そんな急階段上ってみても、35センチ以上の丈のスカートはいてれば、まずパンツは見えない。ちゃんと幾何学的に証明されてんだよ」
「そ……うなのか?」
「おう。詳しく知りてぇっつーんなら『ミニスカートの幾何学』って本読んでみろよ。他にも色々図で示されてるぜ。例えば32センチより長いスカートで、角度25度程度の比較的急な階段上ったとしても、スカートの内側をのぞき見ることは出来ないとかな」
「そ、そうか……」
結構リクツ詰めにすると大佐は弱い。感情に任せて迫っても無理。
これが今までのオレ様が学んだこと。
あ、あと余計なことは言わねえことも肝心だ。
まあ、見えねえってのは嘘じゃない。
ただし「風が吹いたりすることはなければ」って前提条件付きだけどな。
個人的には階段駆け上がるとかすれば、スカートの裾なんかひらひらひらーって捲り上がっちまう気がするんだけどな。まあその辺は黙秘する。
だって、オレはどうしても大佐を誘惑したい。
ほんと、鉄壁の要塞だぜ大佐は。
――私は君を愛してはいるが、君と肉体関係を結ぶのは君が二十歳になってからだっ!
ホーンと頭固い。そりゃあさあ、出会って恋に堕ちた当時のオレ達が即座にベッドへGO!だったら淫行罪だろうけど。
オレだってもうコドモじゃない。
れっきとした16歳。しかも学生とかじゃねえんだぜ?国家錬金術師様だ。つまりは高給取り。自立した社会人……っていってもいーじゃねえか。
なのに、後4年も待てるかよ。
今すぐ襲え。
即座に食え。
そう言い続けてんのに大佐はオレのコト食ってなんてくれねーの。
仕方なしにミニスカ攻撃だのなんだの繰り広げてるってーワケ。
なのにこれだ。
ああああオレ様の春は遠い。
とりあえず、椅子にふんぞり返ってる大佐の上に乗る。
ミニスカのオレ様のふと腿くらい大佐の股間に当ててやる。
さあ、触れ!そして押し倒せっ!
作品名:建築基準法とミニスカート幾何学による35センチ安全論 作家名:ノリヲ