わーきんぐほりでー
なぜならば休日だというのに御堂が持ち帰った仕事にかかりきりで、
机の上の広げられた書類とノートパソコンに集中しているからだった。
最初は自分も手伝うと申し出たのだが、
克哉の担当する部分ではないし、
たいした量があるわけではないからと断られてしまった。
見たところ確かに自分が把握していない内容なので、
説明をしてもらわないといけないだろう、
それでは逆に手間がかかってしまい手伝いの意味がない。
なので仕方なく手伝いを諦め、
やることもないので近くにクッションを抱えて座り込み、
御堂の様子を眺めていた。
せっかくの休日なのに仕事に恋人をとられている、
という気もしなくもないが。
真剣な表情で机に向かう姿には思わず見とれてしまう、
甘えや妥協を許さない厳しさはあるが、
それだけ仕事に対し真面目に取り組んでいる証拠だ。
社内の女性社員が御堂の仕事ぶりを噂をするのも頷ける。
そんな風にマジマジと見つめていたら顔を上げた御堂と視線がぶつかった。
「そんなにかまって欲しそうな顔でこちらを見るな。」
「えっ、あ・・・すいません・・。」
いきおいでつい素直にあやまってしまう。
それにしても自分はそんなに物欲しそうな顔をしていただろうか?
「今すぐにでもかまいたくなるだろう。」
からかうように言ってくる。
(かまってくれてもいいのにな。)
不謹慎な思いを少しだけ胸の内に抱く。
そんな克哉の心中を察したのか、
「かまい始めたら、君は私を離さなくなるだろう?」
意地の悪い笑みを浮かべ、試すようにこちらを見る。
「そんっ・・・、でも、・・・御堂さんだって。」
心の内を読まれたことに慌てなんとか言い返そうとするが、
以前にも同じようなことを言われたことを思い出し、
強く反論できず口ごもる。
「あぁ、私も離したくなくなる。
だから、これが終わるまで待っているんだ。」
と再び視線を机のパソコンへと戻す。
それならばどういう顔ならばいいのだろう?
克哉はそんなことを考えながらクッションを抱え直した。