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愛しき日々

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殺生丸は青鈴蘭の束を袖の袂にいれて、りんの住む里へと急いでいた。青鈴蘭はめったにみかけない花である。花好きのりんに見せたらさぞ喜ぶだろうと思い、球根ごと採ってきた。りんはきっと大事に育て、たくさんの青鈴蘭を咲かせるだろう。

人里近くの川沿いに飛んでいた殺生丸は、りんの匂いがしたような気がして、下を見た。果たして、りんがいた。魚でも採っているのか。川の中でばしゃばしゃと水しぶきをあげている姿が目に入った。殺生丸はりんに向って急降下した。と、そこで、りんが一人ではないことに気づいた。もう一人少年がりんと一緒に川の中にいた。りんと同じ年頃だろうか。りんと一緒に川で魚をつかまえようと、魚採り用のざるをしきりに動かしている。二人は笑いながら、魚をなんとかつかまえようとざるを動かすのだが、水しぶきがあがるだけで、なかなか魚を捕らえることができないらしい。殺生丸は岩陰に舞い降りて、二人の姿を見ていた。りんは何がおかしいのか大きな笑い声をあげている。


「りん!魚がそっちへいったぞ!」
「え!五平、ほんと?あれ、どこ?」
「足元だよ、お前のすぐ脇!」
「あれ?あ!今、ぬるっとした!」
「わ!りん、気をつけろ!」
りんは石の上でバランスを崩しそうになった。
「あっ・・!」
りんが川の中に尻餅をつく前に、さっと風が通って、りんは空中に浮かんだ。殺生丸がりんを抱え込んで舞い上がったのだ。

「あ!殺生丸さま!」
そのまま殺生丸は上空へと昇っていった。
「りん~!!」
五平が下で呼ぶ声がする。
「五平~!大丈夫だよ~!殺生丸さまだから!心配しないで~!」
りんが五平へ向って叫ぶ。
殺生丸は五平を無視して、上へ上へと飛んだ。


「殺生丸さま、来てくれたんだ!ありがとう」
「りん・・・お前、ひどく濡れているぞ」
「ほんとだ・・。五平と魚採りしてたから」
「それに、着物の丈を上げすぎだ。足が丸見えではないか」
「あ・・濡れないようにしようと思って・・」
「そう言いつつ、これほど濡れているではないか」
「ほんと。殺生丸さま、ごめんなさい、殺生丸さままで濡れちゃう」
「くだらんことを気にするな」
殺生丸は片手でりんの着物の裾をひっぱって、足を隠した。
「あまり男に肌をさらすものではない」
「え?」
「あいつは何者だ?」
「え?五平のこと?五平はね、村の周蔵じいちゃんの孫なの。隣り村に住んでいるんだよ、時々遊びに来るの。りんね、楓おばあちゃんにお魚食べさせたくて。それで魚とりに行くっていったら、手伝ってくれたの。でも、難しいんだね、魚とりって!全然取れなかった」
「・・・」
「あいつはいくつだ?」
「ええと、りんより1つ上だから、今、16歳かな」
「・・・・」
「殺生丸さま?」
「りん。降りる、つかまっていろ」
殺生丸は森の中に急降下した。木のもとにりんをそっと降ろす。


「りん。濡れたままの着物では体によくない。これに着替えよ」
殺生丸は白毛皮の中から流水模様の着物を取り出した。
「わあ!きれいなお着物!殺生丸さま、いつもありがとう」
「礼などよい。それより早く着替えよ」
「はい」
殺生丸はりんに着物を渡して歩き去っていった。
「あ?殺生丸さま?」
「すぐ戻る」


りんは濡れた着物を脱いで、殺生丸の持ってきてくれた水色の着物に着替えた。帯も着物に揃えた流水模様だ。
(殺生丸さまはいつもすごくきれいなお着物をくださる・・・)
殺生丸のみつくろった着物や帯は、いつもりんにぴたりと合う寸法で、しかもりんによく似合った。りんの可愛らしさをひきたてる柄や色を、殺生丸は知り尽くしているようであった。

「着替えたか?」
いつのまにか殺生丸が戻ってきていた。
「殺生丸さま!いつもありがとう!これ、すごくすてきな着物だね!」
殺生丸はしばらくりんの姿をじっと見ていたが、やがて言った。
「りん。よく似合っている」
りんは殺生丸にほめられたことが嬉しくて頬を染めた。
「りん。これを持っていけ」
殺生丸は笹に刺した鮎をりんに差し出した。
「あ・・・これ・・」
「これを楓にやるといい」
「ありがとう!殺生丸さま!いま、採ってきてくれたの?」
「魚採りなど、この殺生丸にはたやすいことだ」
「そうだよね!殺生丸さまは何でもできるものね!」
りんが尊敬の眼差しを向けてくる。
「りん。今度魚が必要なら私に言え。他の者などに頼む必要はない」
「はい、殺生丸さま」
「それに、お前は川などに入ってはいかん」
「どうして?」
「川で怪我したらどうするのだ?お前の肌に傷がついたらどうするのだ?」
「はい・・・ごめんなさい・・殺生丸さま」

殺生丸は木の根元に腰を下ろし、自分の膝の上にりんを抱き上げた。
「りん。お前に見せたいものがある」
「見せたいもの?このお着物の他に?」
殺生丸は袖の袂から、青鈴蘭を取り出した。
「わあ!きれい!すごくきれいな青だね!」
「青鈴蘭という。根がついているから、そのまま家の近くに植えるとよい」
「ありがとう!殺生丸さま!この青、まるで海みたい。殺生丸さまに連れていってもらった海の色みたい」
りんは殺生丸の首に抱きついた。
「殺生丸さま!大好き!」
「りん、離れろ・・」
「あ・・・ごめんなさい。苦しかった?」

(違う。お前の匂いが・・・きつすぎるのだ、私には・・・)

りんの匂いが最近違ってきたことに殺生丸は気づいていた。幼い頃の甘酸っぱい匂いではなく、一人の女としてのやわらかい匂いだ。いつまでもかいでいたいような蜜の匂いだ。このまま、永遠に抱きしめていたいような魅惑的な匂いだ。

今日も。川でびしょ濡れになったりんの着物は、りんの体の線を、胸のふくらみを、くっきりと表していた。あんな姿で、しかも素足をあれほどさらして、他の男の前にいるなど、殺生丸には許せなかった。たとえ相手がまだ少年でしかないにしても、だ。

15歳になったりんは、ぐっと背が伸び、手足がしなやかに長かった。黒髪は腰まで伸びて風にそよぐ。その黒く涼やかな瞳は、幼い頃から変わっていない。が、その瞳の輝きは会う度に増しているようだった。自分とはまったく違う、黒い瞳。笑ったり、悲しんだり、喜んだり。りんの瞳はくるくるとりんの心をよく映す。


「りん」
「はい?」
「お前は美しい」
「え?りんが?そんなことないよ!殺生丸さまのほうがずっときれい!」
「私が?」
「うん!殺生丸さまはどんなお花もお星様もかなわないくらい、きれい!」
「そうか」
「うん!ずっとずっと見ていたいくらい!」
「そうか」殺生丸は自分の鼻をりんの鼻とすり合わせた。
「ふふっ!」りんがうれしそうに笑う。


このまま抱きしめてしまいたい。五平だろうと誰だろうと、他の男の目に触れないよう、りんをこの腕の中に閉じ込めておきたい。永遠に他の誰にも触れさせないように、このままりんを我が物にして彼方へ連れ去ってしまいたい。
作品名:愛しき日々 作家名:なつの