星を掴むように
ソファーに向かい合うように座っていた。
青年は無邪気に笑って。
少女は肩を震わせ怯えていた。
「今日は白い駒が死んじゃったけど、次はどっちだろうね?」
ふわふわと柔らかい。
純粋な彼女を汚すのは楽しい。
「びゃくら、ん」
純白の翼を持つ僕だけれど、それ以外に白いものなんてほとんどない。
唯一あるのはまだ純心で白く幼い血と戦争を嫌う少女のユニだけだった。
「おいで」
別に退屈はしてないよ。
僕はユニのためだけに在るから。
彼女がいない世界なんて、僕はいらない。
「慰めてあげる」
恐怖と怒りの感情と相反している。
ふらふらと足取りの危ない彼女を抱きしめた。
「大丈夫、僕は君には優しいから」
「……っ」
泣いているのか隊服を強く握り締めて声を殺している。
そんなユニの強がりが愛しくてどうしようもなく愛しい。
「もう、可愛いなぁ…」
彼女の苛めて楽しんでいるのは、僕。
それを知りながらも離れられない彼女。
「ねぇ」
出会いから何が間違っていたのかなんて、関係ない。
ただ僕は彼女と一緒に遊んでいたいだけなんだ。
「今度は君が……僕を殺してみてよ」
更に強く握られる服と震える幼い背中。
母親が子供にするようにさすりながら、また。
何もかも君のためなんだ、と囁いて。
「…ふ…ぅ…っ」
見上げられた僕は彼女の瞳にどう映っていただろう。
目尻にのせられた雫を拭いながら額に優しく口付けて。
「ユニ、」
彼女が僕の命を求めるなら、喜んで差し出そう。
だからそれまでは僕の傍から離れていかないで。
夜空の眩い輝きを放つ、
(星を掴むように)
この腕の中にだけ閉じ込めたい。
end.