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でんでろ3
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フェイク・スティール

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2020年。海の向こうアメリカで、人間のボクシングに代わり、より暴力的なロボットによるボクシングが流行し、鉄腕ではないア○ムが大活躍したりなんかしている今、日本でもロボットによるプロレスが大流行。プロモーターと技術者は、新しいロボットの開発に励んでいた。

「では、早速、新開発したロボットを見せてもらおうか」
それ、マジックで書いたんじゃねーの? という感じの口ひげを生やしたプロモーターが、ふんぞり返って言った。
「はっ、では、まず、こちらをご覧ください」
白衣を着た初老の主任技師が、かしこまって答えた。
「こちらのロボットは、絶対にフォールされることのないロボットです」
主任技師は1番目のロボットのベールを外した。
「こ……、これは?」
「はっ、御覧のように、このロボットは完全な球体でして、いかようにしてもフォールすることができません」
「そうかね? 確かに、肩に相当する部分がないから、フォールできないのか? いや、でも、上に乗られて、スリーカウントされたら、フォール負けとみなされるだろう?」
「心配ご無用。このロボットは、ものっそい勢いで自転しますので、乗るどころか、触れただけで吹き飛ばされます」
「それは頼もしいな。それで、相手は、どうやってフォールするんだね?」
「……えっ?」
「いや、だから、どんな風に勝つのかね?」
「……勝ち方ですか?」
「ちょうど良い。スパーリング用のロボットを連れてきているから、戦わせてみよう」

 リングに球体ロボとスパーリングロボが上がった。球体ロボは、ゴングが鳴る前から自転をはじめ、ゴングが鳴らされた時には、すさまじい勢いで回転していた。
「まず、ベーゴマのように、自転しながら体当たりをして、相手を弾き飛ばします」
 しかし、スパーリングロボは、コーナーに逃げてしまった。当然、球体ロボは追いかけるが、コーナーに行ってみると、ロープにボディがこすれて、完全にコーナーに行くことができない。お掃除ロボットが、部屋の本当の隅っこが掃除できないのと同じ原理である。意外に細身なスパーリングロボが、コーナーポストにへばりつくようにつま先立ちすると、球体ロボとコーナーの隙間に何とか納まって、球体ロボは触れることができない。
 そのままの状態がしばらく続いたが、やがてロープが焦げ臭いにおいを放ち、それと同時に球体ロボの回転が遅くなり、そして、止まった。それを確認したスパーリングロボは、おもむろに球体ロボをグイッと蹴った。球体ロボは、あっけなく転がり反対側のロープにバウンドした。その後、スパーリングロボが数回、ロープに向かって球体ロボを蹴って勢いを増すと、球体ロボはロープを乗り越え、リングアウトしてしまった。
「……。で、どうやって、リングに戻るんだね?」
小刻みに震えながらプロモーターは尋ねた。
「……。フォ、フォール負けはしてませんよ」
おずおずと主任技師が答えた。
「あっさりリングアウト負けしてんじゃねーか!」
プロモーターは主任技師の首を絞めた。
「今の鉄くずに、いくら使いやがった、この役立たず!」
「ちょっと待って! ちょっと待って! 次のは凄いから! ホント!」

 プロモーターが手を放すと、主任技師はゼィゼィ言いながら、次のロボットの前に這って行った。
「このロボットこそ最強です。その名も『ムテキロボ』」
主任技師が外したベールの下には、いかにも強そうな著作権の関係で名前の言えない様なロボットがいた。あえて特徴を言うと、胸のところに鎧戸みたいな部分がある。
「名前だけ『ムテキロボ』なんて付けても、また、弱いんじゃねーのか?」
「はっはっはっ、このロボットほど『ムテキロボ』の名がふさわしいロボットは、いません」
「ほぅ、大した自信だな。では、早速、スパーリングと行こうじゃないか」

 ムテキロボとスパーリングロボがリングに上がり、ゴングが鳴らされた。その瞬間、ムテキロボの胸の鎧戸の部分から、白い煙がもうもうと立ちこめた。
「な、なんだ? オーバーヒートか?」
プロモーターが慌てて聞いた。
「違います。霧です」
「霧?」
「そう、ムテキロボは、胸から吐き出す霧で相手の視界を奪うのです」
 やがてリング上はムテキロボの吐き出す霧で覆われてしまった。その時だった。「ボーッ、ボーッ」という低い音が聞こえてきた。
「何の音だ?」
プロモーターは訳が分からなかった。
「霧笛です」
「えっ?」
「いやぁ、相手に自分の位置を知らせるために、ムテキロボが鳴らしている霧笛ですよ」
「あーっ、『ムテキ』って、その霧笛なんだー。って、死ねや、コラーッ」
プロモーターは、本気で主任技師の首を絞めた。
「てめぇも、『ボーボー』うるさいんだよっ!」
プロモーターが霧笛のする方にゴングを投げると、「ガインッ」と鈍い音がした。
「な、なんてことを!」
主任技師が青ざめた。その時、リング上の霧が晴れた。その中には、鉄塊と化したスパーリングロボを掴んで仁王立ちするムテキロボの姿があった。
「ムテキロボが弱いなんて、一言も言って無いでしょう? あいつは強くて凶暴なんです」
ムテキロボは2人めがけて、ゆっくりとリングを降りてきた。その先の記憶は、2人には無い。