黒に金を溶かして
「ほい」
「?なにこれ」
突然渡された袋。何の変哲もない、ただの紙袋。
受け取ってみると、中になにか入っているようだった。
がさり、と音をたてた袋、
受け取ったのをみた正臣は、僕の隣へと座った。
午後、八時。
呼び出されたのは突然で、ほんとついさっきまでチャットで話していたばかり。
いきなりなんで、と問いかけても、いいからこいよ。の一点張り。
結局折れたのは自分。はいはい、と返事を返してパソコンの電源を切った。
それから、しばらくして。携帯の着信音が鳴った。
光る表示画面、映し出されたのは、親友の名前。
少し笑って、電話に出ると、公園の名前を告げられて、
いまに、いたる。
「なんだと思うー?」
「いや、わかんないけど」
「わっかんないっ!?こんな俺のサプライズ感丸出しな感じを感じ取ってもくれないのかお前は」
「サプライズって、自分じゃいわないよね」
「いやいやー、こういうのは伝えてなんぼですからぁ?鈍感な帝人君の為に、
いくら俺が頑張ってみても正直一%も伝わってない、という結論からの究極論!!」
「は?」
「ふふん、聞いて驚くなよ!!なんとこの中には…」
「この、中には…?」
「…それは開けてみてからのお楽しみぃ」
「えー、そこまでいってそれ」
「おいおい、そんなん言われて楽しい奴いるかよっ。自分で開けてこそのサプラーイズだろ?」
「……そう?それじゃ、」
小さめの紙袋をひっくり返すと、膝の上に転がった、小さな箱。
「はこ、」
「そう、こーのなんの変哲もない箱…てばかっ、違う違う!!」
「わかってるよ」
黒い細いリボンが掛けられた、白い箱。
暗闇で、月明かりで、街灯で、
無意識に、存在を主張している、それ。
「もう、なんだよなーおまえ。ほんと、にさー」
「…拗ねなくても」
「拗ねてねーよ。まあいーからあけてみ」
「うん」
細いリボンからの束縛をといて、箱はますます白を主張した。
その白い箱を、開けると。また、小さな箱。
「…はこ」
「もーつっこまないぞー。はあああ、帝人君。俺の気持ちを弄んでないかそれ」
「なんのことだか、さっぱりだな」
「…ったくもう、貸せっ」
「え?」
「かして、その箱」
痺れを切らしたらしい彼が、僕の前に立つ。
ずいっと、手を伸ばしてきて、手に持っていたそれを取り上げた。
「あ、」
「これは、」
ぱか、っと開いた箱。
中には、白より主張して輝く、丸い。丸、
「…こうやって、あけるんですよ」
「…しってる」
正面で、輝く丸は、
彼の耳に光るそれと、酷似していた。
「おっまえにピアスやろーかなーっておもったんだけど」
「僕、穴あいてないし」
「うん、だからあけてやってもいーかなぁみたいなさー。まあ、いろいろ考えたんだけど」
「で、これ」
「そう、これ」
サプライズな、プレゼント。
「さあ、帝人。俺の為に毎朝味噌汁を作ってくれないかっ」
「…√三点」
「また?てかひど、っふ、けど冗談だけど、冗談じゃないんだなー」
「は?」
とられた、左手。
取り出された、リング。
はめられた、薬指。
「ピアスより、永遠ぽくね?」
「…くさいよ、紀田くん」
口付けられたそこから、熱が伝わって、
顔まで、熱い。
下に見える彼を、見ればにっこりと笑った。
「んー?惚れ直しちゃったかなー、俺超かっこいーだろ」
「……どこが」
「全部っ、余すとこなく隙もなくすべてかっこいいっそれが紀田正臣」
「へー。そうなんだ」
「それで、」
急に黙った口は、急激に顔に近づいてきて。
まだ、熱い顔へとくっついた。
「…すべて、お前のだったり?」
「……全部は、いらない」
「遠慮すんなって、」
そのまま、夜の公園。
二人で、笑いあって。
もう一度だけ、キスを許した。
【零距離サプライズ】
(でもこれ、どっかで…)
(あー、そうだ多分お前そのまましてたらなくすだろ)
(え?なくさな)
(なくすよ、失くす!だからジャーン)
(…チェーン?)
(そ、コレに通して首から下げとけ。お守り代わり)
(やだな、そんなお守り)